「…先輩は?」
「私がどうかしたか?」
「…いや、その、心臓が」
「見ての通りだ。もうとっくに修復したよ」
ホントだ。
胸も塞がってる。
あんなに強烈な攻撃を喰らったのに、何事もなかったみたいだった。
便利な体だなぁ…
「最後、どうやったんだい?」
リオン君は先輩に尋ねていた。
気になることがあるみたいだった。
「なんの話だ?」
「迅雷狼影が出現したあの時、異常な回復速度を見せたよね?」
「…ああ」
「リン姉の特性については理解しているつもりだ。だけど正直驚いたよ。魔力を吸収したわけじゃないんだろ?」
「まーな。お前も知ってるだろ?天使の体はいわば魔力を閉じ込めるための「器」だ。『ギア』も同じく。迅雷狼影は文字通りカーティスのギアを“喰った”。「魔力」そのものへと変換したんだ。それを一時的に“借りた”だけさ」
2人の会話は小難しくて、何がなんやらって感じだった。
先輩のギアの能力、天使の体の構造。
見習い天使の私にとっては、どれもまだ理解が難しい事柄だった。
私の体もあんなふうに回復するようになるんだろうか…?
だとしたら気味が悪いな…
便利なんだろうけど、死ぬに死ねないってことだよね?
裏を返せば。
「そういえば、剛坂も勝ったらしいよ?」
「そうなのか?まあアイツの相手は「バニシングス」の新人だろ?さすがに新人には負けねーだろ」
「…剛坂って?」
「今日の試合前に会っただろ?あの筋肉バカだよ」
ああ、そうだそうだ。
頭をポンッとしてきた人だ。
あの人も勝ったんだ。
じゃあ、チーム全員勝ったってことか。
…あれ、あの眼帯の人は?
「ザックスは今日は試合がない。確か明日だよな?」
「うん。そうだね」
バトルフェスティバルの戦いは日を跨いで行われる。
一回戦は全部で1週間かけて行われる。
地区によってばらつきがあるけど、そうしないと人数的に段取りが難しいからだそうだった。
先輩の次の試合は約2週間後。
一回戦が全部終わって、改めて対戦相手が決まってからだそうだ。
決勝に行くには最低でも5回は勝たないといけないらしい。
今日みたいな戦いがあと5回…
考えただけでも嫌になりそう…
出たくない人は出なくてもいいらしい。
フェスはあくまで、任意参加の「イベント事」に過ぎないから。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!