The Raptor

〜競技麻雀が嫌いな不良少年と、賭け麻雀が嫌いな優等生〜
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第24話:反撃

公開日時: 2023年11月21日(火) 00:00
文字数:1,372

(確かに親も無くなっちまったし、対面のハダカデバネズミには大差を付けられている………。

でもまだ勝負は終わっちゃいないのに、あきらめる必要なんかどこにもぇ。そう。例えこんなクソ配牌だろうがな………)


 第一ツモで二筒を引いた和弥は、まずは場に2枚出た西シャを捨てる。続いてツモったのは七萬。今度は迷わず四索を落とした。


(へぇ~………。凄いねこの子。まだ諦めてないんだ。怖いくらいの勝負根性だね)


 麗美の牌勢もかなり落ちているが、下家の今日子は和弥とは対照的に、筒子ピンズ一通イッツーが見えている。普段は筒井に合わせて建前上は『麻雀に運や流れなどない』と言っている麗美だが、幼少の頃から麻雀を打っている以上、この局で自分にアガリ目がないのは十分に理解出来ていた。


(ま、でも流石さすがにもうこの半荘ハンチャンで私がやる事はないかな。頑張って筒井くん。あなたが余程のポカしない限りは、逃げ切れるハズだよ)


 8巡目。

(よし………。残りラスト一枚の九索を引けた。もうイーペーコーの可能性を追う必要はない。789の三色サンショクだ)


 迷わず七筒を一枚落とす和弥。しかし………。


「ポンッ!」


 筒井が七筒をポンしてくる。


「!?」

(奴は今この形から九筒を切った………八筒は暗刻アンコで持たれている!)


 これで三色完成の可能性は、限りなく低くなった。


(どうする? ラスト一枚の八筒に賭けるか?

いや………この調子で八筒をツモれるとは、とても思えねぇ………。和了アガれないハネ満より和了れる満貫だ)


 チュンをツモった和弥は、最後の一枚の七筒を迷わず落とす。

 しかし筒井の七筒ポンと和弥の最後の七筒落としに、今日子も平静さを装うのに懸命だった。


(余計なことしてくれちゃったわねグリかりさん………もう一通は諦めるしかないかな)


 今日子は仕方なく、筒子のペンチャンを落としていく。


(4枚目の八筒……!?

三色を諦めて正解だった………!!

しかも北条のヤツ、八筒を端の2番目から出した……間違いない、ペンチャン落としだ。九筒も抱えてる!!)


 10巡目。和弥は高目であるドラの九萬を引き、ついに聴牌テンパイ

「リーチ」


『リーチデス!』という卓からの女性の電子音声が鳴り、一瞬だが部室内に緊張が走った。久我崎の部員達も、誰も一言も発さず固唾を飲んで見守っていた。

 思わず瞬間的に、牌の端を見てしまう筒井。


「鳴かないのか? 天上位さんとやら。中はあンたが対子トイツで持ってんだろ」


「ふざけんな、今ダントツトップなのに。鳴いて手を短くするような事するかよ」


(クソガキが………。一発は避けておくか)


 中の対子を持っているのを見透かされた事にギクッとしながら、その中を切りつつ筒井はチラリと麗美を見る。


(何でも人任せにしないでよね………ここは現物)


 ウンザリとして同様に一発を避けた麗美だが、今日子の方は逆に11巡目に赤五索をツモる。危険牌を掴んだら四索を切ろうと思っていたが、今度は456の三色で聴牌し直しである。

(ラッキーだわ。安目三索でもよし………六索なら一気に勝負をつけられる。

全帯公チャンタ七対子チートイだろうけど、七筒は4枚見えてるしノーチャンスな筈。チートイなら九筒単騎も有り得ない)


「追っかけリーチ!」


 残りの九筒を横に曲げ、ホーに捨てたその時だった。


「ロン」


「え?」


 驚く今日子を後目に、和弥はパタリと手牌を倒す。

「リーチ・純チャン・ドラ1」


 裏ドラをめくると、表示牌は二筒だった。


「裏も一丁。12,000」

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