ボクとサナ ~淫魔はミステリーに恋し、ロジックを愛する~

プリンを食べたのは誰?
papporopueeee p
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公開日時: 2021年3月7日(日) 17:00
文字数:1,156

「倉持先輩。どうして嘘を吐くんですか?」

「はぁ? 嘘? 僕がいったいどんな嘘を吐いているって言うんだ?」

「それは――」




” っ……鞄の中は教科書と、筆記用具と……あとはフィルムカメラだよ ”




「倉持先輩、どうして鞄の中身について嘘を吐くんですか? カメラなんて、その鞄には入っていないですよね」

「ハッ、キミこそ何を根拠に僕が嘘を吐いているなんて断言しているんだ? 中身を見てもいないのに、どうして鞄にカメラが入っていないとわかる」

「中身を見なくたってわかりますよ、その鞄の中にカメラが入っていないことくらい。むしろ、カメラが入っていたとしたら、倉持先輩は写真部を辞めたほうがいいと思います」

「はぁっ? どうして僕がそんなことをキミに言われなきゃ――」

「投げましたよね、さっき」


” 嶺二は不機嫌そうに持っていたカバンをテーブルの上に放り投げると、ドカッと椅子の上に腰を下ろした。 ”


「……っ!?」

「あなたは先ほど鞄をテーブルの上に放り投げた。その椅子に座る直前です。憶えていますよね」

「そ、それは……っ」


 余裕を湛えていた嶺二の顔が崩れていく。


 おそらく意識していなかった何気ない行動だったのだろう。

 だからこそ、指摘に対して咄嗟の言い繕いが間に合わない。


「倉持先輩は写真部でも随一のカメラ派なんですよね? そんなあなたが、カメラの入った鞄をあんなにも乱暴に投げ捨てた。これはあり得ることなんですか?」

「……ちょっと考えられないわね。レイくん、誰にも触らせないくらい自分のカメラに対しては神経質だし」

「っ……い、苛ついてたから、つい投げてしまったんだ! 人間なんだから、そういうミスをしてもおかしくないだろ」


 嶺二はまだ嘘を認める気はないらしい。


 それならそれで構わない。

 嘘であるという証拠を見せつければ、否が応にも認めざるを得ないだろう。


「相田先輩、1つお願いがあるのですが」

「なに?」

「この部室の中から、倉持先輩のカメラを探してもらえないでしょうか?」

「なっ!?」

「ボクの推理では、あの鞄の中にはカメラは入っていません。でも倉持先輩は毎日学校にカメラを持ってきているんですよね。そうなると、倉持先輩のカメラがどこにあるかを考えた時、部室の可能性が一番高いと思うんです」


 嶺二が放課後に1人になれたのはこの部室の中だけだ。


 カメラを鞄から取り出したのが放課後以外になければ、その所在もこの部屋以外にありえない。


「……思音くんの推理が合ってるなら、多分この棚が一番可能性が……あっ――」

「か、勝手に触らないでください!」


 三葉が棚の引き出しを開けた途端に、嶺二が立ち上がって大声を上げた。


「さ、触らないわよ……レイくんがカメラ大事にしてるの知ってるし……。でも、あったわ。確かに、このカメラはレイくんがいつも持ち歩いている物ね」

「だそうです……倉持先輩?」

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