「八巻さん」
「早うおいでー」
二人の声を頼りに走り出す。今日は全国予選の代表決定戦始めてきた場所だったがなんとか時間内に集まることが出来た。
「遅れました」
「よし、行こうか」
人数と時刻を確認した葛茂を筆頭に大会の行われる会館に向かう、花ノ宮初陣である。
「ここからは小学生の部と中学生の部に別れるからお別れだな、二人とも高学年の部でエントリーしろよ10分前行動5分前にはエントリー終了だからね」
「だいじょーぶやで! 行こ八巻さん」
「うん」
今回の大会では3つに分けられており今回は3人とも全国に続く小学生の部と中学生の部にエントリーだ、葛茂さんは14歳なのでここで別れることになる。僕と桃さんは高学年の部でAブロックとBブロックに分かれそれぞれ上位二名が決勝卓で対局を行う形式だそう エントリーの最中に一通りの説明を聞き終えた後 桃さんが付け足す。
「岡山で全国にいけるのは優勝した1人のみで例外としては人数の多い大阪とかは西と東に分けて代表者を2名出場させるんよ、どこかわからんことあった?」
「大丈夫です」
「よしそれなら験担ぎにあれ飲も!」
一通りの会話を終わらせると桃は嬉しそうにドリンクコーナーを指差す、ここの大会では参加者は無料で提供されるらしく腕輪を見せると定員が「どうぞ」とメニュー表をこちらに見せてくれる 今回はオススメの物を選んでもらいドリンクを貰うと桃の言うままに近くの席に腰を落ち着かせる
「ここのドリンク頼むと可愛いレシート貰えるんで!」
「わあ」
定員から貰ったレシートを裏返すとスムージーの入った容器を持つサルがプリントされている。そういえば貰う際に何やらハンコのようなものを押していたのでそのときのものだろう。桃さんは舌を出した柴犬をこちらにみせてくれた。
「全部で5種類なんやけどイヌサルキジとオニの絵しか当てたことないわー」
「岡山だからですかね?」
桃の話からするに桃太郎に登場するキャラクターを定員さんがレシートに押しているのだろう。
「ふぅ、緊張してきた…」
「最初はそうだよねー、いつも通りを出せたら大丈夫やよ!」
「…そうだね、頑張る」
ピピッ
「お、」
10分前になり腕輪の液晶が点滅し始めた。僕の腕にはAが映し出され桃さんの方はBと映っている。
「うちらもここでお別れやね、お互い決勝まで頑張ろ!」
「うん が、がんばろー」
「おー!!」
別れた後は指定されたブロックへ向かう、集合場所でさえ二人のおかげでなんとか間に合った為遅れないよう少し足早になる。
「…風子さん褒めてくれるかな」
きっと優勝したら風子さんは喜んでくれる全国で活躍したらもっと、だから……
大部屋に向かう間に気合を入れるため胸元で両手を強く握り締めガッツポーズを決めるここまで風子さんや葛茂さんに指南してもらって桃さんとも沢山対局して経験値は詰んだはずだ、今までの全力をぶつけられるよう気合を入れ直す。
「よし、」
「ねえ」
「ひゃい!?」
自分だけの世界に入ってしまっていたため突然話しかけられ背筋の体温が低下したような感覚に陥る。振り向くと同じくらいの背丈の女の子がこちらに視線を向けていた。
「入らないの?」
「あ、いえ、今から入ります」
「だよね!遅れたら大人がうるさいし入ろっか!」
「あ、はい」
慌ててAと書かれたドアを少女に背中を押されながら開ける。中は待合室になっていてかなりの人数が待機していた、この人数をまた対局順に分けていくのだろうか。
「スゥ――よし」
深呼吸をして自分を落ち着かせ、再度周りを見渡して言い放つ。
「勝つぞ」
周りにいるライバルに向けてか自分に喝を入れるためのものかまあそんなことを私は特に気にしない、すぐに忘れるから、唯一疑問に思ったのはぐるぐる巻きにした痛々しい左手の包帯だ。カッコつけてるつもりだろうか?恥ずかしいやつだ。でも悪いやつじゃないとは思う確証はないが私の感は良く当たるほうだから、そんなあの子はとても利用しやすそうで助かる。今年も楽勝だなと心の中で笑うと思わず声に出していた
「カモさんおいでませ」
ニヤリと周りのバカ共に気づかれないように表面上は明るく笑ってやる。どんなに頑張っても私に勝てる奴なんていないから、
説明をしている大人が人数の都合で各ブロック二枠シード枠を作るそうだ、まあAブロックは私以外ありえないのだが、皆が巨大な液晶のトーナメント表に目を向けると大々的に映される。
第一シード前年度県予選優勝者
土門 柚遊
せいぜい頑張ってくれ、平民ども
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