『おはよう、竜ヶ崎くん』
今日は個人戦2回戦目。またも小百合はタクシーで和弥のマンション前まで来たようだ。
本来ならそのまま会場に直行していいはず………。
「おはよう委員長。今下に降りるから待ってろ」
自分のヘルメットと、小百合用のハーフキャップ型ヘルメットを手に、和弥はエレベーターに乗った。
小百合の乗るエレベーターは、他の階に止まることなく一気に一階まで降りてくる。
そしてマンションの駐輪場の前にいた小百合を見ると、先にバイクに跨った。
「さあ乗れよ」
「ありがとう」
和弥の後ろに跨り、細い腕を和弥のお腹に回す小百合。和弥はハーフキャップヘルメットを渡す。
(委員長……)
その感触を背中に感じ、思わずドキッとしてしまう和弥であった。
そんな和弥の気持ちなど知るよしもなく、小百合は和弥の背中にヘルメット越しに囁く。
「ねえ竜ヶ崎くん……」
「何?」
「貴方にとって、私はどんな人間なのかしら?」
思わず吹き出しそうになる和弥だが、何とか堪えて平静を装う。
「な……何を言ってんだよ。あンたは2-Aの委員長で、U-16のチャンピオンで…」
「私が聞きたいのは、そういう事じゃないのに……」
思わずドキッとする和弥であった。そして誤魔化しきれないと思い、正直に言う。
「だから……大会が終わったら言うって。委員長をどう思っているのか」
「本当ね」
「ああ。大会終わってから、ちゃんと言うよ」
和弥は振り返らずに言う。恐らく小百合が悪戯っぽい笑
みを浮かべていると思ったからだ。
だから何となく恥ずかしかったのである。だから小百合を振り返ることなくマンションを後にしたのであった。
◇◇◇◇◇
会場入りした和弥と小百合。
控室には綾乃、由香、今日子、紗枝。そして顧問の龍子が、すでに到着していた。
「遅かったな、西浦。それに竜ヶ崎」
「約束の時間には間に合ってるでしょう。文句言われる筋合いはありませんね」
龍子を一瞥し、椅子に座る和弥。
「ちょっと竜ヶ崎くん。先生に向かって……」
「構わん綾乃。私は気にしてないよ」
綾乃が諌めようとすると、龍子は笑顔で制した。
「それより、お前を取材したって雑誌がある。どうする?」
まさか顧問からそんな話が出るとは思っていなかったのか、和弥は少々考える。が───
「お断りします。目立ちたくはないんで」
それだけ言い残すと、和弥はさっさと控室から出ていった。
「………あんだけ派手な外見しといて。目立ちたくないも何もないじゃん」
同じく個人戦の準備をする今日子である。
「ツモ。3,000・6,000」
他校の生徒は全員、和弥の和了りに手を止める。
メンピン・ツモ・ドラ3。一発・裏ドラ・槓ドラ・赤ドラ無しでの『完全競技ルール』でのハネ満は、十分なアドバンテージとなった。
申し訳ありません。
再三書いているように、昨年4月23日に運営が新規アカウントの登録の受付を停止してから一年が経過しました。
その後も「5月に今後について発表する」とXの公式アカウントからアナウンスがありましたが、こちらも何もないまま一年が経過しようとしています。
このような状況を踏まえ、私も一旦ノベリズムでの連載を停止させていだきます。(連載自体はノベルアッププラス、小説家になろうでもやっています)
何人読んでいるかは知りませんが、ご了承下さい。
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