気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

カノジョが地元に帰ると距離感つかめない

公開日時: 2022年1月6日(木) 17:07
文字数:2,263

「じゃ、タクト。ちょっと待っててね☆」

 ミハイルはそう言うと、俺に背を向ける。

 小さな桃のような尻をプルプルと震わせて、小走りで去っていく。

 自身の家でもある『パティスリー KOGA』に入っていったのだ。


 三ツ橋高校の体操服にブルマ姿で、地元の席内を歩くわけにも行かないので、彼の自宅に寄ったわけだ。

 今日は姉のヴィクトリアがシラフのようで、店を通常オープンしていた。

 窓から店の中を確認すると、子供連れの主婦たちが客として訪れている。

 普段はアルコール中毒で、下着姿でうろちょろする破天荒なねーちゃんだが、ニコニコ優しく微笑んでいる。

 さすがだ。

 嫌な顔せず、ショーケースからケーキをトングで取り出す。


 ミハイルと女装したアンナぐらいの二重人格だ。

 やはり血は争えないなぁ……。


 俺がそう感心していると、隣りから声をかけられる。


「お待たせ☆」


 白い歯をニカッと見せつけて、太陽のように眩しく微笑むミハイル。

 本日のヤンキーファッションだが、胸元に大きな星がプリントされたタンクトップ。

 パンクなデザインで、なぜか左右にチャックがついている。

 たぶんおしゃれなのだろうが、俺からすると脱がせる前提のエロいデザインに感じた。

 布地も少なく、ミハイルの華奢な肩が露わになっており、丈もへそ上という短さ。

 

 そしていつもの如く、下半身は白くて細い脚が拝めるショートパンツ。

 防御力がほぼゼロだ。


 俺がスライムでも今の彼に襲い掛かれば、勝てそう。

 性的なバトルで……。


 しばらく、その光景に目が釘付けになっていると、彼が怪訝そうに俺をみつめた。


「タクトってば、ボーッとしてどうしたんだよ?」

 ムッとした顔で、下から俺をのぞき込む。

 腰を曲げているため、タンクトップが緩み、胸元が見えそうになる。

 誘っているんでしょうか? この人……。


「む、いや。なんでもないんだ……」

 頬が熱くなるのを感じた。

「変なタクトぉ……。あ、ひょっとして、昨日のたいそーふくがそんなに嫌いだったのか?」

 手のひらを叩いて、一人で合点する。

 いや、ちがうから。

 どっちも好きです……なんて言えるわけないだろが。


「違うよ。ま、とりあえず、ネコカフェに行こう」

「うん! 早く行こうぜ☆」


 そうそう、今日はそれが取材なんだから。

 デートじゃないのよ、タッくんたら。

 相手はアンナちゃんじゃない。

 男のミハイル。

 だから、ノーカウント。


 席内商店街を抜けて、以前ミハイルと買い物をしたショッピングモール、ダンリブの建物に沿って旧三号線に向かう。

 ダンリブの反対側には、100円均一の『タイソー』とドラッグストアが並んでいる。

 交差点を使って渡る。


 俺らオタク。つまりは犯罪者予備軍の天敵であるお巡りさんがお出迎え。

 道路を横断すると、目の前には交番があり、交差点に一人のポリスメンが立っていた。

 険しい顔で、辺りを見張っている。


 ミハイルとは顔見知りのようで、

「おぉ、ヴィッキーんところの弟じゃねーか」

 随分となれなれしく話すじゃないか……。

 ダチとしては、ちょっと嫉妬を覚える。

「あ、お巡りさん。おつかれっす☆」

 ミハイルも手を振って、笑顔で答える。

 なんだよぉ~ ヤンキーならそこは警察にイキってみせろよ。

 ムカつくなぁ。


 隣りでイラつく俺をよそに、ミハイルは世間話を始める。

「今からネコカフェに行くんす☆」

 てか、警察には敬語使うのな。

「そーか。気をつけて行ってこいよ。ん? 珍しいな。ミハイルのダチか」

 やっとのことで、俺に気がつく。


 一応、挨拶をしておく。

「あ、同じ高校の新宮です」

「高校? あー、ひょっとして、一ツ橋高校か?」

「そうです。なんで分かったんすか」

 俺が不思議そうに問いかけると、何を思ったのか、そのポリスは大声で笑い出す。


「ハハハッ! だって、本官もあそこの卒業生だからなぁ」

「え……」

「今は警察なんてやってんけど、昔はヴィッキーぐらいヤンチャしてたからさ。一ツ橋ぐらいしか、入学できなくてよ」

 そんな偏差値で、よく警察官になれましたね。

「はぁ…」

「ま、本官もヴィッキーも、もういい歳だからさ。今じゃ仕事あがりにウイスキーをストロング缶で割るぐらいしか、できないけどよ……丸くなったもんさ」

 いや、もっと酷くなってますよ。

 酒をお酒で割るなんて、ヤンチャどころじゃない。

 さっさと、アルコール外来か、病院にブチこむレベルだ。


「おっと、長話しちゃいけねーな。一ツ橋って言うと、どうしてもヴィッキーや蘭たちと悪さしてた頃を思い出しちまう」

 一人で勝手に語って、満足してんじゃねー。

 お前は席内を守る側であって、絶対に飲酒運転とかすんなよ、クソが。

 

「お巡りさん! オレたち早くニャンニャンに会いたいの! もういい?」

 ミハイルが頬をプクッと膨らませる。

「わりぃわりぃ。もう行っていいぞ」

 おでこをかきながら、申し訳なそうにミハイルに頭をさげる。


 すれ違いざま、お巡りさんが低い声で俺にこう言った。


「あ、一ツ橋といったら、日葵のバカがいたよな?」

「え……」

 日葵って、俺の担当編集の白金 日葵のことだよな。

「あいつ、たまに酔っぱらってウチの交番に夜中遊びに来るんだよ……。んで、鉄砲をパクって近くの海岸で撃ちまくるんだ。ストレス発散とか抜かして……。いつか逮捕したいから、見かけたら教えてよ♪」

 そう言って、笑顔で俺に伝える。

 目が笑ってない。すごく怖いです。


「も、もちろんです!」

 背筋がピンと伸びる。

「うんうん、いい子を見つけたな。ミハイル」

「だろ? オレのダチだからさ☆」


 やべぇ、白金と会っているところをこのお巡りさんに見られたら、俺まで逮捕されかねない。

 さっさと、担当をチェンジしてもらおっと。

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