COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第218話

公開日時: 2024年5月28日(火) 16:01
文字数:680



 パキッ



 花弁の外側に垂れ下がっていた一本の氷柱が落下を始めたのは、鋭い振動が周囲に響いてからだった。


 目を疑ったのは、その「変化」の源にあった雪月花の“異変”だ。


 外側から刺激を与えなければ、氷が砕けることはもちろん、花の形状が変わることもない。


 しかし、だ。


 雪月花の中心には見逃すことのできない大きさの「穴」が、空いていた。


 そしてその穴の原因がなんであるかを、周囲の者たちは理解していた。


 ただしその理解が追いつく範疇には、理解に及ぶための情報の正確さが、十分に“足りていなかった”。


 自然の現象ではないことは明確だった。


 考えられる原因は1つだけ。


 しかしその「1つ」が、受け取り側の認識に於いては厄介だった。



 もちろん、周囲の者たちはわかっていた。


 キョウカがシールドを張ったのも、真琴が弓を構えたのも。


 街中でクリーチャーが現れるなど、日常茶飯事だ。


 別段珍しくもない。


 そして今回の案件が警戒度「3」に該当していること。


 調査隊が動いているということ。


 この総合的な状況の側面を加味すれば、想定され得る“危険性”についてある程度の措置と対策を取ることができる。


 夜月たちの行動は、あくまでマニュアルに則った動きに過ぎない。


 考えられる「可能性」を想定することはできても、それはあくまで可能性に対処するまでの動きに過ぎない。



 ——そう、雪月花に起きた異変は、その可能性が「実体」へと変化するまでの確かな距離を含んでいた。


 周りのものたちがうまく認識できなかったのは、——少なくとも、認識の処理に対して想定していないことが起きたからだ。


 その矛先にあったものは、予測していない魔力の奔流だった。

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