COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第223話

公開日時: 2024年6月4日(火) 22:55
文字数:704


 反応が遅れる。


 真琴は弓を引くと同時に、意識が泳いだ。


 目の前を通過していく飛翔体は、“特定の位置に向かって”進んでいるわけではない。


 シールドを破壊するための一撃。


 ——だとすれば、弓を向けなければいけないのはシールドの中。


 その奥に続いている、魔力の「奔流」だ。


 選択は間違っていない。


 あらゆる「可能性」という側面を加味しても、“断層から敵が侵入してくるかもしれない”という可能性を排除するわけにはいかない。


 矢の先端を1箇所に集める。


 意識を集中させる。


 しかし、それも束の間だった。


 目の前を通過していく飛翔体が、空中で何かにぶつかったように弾け、バラバラに”飛散”してからは——



 飛翔体は線を引いていた。


 天守閣の下にいた者たちにとっては、それが流れ星のような「光」を溢し、空中を滑っているように視えた。


 それほどまでに速く、鋭かった。


 ただ、その「光」は黒く、淡い輪郭を伸ばしていた。


 まるで、インクが滲んだようなボヤけが、線の外側を這うように広がっていた。


 粘り気があり、太く丸み帯びた質感が「黒」の中に染み込んでいた。


 ジェルのようなぬめりもあった。


 水のように滑らかな性質を持って流れていく反面、液体にしては弾力があり、靄のような細かい粒子が、光の内部を薄く引き伸ばすように織り重なっていた。



 黒い靄、——物質。


 その物体の「形質」が何かを、すぐに認識できたものはいなかった。


 空中で飛散していく様子を目の当たりにした直後、地上にいたものたちは一同に視線を動かす。


 一足先にその“異変”に気づいていた真琴は、弓ごと体を反転させた。


 僅かな破裂音を周囲に響かせながら、四散する飛翔体。


 その中心に焦点を当てた。


 細い指先から、弦が伸びていく。






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