COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第190話

公開日時: 2024年4月7日(日) 16:47
文字数:702



 ドドドドッ



 天守閣のちょうど真ん中付近の高さで、矢が命中する。


 クリーチャーに接触した後、周囲に衝撃波が広がった。


 白い結晶が弾けたことによる粉状の波紋が、均一な波を運びつつ円形に広がる。


 その衝撃波は、他の「空間」でも起こっていた。


 クリーチャーの数は全部で10体。


 それぞれが独自の逃亡ルートを取っていたが、全て霧雨の餌食となってしまった。


 空気を揺らす重低音が立て続けに起こった。


 本丸の上空には、空中で飛散した雪の結晶がパラパラと舞い始めた。


 クリーチャーに矢が命中したことによる振動が、地上へと届く。


 10体のうちの多くのクリーチャーが、矢から逃れるために全力で翼を動かしていた。


 最初に撃ち落とされた一体の他にも、シールドを展開して威力を軽減しようとする者がいた。


 しかし大量の矢によって被弾するや否や、身動きが取れなくなる。


 魔力で形成された「壁」を伝って氷の粒子が傾れ込み、たちまち周囲にキョウカの「魔力」が伝播する。


 進行方向から押し寄せるチサトの風域に飛行の自由を奪われ、直ちに氷漬けにされてしまっていた。


 凍った姿のまま、落下を始めた。


 直線的に下降を試みたクリーチャーにも、同様のことが起こっていた。


 矢が命中するまでの時間差はあった。


 ただ、それでも、最後の1匹が霧雨の領域に飲み込まれるのに、多くの時間はかからなかった。


 ブラック・ストリーム内から飛び出してきた全てのクリーチャーは、枝垂れ桜のように空中で白い“尾”を引いた。


 空には白い放物線が雲のようにかかっていた。


 氷晶が弾ける鋭い裂傷が空気中に走り、波立った不確かな模様を無造作に描いていた。


 事切れたことによる魔力の消失が、自由落下の軌道線上に横たわりながら。


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