COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第56話

公開日時: 2023年11月13日(月) 14:23
文字数:643


 10キロの距離など、あっという間だった。


 体感だと3分くらい??


 …いや、もっと早いか


 空の上の景色をずっと見てたから、どのくらいの距離を飛んできたのかがイマイチわからなかった。


 ただ、さっきまでなかったはずの景色が、背中越しに広がる地上の上に見えた。


 濃い緑が、大地の真ん中に横たわっていた。



 リンドブルム鉱山。


 剥き出しの岩肌が反り上がったようにうねり、でこぼこの地形が至る所に続いている。


 山の形はいびつで、それでいて大胆なほどに無造作な骨格が、大きなたんこぶのようにぼこぼこと地面の上に飛び出ていた。


 上空から見下ろす限りじゃ、正確な大きさは掴めない。


 だけど、見渡す限りに続いている1つ1つのうねりは、それ自体が巨大な山のように折り重なって見えた。


 「森」が、山と山の間に流れるように走っていた。


 まるで川みたいに、長い線を紡いでいた。




 急降下する龍の体。


 グッと風の流れる方向が変わり、重力が飛翔する。


 コテ丸は腕をたたみ、翼をキュッと体に近づけて、山脈の中央へと姿勢を傾けていた。


 一瞬、無重力状態が足元に触れた。


 その感覚のあとにバタッとシャツがめくれ、後ろ髪がふわりと揺れる。


 一気に下降していくスピードが、コテ丸の背中越しにぶつかってきた。


 途端に、背中を掴む両手の力が、ほんの少し緩みそうになって。



 うわあああああッ!




 落下するスピードは、上空を飛んでいた時よりもずっと疾かった。


 疾いというか軽い。


 足元の感覚がほとんどない。


 代わりに地上の形がどんどん大きくなっていく。


 「山」が、視界の中心へと膨らんでいく。

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