ドドドドッ
天守閣のちょうど真ん中付近の高さで、矢が命中する。
クリーチャーに接触した後、周囲に衝撃波が広がった。
白い結晶が弾けたことによる粉状の波紋が、均一な波を運びつつ円形に広がる。
その衝撃波は、他の「空間」でも起こっていた。
クリーチャーの数は全部で10体。
それぞれが独自の逃亡ルートを取っていたが、全て霧雨の餌食となってしまった。
空気を揺らす重低音が立て続けに起こった。
本丸の上空には、空中で飛散した雪の結晶がパラパラと舞い始めた。
クリーチャーに矢が命中したことによる振動が、地上へと届く。
10体のうちの多くのクリーチャーが、矢から逃れるために全力で翼を動かしていた。
最初に撃ち落とされた一体の他にも、シールドを展開して威力を軽減しようとする者がいた。
しかし大量の矢によって被弾するや否や、身動きが取れなくなる。
魔力で形成された「壁」を伝って氷の粒子が傾れ込み、たちまち周囲にキョウカの「魔力」が伝播する。
進行方向から押し寄せるチサトの風域に飛行の自由を奪われ、直ちに氷漬けにされてしまっていた。
凍った姿のまま、落下を始めた。
直線的に下降を試みたクリーチャーにも、同様のことが起こっていた。
矢が命中するまでの時間差はあった。
ただ、それでも、最後の1匹が霧雨の領域に飲み込まれるのに、多くの時間はかからなかった。
ブラック・ストリーム内から飛び出してきた全てのクリーチャーは、枝垂れ桜のように空中で白い“尾”を引いた。
空には白い放物線が雲のようにかかっていた。
氷晶が弾ける鋭い裂傷が空気中に走り、波立った不確かな模様を無造作に描いていた。
事切れたことによる魔力の消失が、自由落下の軌道線上に横たわりながら。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!