COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第69話

公開日時: 2023年11月25日(土) 22:14
文字数:678



 風と翼が交錯する。


 飛散する水の飛沫。


 膨張する大気。


 次々と迫る水の触手を切り裂きながら、相手天使は飛行していた。


 猛スピードで展開していた。


 「風」の銃弾を。



 先回りされている触手を避けるように左へ回り、後ろから追跡してくる触手を引き離そうと、後続へ大気の壁をぶつけていた。


 ボンッという破裂音。


 花火のように散る水。


 なおも接近を続けるおびただしい数の触手から逃れようと、途中大きく回り込んだ。


 楕円形の軌道を描く放物線。


 向かってくる触手の“内側”へと舵を取るコーナーワーク。


 水は相手天使の飛行軌道に重なるように交錯し、幾重にも織り重なりながらうねっていた。


 力強く柔らかい弾力が、立体的な軌道面に踊る。


 フィールドの端から端まで目一杯に使い、上昇と下降を何度も繰り返しては、風と水が交互にぶつかる。


 制限高度ギリギリまで飛翔した。


 上昇した直後のことだ。


 相手が急激な方向転換を見せたのは。



 膝の角度が60°になり、両足が天井の壁(大気の層)にぴったりとついた。


 左手で壁を強く押し、上半身を反対向き(壁を蹴った後に進む方向)に押し上げる。


 


 バタバタと大気の流れの最中に降下し、重力を利用した落下速度の加速を試みる。


 球体から離れれば離れるほど触手の距離が長くなる。


 長くなるということは、その分触手自体の移動範囲が「広く」なる。


 その“立体的な空間”を狙い、触手と触手の間をすり抜けようと試みていた。


 球体の中にいる、——リオン君を目がけて。



 「天使同士の戦いは、“初見”がもっとも肝心なんだ」


 「へ?」


 「ま、これは魔物との戦いにも言えることかな。「戦い」っていうのはそういうもんだ。基本的に」




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