天使や悪魔に「年齢」という概念が無いのは、リオンのような子供の姿をした天使を例に出せば分かりやすいだろう。
「年齢」という括りよりも、“外面的な年齢上の差分が無い”という言い方をした方がいいかもしれない。
彼らにとって外見は個人の色や形を決める要素でしかなく、肉体上の老いや若さを推し量るものではない。
ただ、取り扱う魔力の性質から、その天使や悪魔の持つ練度や知識量を計測することはできる。
「知識量」とは、いわば培った“経験”のようなものだ。
寿命という概念を持つことがなくても、魔力や魔法を扱う上での技術や成熟度には個々によって差が生じる。
キョウカは間近で感じていた。
自らの首を掴むその“力”が、ただの悪魔ではないということ。
“第八位”以上の力があること。
堕天使の紋様は目に映らなかった。
相手が何者であるかを察知しようとする意識の内側で、状況を打破しようと試みる。
三叉戟を投擲するために放出した魔力を補充しようとする。
防御を省みない攻撃だった反面、今のこの状況に対し反応が後手に回っていた。
ましてや、魔力の出力が阻害されている。
首を掴まれ、自らの行動を制限されているこの状況下では、思うように立ち回れない。
もがくキョウカの後方で風がゆり動いた。
天守閣から飛び出した人影が、大気の膜を穿つ。
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