COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第248話

公開日時: 2024年7月5日(金) 13:43
文字数:509


 距離にして数メートル。


 三叉戟の投擲は凍りつく息遣いの中にあった。


 息を止めた数秒。


 キョウカの口元には、噛み締めた歯の並びがあり、立ち上る白い煙があった。


 体の内側から滲み出る吐息。


 指先に流し込む血流。


 鈍い音がした。


 それは間違いなかった。

 

 かなりの衝撃が空間を揺らした。



 大気を。


 風の流れを。



 球体の内部。


 投げ込まれた三叉戟が、衝撃波の袂を揺らす。



 ゴォッ…!



 波紋が周囲へと行き渡る時、前方を覆う暗闇の中から、形容し難い魔力の“乱れ”があった。


 電波障害が起きるときに生じるノイズ。


 耳を跳ねる雑音が、白く濁る空気中に伝播した。


 水の中に砂が混じるような、歯車の噛み合わせが悪くなる時のような、——感触。


 周囲の空気を白く染めるほどの魔力の流れが、キョウカの攻撃によって生じていたのも事実だ。


 しかしその流れの大半は、球体の“外側”に位置する範囲に生じていた。


 暗闇の“奥”。


 キョウカが狙いを澄ましていた場所に、近づいてくる「何か」がある。



 …近づいて?



 キョウカは投げ放した三叉戟の行方を追う前に、衝撃波の波の動きがおかしいことに気づいた。


 ほとんど直感に近い感覚だった。


 針の隙間ほども無い大きさ。


 反応速度が追いつかないほどの小さな隙間を、縫って。



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