気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

第二十一章 ニャンニャンパラダイス

眠り姫、ミハイル

公開日時: 2021年12月29日(水) 15:02
文字数:2,810


 運動会も無事に? 終えた俺は、眠るミハイル姫を抱えて、赤井駅に逃げ込んだ。

 あとは知らん。

 急いで学校から飛び出たので、三ツ橋の体操服を着たままだ。

 もちろん、ミハイルもブルマをちゃっかりと着こなしている。女子以上にお似合い。

 


 終電ギリッギリで、列車に乗り込む。

 ミハイルはかなり疲れていたようで、ずっと俺の肩の上で眠っていた。

 席内駅について、彼を揺さぶり、起こす。

「ほ、ほぇ? タッくん……」

 瞼をこすりながら、女の子のような甘ったるい声で話す。

 おいおい、アンナちゃんとごっちゃになってるぜ。

「ミハイル。お前の駅に着いたぞ。さっさと降りろ」

「うーん……やだ~ タッくんとまだ一緒にいるのぉ……」

「ったく」

 

 仕方ないと思い、彼を自宅に連れていこうと考えた。

 だが、この前の時みたいに無断外泊するのは良くない、絶対にだ。

 なぜならば、母親代わりのヴィクトリアにぶっ殺されるからな。

 とりま、連絡しておこう。

 

「しかし、電話番号をどうしたものか……」

 ミハイルのスマホから電話でもかけてみるかな?

 いや、他人の所有物を勝手に触るのは、好きじゃない。

 どうしたものか……。ん、待てよ。


 そう言えば、以前かかってきた見知らぬ市外局番は、ヴィクトリアの店からだったな。

 よし、そこにかけたらいいよな。

 思い出した俺はすぐに電話をかける。


『トゥルルル……ブチッ。はい、パティシエ KOGAでございますぅ~♪』

 なんだ、この猫なで声は? 番号間違えたかな?

「あのぉ~ 古賀さん家で間違いないっすか?」

『はい、そうですよ~ いつもお世話になっておりますぅ♪』

 若い女の声だ。しかし、あのアル中ヴィクトリアとは全然態度も声も違いすぎる。

「俺、ミハイルくんと同じ高校の新宮ていうんすけど……」

『あぁ!? んだよ、坊主か! チッ』

 急に態度が激変したんだけど?

 弟のミハイルと同様で、多重人格なのかな……。


『用はなんだ? さっさと言え! こちとら、晩酌中なんだよ!』

 てめぇはシラフの時がねーのかよ。

「あ、あのですね。今、電車なんすけど、ミハイルが起きなくて……今日、俺ん家に泊めてもいいっすか?」

『ああ……いいぞ』

 すんなり了承してもらえたな。


『ただし! 条件がある!』

「は、はい。なんでしょう?」

『ミーシャをちゃんと風呂に入れて、歯を磨かせること!』

「……」

 幼児じゃねーんだよ。

 とりあえず、ヴィクトリアに連絡を入れたので、俺は真島駅でミハイルを下ろすことにした。

 もちろん、この間もずっと眠っていて、俺はお姫様だっこでホームを歩く。



    ※


「ただいま~」

 母さんの美容院はもう深夜で閉店していたので、裏口から入った。

 家の中は静まり返っていた。

 二階までミハイルを抱きかかえて昇る。


 自室に入ると、薄暗い部屋の中、妹のかなでがノートパソコンとにらめっこしていた。

 ヘッドホンをして、ニヤニヤ笑いながら「ウヒヒヒ」と気色の悪い声をあげる。

 どうやら、新作の男の娘同人ゲームを楽しんでいるようだ。

 モニターには、おてんてんを縛り上げられたショタっ子が、頬を赤くして悶えていた。

 それを見て、かなでは満足そうに、マウスをクリックしまくる。

「ハァハァ……抜けますわぁ~」

 息を荒くし、視線は画面のまま、手だけを床に下ろして何かを探している。

 しばらく手をバタバタさせ、近くにあったティッシュ箱を掴むと、ちゃぶ台の上に乗っける。

「そろそろですわね……うっ!」

 まさか……ウソでしょ?

