気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

カノジョの露出が激しくても、焦りは禁物

公開日時: 2022年1月7日(金) 10:42
文字数:3,058

 俺とミハイルは、店のお姉さんに連れられて、カウンター隣りの個室に入った。

 3畳ぐらいの小さな部屋で、ドアとドアに挟まれている構造だ。

 奥のドアからは既に猫の鳴き声が聞こえてくる……。


 部屋の中には、ロッカーと手洗い場、それに猫用のおもちゃが段ボールにたくさん入っていた。

 

 お姉さんが「貴重品や靴を脱いで入ってくださいにゃんね♪ オプションのおやつを持ってくるにゃん」と説明して去っていく。


 言われるがまま、靴を脱ぎ、ロッカーにリュックサックなどを入れ込む。

 錠をかけて、紐つきのカギを手首に装着する。

 ついでに石鹸で手洗いして消毒もしとく。

 なんかあれだな。行った来ないけど、ピンク系のお姉さんに会う前の素人童貞みたい。


 これで準備よしと、さっそく、個室の更に奥へと入っていく。


 ドアを開いた瞬間だった。


「「「ふにゃ~!!!」」」


 10匹以上もの小さな猫の大群が一斉に寄ってくる。


「な! こんなにいるのか!?」

 精々が3、4匹ぐらいだと思っていたのに。

 ちょっとした動物園じゃないか……。

 俺の驚きとは反して、隣りにいたミハイルは明るい顔でお出迎え。


「うわぁ☆ にゃんにゃんがいっぱ~い☆ おいでぇおいでぇ!」

 そう言うと、一匹のマーブル猫を抱きかかえる。

「ん~ん、許せない可愛さだな、おまえ☆」

 嫌がる猫を無視して、頬ずりするミハイル。

 わからんな、ヤンキーのくせして……。

 動物保護団体に入れば?


 いかんいかん、俺ってば、たかが小動物に嫉妬を覚えているぜ……。

 だが、男のミハイルでも許せない。

 なんだよ。いつも俺にくっついてくるせに。

 そんなにこのマーブル野郎が好きなのか!?

 あ、メスかオスかは知らんけど。


 俺が葛藤していると、それを知ってか知らずか。

 ミハイルが抱っこしていた猫を俺に差し出す。


「ほら、タクトも抱っこしてみなよ☆」

「え……」

 

 参ったな、俺は犬派なんだよ。

 そう腰は軽くないぜ?


「みゃ~」


 なにやら不機嫌そうに俺を見つめるマーブル猫。

 通訳すると、「おい、なにやってんだよ? あくしろよ!」と言っているようだ。

 仕方なく、俺は言われるがまま、そーっと猫をミハイルから受け取る……。

 と、その瞬間だった。


「んにゃぁ!」


 急に鳴き叫ぶと、毛を逆立てる。

 そして、ピョンとミハイルの手から飛び降りて、部屋の奥へと逃げていった。


「……」

「アハハ……恥ずかしがり屋さんなのかな?」

 苦笑いでフォローするミハイル。

 いいよ、俺は猫にすら嫌われるぼっちだってことを再確認できたのだから。


     ※


 先ほどの個室と違い、この部屋はかなり広い。

 自宅のリビングより奥行きがある。

 テレビに本棚、ソファー、クッション、テーブル。

 なんだよ、やっぱり人間様より快適な暮らしじゃねーか。

 よし、俺が転生したら、この店に就職しよう。

 

 ミハイルは床に座り込み、釣り竿のような猫じゃらしを持って、何匹かの猫たちとお戯れ。

「ほらほらぁ~ こっちだゾ☆」

 楽しそうで何より。


 当の俺はと言えば、ふてくされて、長いすに腰を下ろしている。

 ふと、隣りを見ると、小型の冷蔵ショーケースがあることに気がつく。

 ガラス製だから、中が外からでもよく見える。

 小さな缶の飲料がたくさん入っていた。

 上には『ドリンクバーです。何杯でもどうぞ』とポップが貼ってあった。


「ほう、これはいいな」


 やることもないし、猫も俺になつかない。頂くとしよう。

 ちょうど、俺の好きなコーヒー『ビッグボス』がある。

 一本取り出して、プシュっと音を立てる。

 香りを楽しみながら、一息つく。


 すると、なぜかそれまで俺をガン無視していた猫たちが、一斉に集まってくる。


「「「みゃお!」」」


 飛び掛かるように、足もとにくっつく。

「な、なんだ!?」

 俺がなにか悪い事したか……。

 困惑している俺にミハイルが声をかける。


「あ、タクト! コーヒーを飲みたがっているんだよ! あげちゃダメだからな!」

 そういう事か……。

 卑しい奴らめ。

 誰がやるか!

 これは人間様のコーヒーだ。お前ら下等生物にくれてやる飲み物はない!

 水でも飲んでおけ!

 このごくつぶしが。


 俺は近寄ってきた猫たちを睨みつつ、ゴクゴク飲み続ける。

 まったく、なんで俺がミハイルに怒られないといけないんだよ。

 

 そうこうしていると、先ほどの店のお姉さんが部屋に入ってきた。

 手に小さな皿と棒付きのキャンディーを持っている。


 なるほど、オプションのおやつか。

 あれが、1650円。

 行った来ないけど、キャバ嬢に貢いでみるたいで嫌だな。


「さあおやつの時間ですにゃーん♪ どちら様がクッキーをあげますにゃん?」

 と言って、小皿を俺に向けて見せる。


「ああ……ミハイル。どうする?」

 正直、俺はどうでもいいので、彼に振る。

「オレ、クッキーがいい☆」

 嬉しそうに手をビシッと上げる。

 そんなに俺より、猫と遊ぶのが楽しいのか……。

 んだよ、なんか俺が金払ってんのに、ホストと遊んでるみたいだぜ。

 行った来ないけど……。


 自ずと残った棒付きキャンディーが俺に手渡される。

「ハイ、アイスは株主様の方ですにゃんね♪」

 誰が株主だ、クソがっ!

「あ、これアイスなんですね……」

 手に持つと冷たいことを確認できた。

「そうですにゃんよ♪ にゃんこに上げるときは、お腹を壊さないようにゆっくりあげてくださいにゃん」

「は、はぁ……」

 知らんがな。


 お姉さんはそう注意すると、また部屋から出て行った。


 どうしたもんかと、俺はアイスキャンディーを手に固まっていた。

 これ……どうやってやればいいんだ?

 しばらく、アイスとにらめっこしていると、ミハイルが叫ぶ。


「タクト! 自分が食べちゃダメだからな! にゃんこたちにあげろよ!」

 また怒られちゃったよ……。

 しかも、食うわけないだろ。

「りょ、了解……」


 視線を床に下ろすと、一匹の猫が俺に向かって鳴いていた。


「んにゃ~お」


 誰かと思えば、さっき俺が抱こうとした時、嫌がったマーブルさんじゃないですか。

 今頃、なんだよ。人のダチに手を出しといて……。


「んにゃ~お」


 なにかを必死に訴えているみたいだな。

「あ、これか」

 どうやら、アイスキャンディーを欲しがっているようだ。

 仕方ないので、この猫にあげるとしよう。


 マーブルさんは、どこにも行く気配がなく、床にずっしりと座り込んでいる。

 このアイスが好きみたいだ。

 そして、ネコカフェでは上位種のようで、マーブルさんが俺のところに来てから、他の猫たちが一歩引き下がる。

 コイツ。この店のボスか……。

 よく見ると良い面構えだ。

 気に入った。

 にゃんこ博士! 俺はキミに決めた!


 そう決意すると、恐る恐るアイスをマーブルさんに向ける。

 爪で引っかかれたり、鋭い牙で襲い掛かるかもしれんからな……。


 だが、俺の思惑とは裏腹に、マーブルさんは大人しく小さな舌を出す。

 そして、アイスを美味そうにペロペロとなめまわす。

 なんてこった!?


「カワイイ……」


 俺のミハイルを寝とろうとした泥棒猫だというのに、なんという圧倒的な可愛さ!


「み~」


 目をつぶって嬉しそうにアイスキャンディーをしゃぶっている。

 

「はっ!?」


 気がつくとマーブルさんは俺の膝に前足をかけていた。

 別に意識してやったわけじゃないが、アイスはちょうど俺の股間あたりにある。

 そして、延々となめ回されるこの光景……。


「みゃ、みゃ……」


 ゴクッ。

 似ている、あのプレイに……。

 クソッ! 俺は犬派なんだ。

 だが、マーブルさんの可愛さにヤラれそうだ。

 

「みゃ、みゃ……」


 そう言い続けて、俺のアイスを誰にも渡すまいと食い込んでくる。

 他の猫が近づくと、「フゴロロロ!」と威嚇する。

 そうかそうか……そんなに俺が好きかぁ。

 愛い奴め。ちこう寄るが良い。


 ついに俺にもモテ期、キターーー!


 

 

 

   

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