COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第72話

公開日時: 2023年11月28日(火) 20:02
文字数:819


 「だが、まだ終わったわけじゃない」



 リオン君はほくそ笑むように、自分の胸を貫いた相手の手を掴んでいた。



 「惜しかったね。もう少しで心臓をやられるところだったよ」



 相手は、急いで手を引っこ抜こうとする。


 けど、抜けない。


 咄嗟の判断で、もう片方の手を勢いよく振り上げた。


 振り上げた右手の手のひらには、急速に回転しようとする大気の渦が。


 

 ハリケーン。



 至近距離から放つ、広範囲魔法。


 その範囲を狭め、より高威力に出力するための予備動作を取っていた。



 「今の一撃で行動不能にできなかったのが、相手の運の尽きだ」



 先輩が教えてくれた。


 リオン君の「特性」を。



 「リオンは元々近接攻撃が得意な“ファイター”だ。私と同じさ。武器を持たないのも。遠距離からの攻撃を好まないのも」


 「え、でも…」


 「リオンの特性が活きる領域は“数メートル内”でしかない。ただその数メートル内に於いて、アイツは鉄壁の防御力を誇る」



 高密度に収束する風のエネルギー体がリオン君の体に襲いかかる。


 しかしそれは届かなかった。


 振りかざした相手の右手が予期せぬ方向に“曲がる”。


 正しくは、“捻れる”と言ったほうがいいのかもしれない。


 手のひらの上で風の魔法が消失する。


 出力されようとしていた先で、不自然な挙動が空間内に走った。




 「屈折(リフレクション)」




 光が水にぶつかると、その界面を境に物質が歪んでいるように見える。


 例えば、水中に差し込んだ棒が曲がって見える現象は、空気の屈折率が約1.0003、水の屈折率が約1.3330と異なるためだ。


 これを「光の屈折」という。



 リオン君の特性。


 指定した範囲の魔力流域、及び物質の進行方向を強制的に“曲げる”。


 その曲率はリオン君の体の周囲に近ければ近いほど大きく、離れれば離れるほど小さくなる。


 リオン君の体の数メートル内に於いて、“全ての物質と魔法は直進できない“。


 イメージとしてはそういった感じだろうか?


 展開しようとしていた相手の動きが、”反対方向に曲がったように見えた“のは。


 

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート