COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第197話

公開日時: 2024年4月14日(日) 14:34
文字数:622


 緑間は夜月の無線連絡の後、ポキポキっと退屈そうに肩を鳴らした。


 モモカは相変わらずのペースだった。


 陣形を組むとは言え、断層から魔族が出てくる可能性は低い。


 それは彼らの経験上でも明らかだった。


 出てきたところで、クリーチャーの確率がほとんどだ。


 “大きい反応”と言っても、所詮はクリーチャー止まり。


 そこまで身構える必要はなかった。



 バサッ



 空気が揺れる音の向こうで、五月雨江を構えるキョウカの姿があった。


 彼女は天守閣に正対するように本丸の上空にいた。


 ギリギリと弓の弦を引き、狙いを定めている。


 緑間はその様子を見ていた。


 上空にいる彼女を眺めながら、その一部始終を視線で追う。


 キョウカの「弓」は、敵を撃ち抜くのにも役立つが、彼女の魔力をさまざまな形に変換できる“ソース”としても機能している。


 その多面性は「武器」という役割に留まらず、あらゆる場面、行動面のツールとしても有用であり、まさしく今この状況においても、その高度な“性能“が生きようとしていた。


 五月雨江の見た目は変化していた。


 少なくとも、霧雨を放った当初よりも少しだけ縦に伸び、左手で支えられた弓幹は太く、分厚くなっていた。


 「ギア」とは、本来そういうものだ。


 天使にとっての武器でもあり、”手“や”足“に通じるもの。


 人の手や足に血が通っているように、「ギア」には持ち主の魔力との密接な関係性が、細胞レベルで繋がっている。


 スゥっと息を吸い、キョウカは魔力を注ぎ込んだ。


 白い吐息が、彼女の細い指先にかかった。



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