「えっと、それでですね。実は佐藤先生にお伺いしたいことが――」
「あれ? そのUSBメモリ……先生、それ前のと同じやつッスよね?」
今度は純夏に話を遮られた。
「同じの買ったんスか?」
「そうだよ。それがどうかしたかい?」
何だろう。
気のせいかもしれないが、津の純夏を見る目つきが険しい気がする。
「ああ、いや。ただ何となく気になっただけで、特に何があるというわけでもないんスけど……」
純夏が言及しているのは津のノートPCに挿さっているUSBメモリのことだろう。
特に変哲もないただのUSBメモリに見えるが、純夏は何が気になったのだろうか。
シオンが不思議に思っていると、嶺二と三葉が話し出した。
「やらかしのナンバーいくつでしたっけ?」
「ナンバー8ね。もちろん、写真は部室に保管してあるわ」
USBメモリは純夏のやらかしと関係があったらしい。
「烏丸くん、何をしたんですか?」
「いや、その……踏んじまったんだよ。佐藤先生のUSBを」
「踏んだだけじゃないよね、カラスくん?」
「粉々に粉砕してたよな、烏丸」
「そ、そんな粉々ってほどじゃなかったっスよ! ……たぶん」
「ふふっ、後でシオンくんにも写真を見せてあげるね。そしたら、誰が正しいこと言ってるのかわかるから」
十中八九正しいのは三葉と嶺二なのだろう。
そもそもUSBメモリは誤って踏んだくらいではそうそう壊れない。
踏んだだけではなく、やらかしと称されるような何かを純夏がしたことは間違いない。
「サトシン、あの時かなり怒ってたよねー。うー、思い出しただけでも震えちゃうよ」
「いや、ほんと……あの時はすんませんでした」
「いいんですよ、過ぎたことですから。次から気を付けてくれれば。それより、写真を残してあることの方が驚きました」
「カラスくんのやらかしシリーズなら全部保管してありますよ! USBメモリの写真も粉々具合から、やらかした瞬間のカラスくんの表情までバッチリ!」
「そ、そうなんですね……」
津は若干引き気味だ。
本人は許したとは言っているが、USBメモリも無料ではないし大事なデータが入っていた可能性だってある。
津も純夏同様に、あまり思い出したくはないのかもしれない。
「……もしかして、さっき話していたやらかしってこのことなんですか?」
「ううん、違うよ? まったく別の話」
ややこしい……。
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