気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

男の娘にも衣装

公開日時: 2021年7月23日(金) 11:33
文字数:2,308

「は、入っちゃったね……」

 そんな床ちゃんとお友達で顔を真っ赤にさせちゃって。

 これじゃミハイルのときと変わらんぜ?

 無理をさせてしまって、なんだか申し訳ない。

「そうだな、まあ取材だからな」

「うん……」

 俺は2回目ということもあってか割と落ち着いていた。


「まあ座ろう」

「そうだね……」

 顔が引きつっとるよ? 2回目の取材がラブホとかイキスギィ~なカノジョさんだよね。


 アンナをソファーに座らせると俺はリュックサックを床に置いて、一人で部屋を探索することにした。


 部屋の中は豪華なシャンデリアにダブルベッドが二つ……4人でするの?

 それからスロット機も2台。大型テレビが一台。

 奥に入るとなぜか風呂が二つもあった。

 一つはごく普通の浴室。もう一方はガラスで室内から丸見えのスケベなジャグジーだ。

 ラブホ初心者が入るべきところじゃなかったな……。

 この部屋はきっと乱交パーティーにでも使われる所なのでは?


 一通り部屋を物色すると、アンナの元へ戻る。

 当の本人はガチガチに固まっており、時折「ネッキーが一匹、2匹……」などと呟く。

 壊れちゃったよ。


「アンナ、大事ないか?」

「だ、大事にしてね……」

 なにを言っているんだ、この子。

「いいか? アンナが行きたいというから取材として来たが、今日は何もしないぞ?」

 一応、釘を打っておく。

 というか、少しでも安心してほしかった。


「な、なにもしないの?」

 ギギギッ……と軋むような音が聞こえる。

 恐らくアンナが首を回しているからだろう。

「ああ、なにもしない。だから安心しろ。俺はこう見えて紳士だ。合意のないそういう……行為は最も嫌いとする」

「タッくん……優しい」

 頬を紅く染めて、彼女はうっとりと俺を見つめる。

 見直してくれたのはありがたいが、男二人でラブホに入るのは二度とごめんだぜ。


「普通だろ? 合意なき行為は犯罪だ。俺は物事をハッキリさせたい性格なんだ。そんなグレーどころか真っ黒なコトは絶対にしない」

「か、かっこいい……」

「え?」

「かっこいいよ、タッくん!」

 なぜか俺の両腕を掴み、微笑む。

 こういう場所だぞ? ドキドキしちゃうだろ……。

 その気になっちゃうから、誤解することはやめてね?

 合意と見なすよ。


「と、取り合えず、メシでも食うか?」

 目の前のテーブルにメニューが置いてあるのに気がつく。

「うん! アンナ、ホテルでご飯食べるのはじめて☆」

 いや俺もだよ、しかもここは普通のホテルではないからね?


 俺はカツカレー。アンナはパスタを選んだ。

 注文を決めたので、俺がフロントに電話をかけようとしたときだった。

「ね、ねぇ……これも頼もうよ」

 振り返るとアンナは頬を赤くしていた。


「なんだ?」

 俺が問うと彼女は黙ってラミネートされた用紙を俺に差し出す。


『コスプレ 無料貸出♪』

~これでマンネリも撃退!~


「……」

 絶句する俺氏。

「か、勘違いしないで……一万円も払ったのに何もしないのは勿体ないでしょ?」

 ええ!? ヤル気マンマンですか!?


「ま、待て、アンナ。どういうことだ?」

 思わず生唾をゴックン。

「取材じゃない? アンナとタッくん……。だからこういうのも体験しておかないと小説に書けないかなぁ? って思って。ただそれだけ、何もないからホントに」

 マ、マジっすか!?

「そういうことか…それもそうだな!」

 声が裏返る。


「タッくんは何番がいい?」

 ちなみにコスプレの番号のこと。

 

 勇者タクトのターン。

 選択肢は8つ。

 1番喪服、2番ナース、3番セーラー服、4番婦警さん、5番レースクイーン、6番メイドさん、7番体操服(ブルマ)、8番スクール水着(90年度版)

 いや、最後だけ限定されすぎだろ。

 オーナーの趣味か?


 迷う……迷っちまうぜ。

 俺色にアンナを染め上げるならどうする?

 メニューと彼女を交互に見比べる。

 その回数、1秒に20回ぐらい。首が折れそう……。

 今日のファッションはとてもガーリーだ。

 なるべく彼女のイメージは壊したくない。

 喪服は絶対にないな。

 ミニスカートだったため、座っていると自然と裾が上がっていた。

 彼女の細くて色白の美しい太ももが嫌でも目に入る。


「タッくんの目、何かいやらしい……」

 ジト目で呆れかえるアンナさん。

 いや、ハードルあげたのご自分でしょ?

 こういう時、男ってのはテンパるもんなんすよ!


「む、むぅ……どれも捨てがたい」

「フフ…おかしなタッくん☆」

 嬉しそうに笑うアンナはどこか意地悪そうだ。

「俺は真剣だぞ」

 マジと書いて。


「ゆっくり考えて」

「そ、そうさせてもらう!」

 鼻息が荒くなる。

 レースクイーンは行き過ぎだろうな。かと言って体操服は見てみたいが彼女……いや彼の『ミハイル』さんが股間からふっくらしそう、という危険性を考慮しなければ。


「決めた! 6番で!」

「えっと確か…メイドさん?」

「そうだ! 俺はメイドカフェというものを知らん。だからアンナにはメイドさんになってほしい」

「いいよ☆ アンナがご奉仕してあげる☆」

 アンナさん……天使じゃないですか!

 

 こ、これは何事もなく終われるのか……?


 俺は右手に拳を作ると、電話を取る。

『トゥルル……ブチッ。はい、フロントです』

「あ、あの、ろ、6番!」

『は?』

「6番でおなーしゃす!」

 緊張で声がブレッブレ。

 そこへアンナがすっと横から耳打ちする。

 彼女の小さな声が俺をドキドキさせる。

「タッくん、コスプレの6番って言って」

「あ、そうだった。すいません…コスプレの6番で」

 ナイスパス、アンナちゃん。

『メイドさんでよろしかったですか?』

「はい」

『では、お部屋へお持ちいたしますので、少々お待ちください……』


「ふぅ……頼めたな。ありがとう、アンナ」

「ううん、私は大したことしてないよ?」


 だがこのあと気づくことになる、そう肝心の昼飯を頼み忘れたことを……。

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