ボクとサナ ~淫魔はミステリーに恋し、ロジックを愛する~

プリンを食べたのは誰?
papporopueeee p
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公開日時: 2021年3月30日(火) 17:00
文字数:969

「ダメっスよ、ミツ先輩。ここで止めるなんて絶対にダメっス」


 その目はまっすぐに津を睨みつけたまま、津は背中越しに三葉へ声をかけた。


「カラスくん……」

「……部長の意思を、部員である君が蔑ろにするんですか? ……ああ、そうか。君はそうでしたね。私が犯人でないと、君は困りますもんね?」

「っ……!」


 津の挑発を受けて、純夏の拳が音を立てるほどに強く握り締められた。


 すでに純夏は津に掴みかかっている。

 これ以上神経を逆なですれば、暴力沙汰もありえるだろう。


 むしろ、津はそうなることを狙っているのかもしれない。

 騒ぎに乗じてUSBメモリを処分する機会を窺っている可能性はある。


「カラスくん……。私、もうカラスくんのこと疑ってないから。怒ってもないし……だから、もういいよ……。もう終わりにしよ?」

「そんなんじゃないっスよ。プリン泥棒の濡れ衣とか、この期に及んでどうでもいいんスよ」

「だったら、もう……」

「良くないっスよ……! 写真部的に、盗撮だけは有耶無耶のままになんてできるわけない!」

「!」


 まるで言葉自体が熱を持っているかのような。

 純夏の言葉で震えた胸が、きゅぅっと熱くなるような感覚だった。


「俺はっ、ミツ先輩や嶺二さんみたいにカメラに愛着とかないっスよ! スマホの方がいいとか、フィルムとか、正直さっぱりっス! 何度説明されても理解できません! どうしてお前みたいなのが写真部に入ったんだって、からかわれても仕方ないと自分でも思ってます。でも……! 派閥とか、ケンカするとか、それって全部カメラに本気だからじゃないスか……! ミツ先輩も嶺二さんもそれくらいカメラに一途で……そんなふたりを、自分は尊敬してるんで!」

「烏丸……」


 三葉と嶺二の視線が純夏の背中へと注がれる。


 元々体格の良い純夏の背中が、更に一回り大きく見えたような気がした。


「それなのに盗撮なんて、ふざけてる……! 盗撮は、ミツ先輩と嶺二さんの思いを汚し、侮辱する最低な行為だ! だから、俺は絶対に許さない。もしも先生が盗撮なんてしてるんなら絶対に許せない。白黒つけずにここでお開きとか、俺がさせません!」


 純夏は言い切った。

 誰がなんと言おうと、ここで津を逃がすことだけはしないと。


「カラスくん…………っ!」


 純夏の言葉を受けて、三葉は涙を拭った。


 その表情からは怯えは薄れていて、代わりに確かな決意が宿っていた。

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