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第十二話

公開日時: 2021年6月13日(日) 10:20
更新日時: 2021年12月3日(金) 06:55
文字数:2,737



「今日はバイトがない」というだけで癒し。


嫌なことが無いというだけで特別何かを貰えるワケではない


しかし休みの日はしみじみ思う


責任を果たした上で得られる自由がこんなにも清々しいものとは


出勤日の朝にはこの清々しさは凶々しさに変わるのだろうが


まあ今は忘れて今日という日に集中しよう


これから


新しいチャレンジをするのだから













あのインフィル戦以降


オレの中でウメハラが止まらない。


あれだけの感動とモチベーションをくれた人がどんな人なのか改めて調べてみた


ウメハラの年齢は自分より4つ上「30歳」


ウメハラの好きなラーメン屋は「じゃんがら」

超早食いらしい。


ウメハラの出した本は「勝ち続ける意思力」

もちろん家にある。


そしてウメハラの行きつけのゲーセンは


「タイトーステーション」


東京には猛者が集まっている


更にその猛者の中でもトップクラスの怪物達が集まる大怪獣村がタイトーステーション


しのぎを削る場所がウメハラにはちゃんとある


打ち立てた戦略を試す場が。


だからこそインフィルにあの内容で勝てた


ウメハラが教えてくれた自分に足りないもの


それは対戦する相手キャラを知ること


“知り尽くす”こと


林野の使うキャラは「ユン」


ユンを知らずして林野を地獄の果てに突き落とすことはできない


ユンの特徴と強い技の対策はトレモで再度確認した


新しい戦略も生まれた


それが通用するのかしないのか


対戦して


対戦して


情報を得るしかない


だからここ


タイトーステーションに来た。













たどり着くまでには


くぐらなければならない関門が3つあった。


第一の関門は「電車」


一人で電車などほとんど乗ったことがない


大体乗る時は誰かと一緒でその誰かが買ったものと同じ切符を買って後ろをついて行っていた


昔の話しだ。


今は誰かと電車に乗ることすらなくなった


駅でいえば7駅ほど地元から離れたところにタイトーステーションはある


地元から7駅離れる


オレからすれば大都会


別世界


海の向こう側


しかも一人。


入念に入念を重ねてタイトーステーションの開店時間から逆算して電車の発着時間


家から駅までの移動時間を計算した


ここでまず心配になるのは


本当に時間通りに電車が来るのかだ。


所詮ネットの情報だ


一番上に出てきたサイトが「私が公式です」というような顔をして平気で人を騙してくる


それがネットであり人の悪意だ


嘘かホントかは実際にその情報通りに動いてみて確かめるしかない


もし来なかったらどうしてくれようか


修行僧のように背筋を伸ばし


首を固めたまま真っ直ぐ正面を見つめ


「無」の状態を装い本当はハラハラしながら駅のホームの椅子に腰をかける


わざわざ座るほどの待ち時間ではないが立っていると待たされてる感が強くなり1分1秒が長く感じる


だから座る


ホントは落ち着かないだけだ


そんなこんなで5分ほど尻をむずむずさせながら待っているとどうだろう


遠くから四角い長いものが音を立ててこっちに向かってくる


本当に時間通りに電車が来たではないか


そりゃ来るよ


今まで散々疑いの目を向けていた相手にそそくさと乗り込みドア際の手すりを握りしめて直立不動で固まり電車に揺られずに線路を辿る


今度は椅子には決して座らない


目的地に着いて立ち上がる時に自分だけだったら注目を浴びた気になって恥ずかしいから


一駅二駅と進むにつれて少し余裕が出てきたのか


出入り口のドアに肩を預けて少しだけ脱力してみる


今ドアが開いたらオレは確実に死ぬ。


そんな1%にも満たない出来事を横目に


一駅止まっては発進するごとに入るアナウンス「次は〜」と発する次の駅名に全身全霊、耳を傾ける


もし目的地を通り過ぎてしまおうものならそのまま外国にでも行ってしまいかねない


というほどに警戒している


冷静に考えれば


目的地を過ぎたとてすぐに次の駅で降りて向かいのホームからまた電車に乗って戻れば済む話しなのだが「7駅」という海を渡る作業は飛行機にでも乗っているかのような緊張感だ


もし目的地に向かうものとは別の飛行機に乗ってしまったら終わりでしょ?


そう思うでしょ?


でもこれは電車なんだよな。


第二の関門は「地図」


地図の見方が分からない


分かったことがない


そもそもあれは人目線で作られてはいない


何やら宙に浮いて日本全体を見下げるような


神の目線で作られている


分かるはずがない


オレは人間だ。


なんとか目的の駅に着けたのはいいが


どこの出口から出ればタイトーステーションへの最短ルートなのかが分からない


「◯番出口」というような数字がついた罠がいくつもある


この罠をかいくぐり一つしかないであろう正解に辿り着くのは至難のわざだ


携帯の地図で調べてみてもタイトーステーションと駅の位置関係が分かるだけで出口までは教えてくれない


不親切だな。


駅員にたずねれば早い話しなのだがなんだが気に食わない


オレは自分の力でたどり着きたいんだ


そもそも人に声をかける勇気などない!


案の定


タイトーステーションとは真逆の方の出口にまっしぐら


そのまま突っ走る。


今か今かとウキウキさせながら進めていた足はいつしか重くなり、やがて止まった。


こっちではないかもしれないと薄々気づきつつ


自分が方向音痴であることを自覚してるがために


逆にオレが間違いかもと思うなら実はこっちが正解なんじゃね?


といった訳の分からない理論を展開して間違いの上塗りをしてしまった


かれこれ30分は歩いただろう


それをまた戻らなければならないという絶望


戻ってやって振り出しという絶望


まんまと駅を製造した設計者の罠にハメられてしまった。


第三の関門は「都会」


都会ということは人がいっぱい居るということだ


人混みは嫌いだ


頭が痛くなる


人混みは人と人との会話が交錯して雑音になる


それがひどく不快で


最初は何を言っているのか断片的に聞き取れたりするのだが段々会話と会話が混ざり合ってお経みたいに聞こえてくる


日本語であることは間違いないが何を言っているのか分かったり分からなかったりすることが妙な幻想感を生んでやけに耳から離れなくなる


そのざわざわの音量が段々大きくなっていくような気がして頭が痛くなる


本当に痛くなる


でももっと頭が痛くなることがある


林野に負けることだ


頭痛と怒りでアイツに切られた血管はまだ修復されていない


“キレた”まんまだ


そのムカつきを思い出して何とか自我を保ちながら人混みを抜けた


やっと着いた


遠いよ...


残念ながらここは東京ではない


だから東京の猛者が集まる大怪獣村ではないが


タイトーステーションといえばウメハラの影響もあって全国のどのタイトーステーションでもその県の猛者が集まってくるという情報を得た


地元のゲーセンではもうオレを満たすことはできない


戦う場所を変えなければならない


はるばる地元を離れ


ようやく


ようやくたどり着いたこの地タイトーステーションで


林野を滅殺する準備をしようではないか!













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