気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

替え玉一杯は無料!

公開日時: 2021年7月21日(水) 20:00
文字数:2,630

「ふ~ん、ふ~ん♪」

 鼻歌交じりで赤坂 ひなたは洗面所で着替えている。

 もちろん、ドアは閉めてあるのだが……。


 なんか気分は童貞を捨てた感がある。

 事後というか……背徳感がパネェ。


「お待たせしました!」

 勢いよく引き戸を開く。

 あーら不思議、立派なリアルJKの出来上がり!

 相変わらずの校則違反しまくりなミニ丈。

 このJKが先ほどまで俺の股間とリンクしていたとは……(服の上からだが)

 思わず生唾ゴックン!


「じゃ、じゃあ、帰るか」

 俺の身体は回復しつつあった。

 少しの頭痛が残っていたが、赤坂から鎮痛剤をもらい、効きはじめたのだろう。


 まさかこの俺が制服を着たJKとラブホに入るとはな……。

 確かに取材の一つになるだろう。

 だが、相手が赤坂というのが引っかかる。


「どうしたんですか? センパイ?」

「い、いや……別に」

 なんとなく、頬が熱くなる。

「変なセンパイ」


 赤坂にホテルの支払いを聞くと「入るときに払った」という。

 金額を聞き、俺が財布から野口英世さんを数枚渡す。

 なかなか彼女は受け取ろうとしなかった。

 理由を尋ねると「貸しにしておきます」と答える。

 

 なんでじゃろ?



「本当にいいのか?」

「はい。今度、センパイと取材できる日が楽しみです♪」

「え?」

「だって私も取材対象の一人じゃないですか~」

 笑顔がこわっ!

「そ、そうか……」


 俺と赤坂はホテルの部屋から出る。

 細い廊下を真っすぐ歩くとエレベーターが見えた。

 歩きながらいたる所に扉が配置されていることに気がつく。

 各部屋の上には番号が割り振って有り、ナンバープレートが点灯している。

 見たところ、俺たちを含めてこの階は満室のようだった。


 そんなにおせっせしたいか!?


 エレベーターのボタンを押し、なんとなくドキドキする。

 赤坂をチラ見すると、彼女も同様に頬を赤らめている。

 きっと俺を助けたい一心で、ラブホに入ったのだろう。

 帰るときの恥なんざ、頭になかったんだろうな。


 チンッ!


 とエレベーターがご到着。


「あっ……」

 全く知らないカップルだった。

 大人しそうな若い女性と、ひ弱そうな男。


 特に男の方は赤坂が制服を着用しているせいもあって、「変なものを見てしまった」という顔で驚いていた。

 互いにすれ違いざまに「すみません」と会釈し、エレベーターを出入りする。


 というか、俺たちが出たばかりなのに、もう入室するのか?

 ラブホってそんなに回転率高いの?

 儲かりそう……よし起業しよう!


 ラブホから出ると、『先ほど』の現場に舞い戻った。

 福間と赤坂が揉めていた道路だ。

 アスファルトに目をやると、俺の血痕がわずかに残っていた。



「腹減らないか?」

「あ、そう……ですね」

 別に腹が減っていたわけじゃない。

 ただ、なんとなく気まずい雰囲気から逃げたかったんだ。


 めんどくさいので、俺の行きつけの店にする。

 ラブホの目の前のラーメン屋、『博多亭』

 というか、元々ここで一杯食べていくつもりだったからな。


「ここでいいか?」

「え……はじめてなのに、ラーメン?」

 ラーメンじゃ不満ってか!


「なんだ? 赤坂は豚骨ラーメン食べたことないのか?」

「ありますよ! 博多っ子なら食べるに決まっているじゃないですか!」

 ならば、純情であれ!


「じゃあいいだろ?」

「いいですけど……もっとムードが……」

 ぼそぼそと喋るので、俺はめんどくさくなってきた。


「なら帰るか?」

「あっ、待って! 食べます!」

「あー言えばこう言うヤツだな」

「センパイって女子に冷たくないですか?」

「別に」

「いじわる!」


 ~10分後~


「うーん、ここのラーメン、おいしいですねぇ♪」

 満面の笑みでラーメンをすする赤坂。

 さっきのムード重視発言はどうした?

 良い顔でラーメン食いやがって。

 なんだか、紹介した俺まで嬉しくなっちゃうだろ。

 

「フッ、この天才が見つけた秘境だからな」

「そこセンパイが自慢するところですか? 素直にこのお店のラーメンが美味しいって分かち合えばいいのに……」

 ええ、強要されたくない。


「あ、餃子も食べたくなってきちゃった」

「食えばいいだろ?」

「だって……」

 なぜか頬を赤らめる。


「大将! 餃子を一つ!」

「ヘイ、ありがとうございます!」

 俺が頼み終えると赤坂は不服そうな顔をする。


「どうした?」

「女の子が餃子を食べるときはもっと慎重にしてください!」

「なんで?」

「ホンット! センパイってデリカシーがないんですね」

 なにそれ? 美味しいの?


「いいですか? 餃子を食べたらニンニクの匂いがつくでしょ?」

「だったらどうした? ラーメンにもニンニクをたっぷり入れたらうまいぞ?」

 そう言って、俺は近くにあった下ろしニンニクをラーメンへ大量にぶち込む。

「はぁ……センパイに言った私がバカでした」


「ヘイ! 餃子お待ち!」

 店の大将が俺たちのテーブルに餃子を置く。


「うわぁ! 美味しそう!」

 怒ったり、喜んだり、忙しいやつだな。


「ところで赤坂」

「はい? なんでしょ?」

「お前の家はどこだ?」

「ブッ!」

 吹き出す赤坂。麺と汁が俺の顔にブッ掛かる。


「きったねぇな!」

「げほっげほっ! だってセンパイ……うちに…来たいんでしょ?」

「アホか」

 俺は持っていたタケノブルーのハンカチで顔を拭く。


「もう遅いだろ? 送るっていってんだ」

「え……どうして?」

 目を丸くして箸を止める。


「そりゃ、お前が女の子だからな……」

 ラーメンがうまい! うまい!

「女の……子……」

 絶句している赤坂を無視して、俺は大将に「替え玉、バリカタで!」と注文追加。


「ズルいですよ……こんなときだけ女の子扱いなんて……」

 なにをモジモジしとるか? 麺が伸びるぞ。


「別に。俺はこう見えて紳士だからな。マナーだろ?」

「私はそんな扱いされたことないですから……」

 そうか、こいつも曲がったことが大嫌いな性格だったな。

 まあこんな可愛げのないボーイッシュなJKは女の子扱いされないのも理解できる。


「誰と比較しているのか知らんが、俺は赤坂を女の子として対応している」

 言いながらも、大将が湯切りで持ってきたホカホカの替え玉をスタンバイ!

 替え玉をスープに入れてもらい、ズルズルとすする。

 やっぱうめえわ、この店。


「赤坂っていうのやめてください……女の子として扱ってくれるなら、下の名前で」

 口に手をやり、頬を赤らめる。

「え?」

「あの……ひなたって呼んでください!」

 いきなり叫ぶので、ラーメンを吹き出しそうになってしまった。


「りょ、了解……ところで、早くラーメンを食べろ。伸びるぞ」

「あっ、勿体なか!」

 そこで博多弁使うかね……。


 俺と赤坂……じゃなかった。ひなたはこのあとめちゃくちゃ替え玉しまくった。

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