断崖の岩肌スレスレを通過し、森の広がる谷の上へ滑空する。
ほとんど垂直に飛び込んだ体を持ち上げるように翼を広げ、その勢いによって森の表面に叩きつけられた気流の乱れが、サァァァッという接触音を奏でながら駆けていく。
木々が揺れる。
森が踊る。
コテ丸が通過した真上で舞い上がった木の葉が、勢いのままに旋回する。
森に突っ込むのかと思ってしまった。
それくらい“スレスレ”だった。
「ひゅぅぅぅ。気持ちいいなおい!」
「全然気持ちよくなあああああああい」
ガタガタと揺れる木々のそばで、森が水面のように柔らかく波打つ。
緑が大きく膨らんでた。
森は深く、それでいて“近かった“。
水平にぶつかっていく谷の底の空気が、コテ丸が翼を動かすたびに震えていた。
まるで森の上をサーフボードで滑ってるみたいだった。
強烈な波と、その波が形成する斜面に、体ごと着水しながら。
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