「ったく、メンドーだな…」
漏れる吐息。
疾る汗。
リンは察知していた。
「今」の状況を。
自分にとって最悪とも言える状況だが、幸いなことに頭はまだ動いた。
カーティスが負ったダメージ量は深刻と言えるほどではなかったが、それでも多少の時間は稼げる。
——回復。
外界に広げていた蜘蛛の巣状の電流を解除し、魔力が分散しないよう狭い領域へと閉じ込めていく。
しかし意識は覚束なかった。
意識を保てているのが奇跡なほどのダメージ。
地形は変わり、フィールドの大部分はこそげ落ちたように衝撃の跡を残していた。
周囲にはまだ砂埃が舞っている。
地層は剥がれ、堆積した地中の粒子がまだらに砕けていた。
周囲へと広がる衝撃の余波が、空間の溝を揺らして。
息を殺す。
集中する。
リンの頭の片隅にあったのは、“次にどう動けるか”だ。
行動の範囲は限られている。
しかし選択肢が無いわけではない。
今も動こうと思えば動ける。
一秒でも速くカーティスの行動を遮れば、「次」へと行動を移せるスペースが広がる。
——しかし
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