COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第252話

公開日時: 2024年7月9日(火) 15:05
文字数:609


 チサトは大気圏に於いては自由自在に移動できる。


 風属性の天使ならではの特徴だ。


 キョウカが掴まれると同時に上空へと舞い上がっていた。


 三叉戟が破壊された衝撃波は、確かな振動となって彼女の元に届いていた。


 “攻撃が届かなかった”


 そう認識した意識の片隅で、天守閣の屋根を蹴る。


 大気を揺り動かしたのは、彼女の「風」だった。


 自らが風となることで、より速く宙へと跳ぶ。


 “重力の拘束”を解く。


 解いた重力の隙間を縫うように、上空に向かって風が吹き荒れた。


 屋根の上には、くっきりとした足跡が残っていた。


 ストーミー・クラウドの風域圏も功を奏した。


 追い風になったのだ。

 

 瞬時に上空へと移動すると、その勢いのまま、キョウカの後ろ髪が持ち上がった。



 キョウカの首を掴んでいる腕。


 ——狙いは、腕が伸びている側の半身だった。



 (三叉戟の修復は間に合わない)



 天使の持つギアは、所有者の魔力が尽きない限りは何度でも具現化できる。


 いわば体の一部のようなもので、例えバラバラになったとしても修復は可能だった。


 しかし間に合わないと、チサトは踏んでいた。


 キョウカの投擲によって距離もだいぶ離れていた。


 “リンク”を切れば、ただのエーテル粒子の残骸として捨て置くことができるが、その場合再度出力しなければならない。


 右腕に魔力を込める。


 最短かつ、高威力の一撃。


 手のひらに凝集させた風を、1箇所にまとめ上げる。


 できるだけ無防備な場所を狙う。


 空間に風の層を張り、右足でそれを踏んだ。

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