 と思った瞬間だった。


「チーン!」と鼻をかんだのであった。


「はぁ、花粉症は応えますわねぇ~」

 なんて紛らわしい妹なんだ。

 

 俺がその光景にドン引きしていると、やっとのことで、こちらに気がつく。

「あらぁ、お帰りなさいませ。おにーさま♪」

「お、おう。ただいま……」

「ん? ミーシャちゃんをお連れになったのですか?」

 未だ夢の中のミハイルを指差す。

「ああ、疲れて寝てしまってな……今夜は泊まらせることにしたよ」

「そうですの……。ところで、ミーシャちゃんはなんでブルマ姿なんですの?」

「これか、まあちょっと学校でな…」

 もう説明すんのがめんどくさい。


 俺がなにを言ったわけでもないのに、かなでは合点がいったようで、手のひらを叩く。

「なるほど! 校内でしっぽりがっつり、ヤッちゃったんですのね♪ 貫通おめでとうございます♪」

 中学生の女子が言うセリフじゃない。

「お前は何を勘違いしてるんだよ……」

「え? ついにお二人は結ばれたとばかり……」

 どこをどう結ぶんだよ。

 妹とはいえ、話していて疲れる。



「悪いけど、今日は下のベッド、ミハイルを寝かせてもいいか?」

 俺のベッドは二段ベッドの上だからな。移動させるのに苦労する。

「いいですわよ♪ じゃあ、おにーさまはかなでと上のベッドで、童貞を捨てましょ♪ 一晩かけて」

「はいはい。かなでは一人で寝てくれな。俺は男同士、ミハイルと一緒に寝るから……」

 そう吐き捨てると、抱きかかえていたミハイルを、ようやくベッドの上に寝かせる。

 気がつけば、深夜の1時近い。

 俺もあと数時間すれば、朝刊配達の時間だ。

 少しでも寝ておかないと、持たない。


 体操服をきたまま、ミハイルと一緒に眠りについた。



    ※


 何か、身体が重い。

「あいたた……」

 変な寝かたをしていたのか、肩が痛い。

 ふと、隣りを見ると、そこには長いブロンドの美少女が……。

 ではなく、古賀 ミハイル。

 すぅすぅと寝息を立てて、まだ夢の中だ。


 肩の痛みの原因がわかる。ミハイルだ。

 彼が俺の右肩に抱き着き、顎をのせている。

 しかも、逃げられないように、細い脚で俺の太ももをロックしていた。

 時折、ミハイルの膝が股間へグリグリしてくる。

 目覚めたら、体操服にブルマ姿の可愛い子が、襲ってくるんだもの。

 健康的な男子なら、ナニかが反応しちゃうよね♪


「ミハイル、おい……ミハイル」

 間違えが起こる前に彼を起こす。

「ん……タクト? あれ、なんでオレん家にいるの?」

「違う。ここは俺の家だ」

「あ、ホントだ。タクトのベッドだ……」

 状況をまだ把握できてないようで、ボーッと俺の目を見つめる。

 キッスしちゃいそうなぐらいの至近距離で。

「おはよ☆ タクト☆」

 瞳を揺らせて、優しく微笑む。

 頼むからやめてくれ。

 抱きしめて、チューしたくなっちゃうだろ。


「ああ、おはよう。ところで、俺は今から朝刊配達に出るから……その身体から離れてくれないか?」

 俺がそう言うと、やっとのことで、自身がベッタリと身体をくっつけていたことに気がつく。

「う、うん……ごめんな。オレ寝相が悪いから…」

 頬を赤く染めて、恥ずかしそうに掛布団を被る。

 なんか事後っぽい態度とるのやめてね。

 俺は何もしてないよ?


 とりあえず、ベッドから出ると、体操服を脱ぎ捨て、仕事用のジャージに着替える。

 その間も背後からずっと視線を感じる。

 何度か振り返ると、俺の着替えるところを恥ずかしそうに、見つめている。

 目元まで布団で顔を隠していた。


「じゃ、いってくるわ」

「あ、うん……いってらっしゃい☆」

 

 うーむ、なんか同棲しているカップルみたいだな……。


 




 

 


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