COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第249話

公開日時: 2024年7月6日(土) 13:40
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:19
文字数:745



 「なッ…!」



 鋭い槍の形状に窪み始めていたはずの球体表面が、岩のように硬くなる。


 キョウカは確かな感触を拾っていた。


 三叉戟は確かに命中した。


 それは確かだった。


 槍は球体の内部へと侵入していくはずだった。


 「球体そのもの」は靄のように細やかな粒子で覆われていた。


 密度が濃い魔力が対流し、せめぎ合う魔力の奔流が激しく渦巻いていることは察知していた。


 ただ、それが「物質」でないことは認識していた。


 だからこそ、内部、——その深くに狙いを澄ませたのだ。


 魔力が生まれている中心。


 その「正体」が何かはわからなかったが、そこに届き得るだけのエネルギーを三叉戟に込めていた。


 まっすぐ向かっていくはずだった。


 手のひらの中に残る感触は、はっきりとした線と質感を帯びていた。



 ガッ



 三叉戟はひしゃげたように球体表面で潰れた。


 侵入した後の空間で止まり、大半の部分が衝突と同時に折れ曲がっていた。


 何かに“ぶつかった”


 直感的には、何かぶ厚い壁が目の前にあるかのようだった。


 エネルギーそのものを堰き止める何か。


 

 一体、何が…




 ズッ



 視線が揺り動いた時、キョウカの意識は暗転する。


 首元に突然衝撃が走る。


 三叉戟が球体の表面で変形した直後だ。


 暗闇から、真っ直ぐ伸びてくる“腕”があった。



 「ゴホッ…!」



 その腕はギリギリまで近づいていたキョウカの動きを、——瞬時に、強制的に堰き止める。


 咄嗟のことで、キョウカは反応しきれなかった。


 球体にはかなり接近していた。


 それ故に、前方からの景色の“変化”を即座に読み取れなかった。


 球体自体は巨大なエネルギーの塊だった。


 だからこそ、目の前に敵の反応があることは、通常の感覚の中では捉えきれなかった。




 黒い、手。



 伸びてきた腕の先にいたのは、——「悪魔」だ。


 禍々しいほどに歪んだ魔力が、暗闇の底から持ち上がって来ていた。



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