気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

絵師さんにはお任せしよう!

公開日時: 2022年7月8日(金) 14:00
文字数:1,641


 エレベーターのチンという音が、エントランスに鳴り響く。

 白金のご登場だ。

 本日もお子ちゃまファッションで、コーディネートしている。


 ツインテールの頭は、左右にさくらんぼのヘアゴムで束ねて。

 アイスクリーム柄のワンピースを着ている。

 多分、子供サイズ。


「DOセンセイ! お待たせいたしました!」

「ああ。ところで、この新しい受付嬢? 住吉はまだ未成年なんだろ? なんで働いているんだ?」

 俺が隣りに座っている彼を親指で示すと、また「ひっ」と悲鳴をあげる。

「一ちゃんのことですか? この子、コミケでレイヤーしていて。私がスカウトしたんです。聞けば、無職だって言うし。BL編集部も出来たから、新人の女性作家さんたちが気持ち良く、我が社に入れるよう、特別に受付をしてもらっているんですよ。このおどおどしている姿が、腐女子の方にはたまらないそうで。雇って本当に良かったです♪」

「え……そんな理由でか?」

「はい! 創作活動に力が入るそうですよ」

 白金が彼にウインクしてみると、またもや悲鳴をあげる。


「ひ、ひぃ! 白金さん、僕はもうあんな恥ずかしいコスプレしませんからね!」

 顔を真っ赤にして、泣き叫ぶ。

 対して、白金は至って冷静だ。

「一ちゃ~ん。そのことはナイショでしょ? 今夜も居酒屋で脱いでもらうからね♪」

「ひぃ! そ、それは上司としての命令ですか?」

「うん。断ったら、この前のコス写真、ネットにバラまくから♪」

 怖すぎ!

 住吉がちょっと可哀そうになってきた。

「わ、わかりました……終電までには帰してください……」

 肩を落として項垂れる。どうやら、観念したようだ。 

「へへへ。コミケであんな卑猥なコスプレを着る一ちゃんが悪いのよ」

 これ、児童ポルノ法違反では?

 まあでも、俺も住吉は嫌いなタイプじゃないから、しばらく放置しておこっと。


   ※


 エレベーターで編集部と上がる。

 久しぶりのゲゲゲ文庫は、かなり忙しそうに社員たちが動き回っていた。


「挿絵、間に合ったか!?」

「はい! もう『気にヤン』のポスターも仕上がってます!」

「よし。次、コミックの帯を作成するぞ!」

「わかりました!」


 俺の知らない間に、編集部はピンク色のイラストやポスターで彩られていた。

 タンクトップ、デニムのショートパンツ姿のヤンキーぽいヒロイン。

 その隣りには、対照的なヒロインが立っている。

 大きなリボンを胸につけたフリル多めのワンピース。頭にも同じくらい大きなリボン。

 とてもガーリーなヒロイン。


 ミハイルとアンナだ。

 そうか。トマトさんがここまで仕上げてくれたのか……。

 思わず目頭が熱くなる。

 俺は感動していた。

 ここまで来るのに、どれだけの困難、苦労を乗り越えてきたか。


 しかし……このイラスト、どこか違和感を感じる。

 それは、体つきだ。


 モデルになったミハイルとアンナは、低身長で貧乳……いや、絶壁という設定なのに。

 このイラストのヒロイン。

 身長がかなり高いモデル並みだ。

 そして、胸もかなりデカい。

 巨乳ギャル? といったイメージだ。


「どうですか!? DOセンセイ? 今やゲゲゲ文庫は、『気にヤン』で大盛り上がり! これで狙いに行きますよ! 博多社の全てをこの作品に賭けます!」

 白金はまだ発売前だというのに、勝ち誇った顔でガッツポーズをとる。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 それよりも、俺の……俺たちが命がけで取材して、作り上げた小説の表紙が……ヒロインが全然違う!

 別人ってレベルじゃねー!。


 もう既に販促ポスターまで仕上がっている段階だ。

 後戻り、修正はできないのだろう。

 その光景を目にして、血の気が引く。


「おい、白金……このイラストで、もう決まりなのか? 今から差し替えはできないのか……」

「へ? 無理に決まってじゃないですか。もう単行本の見本も出来ているし、来月には書店に並びますからね。このヒロイン、超人気なんですよ~ 編集部の男性陣も大のお気に入りで、可愛いからって二次創作やって、夜のおかずにするファンまでいるんですから。ハハハ!」

「……」


 俺の思い描いたヒロインじゃない!

 これ、全く違うキャラじゃん……。

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