「この際お前が幽霊でもなんでもいい。夢じゃないなら、いっそビンタしてみてくれない?思いっきり」
Mか何かですか…?
やだよビンタなんて。
私はそれどころじゃなかった。
まさか、こんなものが出てくるとは思わなかった。
そりゃあ写真の一枚や二枚くらいはあると思うよ?
実際に付き合ってたんだったらさ?
でも、想像してなかったというか、予想の斜め上をいってるっていうか…
どの写真も、あり得ないくらいの笑顔だった。
色んな場所で、色んなショットがあった。
画面をスクロールしていくと、“3年記念”の文字が。
「3年…?」
「俺たち、1年の時に付き合い始めたんだ。夏が始まる頃にさ」
3年も付き合ってたの?
烏森高校の制服。
バスケのユニフォームを着て、ピース姿の彼の写真。
…だめだ
全然思い出せない。
この人の言ってることが全部事実だとしたら、かなりはっちゃけた高校生活を送ってた…ってことだよね?
…うん
いやいやいやいやいや
「納得したか?」
「…えーっと」
「少なくとも俺はストーカーなんかじゃない」
「…それはわかったけど、でも…」
「でも?」
なんて言えばいいかな…
この人の名前すら、まだしっくりと来ない。
顔も、仕草も。
付き合ってたなんて想像できなかった。
写真の中にあるような顔で、彼を見ている自分がいることが、信じられなかった。
一旦整理しよう。
ごめんだけど、ジョギングは中止。
河川敷の階段で腰を下ろし、彼の話を聞いた。
いつ私たちが出会って、どんな関係で、今まで過ごしてきたかを。
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