COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第132話

公開日時: 2024年2月1日(木) 14:19
文字数:456


 鮮血はなかった。


 空気が“破れた”ような音だけが、そこにあった。


 バケツをひっくり返した水が地面とぶつかる。


 あるいは、山から落ちてくる雪崩が、勢いよく斜面を滑り落ちる。


 景色の断片そのものを変えるほどの「厚み」が、空間の中心を捉えていた。


 その様子はまるで、口を開けた狼が、獲物の首を刈り取る姿そのものだった。



 敵の上半身が跡形もなく消え去る。


 風が砂を散らすように、また、霧が晴れた空のように、——広がる。


 地面の上に立ち尽くす敵の影が、まだ、その「場」に残っていた。


 敵はまだ“立っていた”。


 立ち、次の攻撃へと備えていた。


 私にも微かに感じられた。


 あの時確かに防御の体勢を整えようとしていた。


 正面から向かってくる先輩の軌道線上に、動いていた。


 ——それでも



 微かに動きが鈍ったように見えたのは、見間違えだったんだろうか…?


 2人の足元で地面が僅かにうねったように見えたのは…?



 わからない。


 ただ1つ言えるのは、確かな結果がそこにあるということだった。


 審判団が試合終了の合図を告げた。


 「明白」だったからだ。


 この試合の行方。


 勝敗の行方が。



 


 

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