気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

真のサブヒロインは、千鳥力!?

公開日時: 2022年4月27日(水) 14:41
文字数:3,723


 花火が終わりを迎え、俺はそろそろ、混浴温泉であるクーパーガーデンから出ようと、ミハイルに提案する。

 すると、彼はなぜか、ぎこちなく頷く。

「あ、うん……」

 妙に元気ないな。

「どうした? 夏とはいえ、夜の温水プールだ。身体を冷やしたのか? なら、早く『タンスの湯』で身体を温めよう」

 俺がそう促すが、彼は急に慌てだす。

「あ、お風呂ね……」

 どうも、歯切れが悪い。

 あれか? 男同士とはいえ、一緒に真っ裸で大浴場に入るのが、恥ずかしいのか。


   ※


 クーパーガーデンを出て、また玄関で男女が別々になる。

 先ほどの更衣室に向かうため、バラバラに行動せねば、ならないからだ。

 左右に別れた階段を進んで、そのまま、更衣室で水着を脱ぎ、大浴場と露天風呂のあるタンスの湯に行ける。


 行きは疲れたが、帰りはこりゃ楽だ。


「じゃあまたね」

 どこからか、若い女性の声が聞こえてきた。

 見れば、競泳水着に眼鏡の女子。

 北神 ほのかだ。

 リキに別れを告げて、奥の女子専用廊下へと進んでいく。

「うん。ありがとな、ほのかちゃん」

 頬を赤くした力がオーバーに両手をブンブンと振って、別れを惜しむ。



「リキ、結構、順調みたいだな」

 彼の背中に声をかけてみる。

「ああ、タクオ! こりゃ、イケるかもだぜ!」

 拳を作って、はしゃぐリキ。

「だといいな」

「そうだ! 今から俺と一緒に露天風呂へ行こうぜ! マブダチとして!」

「ああ。俺もちょうど、ミハイルと行くところだったんだ……なあ、ミハイル?」

 隣りに視線を戻すと……そこには誰もいなかった。

「なっ!? ミハイル? どこだ?」

 心配になって、辺りを探すが、どこにもいない。

「タクオ、ミハイルのやつなら……ほれ。もうあっちに行ったぜ?」

 リキの指差す方を見れば、階段を物凄いスピードで走り去るミハイルの姿が。

 うむ、濡れた水着の小尻も最高……じゃなかった!

 なんであいつ、逃げていくんだ?

 ちょっと、腹が立つわ。


「まあタクオ。ミハイルもなんか用事あんじゃね? 腹でも壊したとかよ」

「な、なるほど……」

 それなら、確かにあの動揺した姿も頷けるか。

 結構、あいつ。ああ見えて、恥ずかしがり屋だからな。


   ※


 更衣室で、水着を脱ぎ、近くにあった小さなタオルを手に取ると、早速、大浴場に入って見た。

 中はかなり賑わっている。

 おじいさんや親子たちで、ガヤガヤと騒がしい。

 全員フル●ンで、見ていてエグいがな。


 俺は簡単にシャワーで身体を洗い流すと、まずは露天風呂である『タンス湯』へと向った。

 別府の夜景を楽しみながら、塩水で温められた天然温泉らしい。

 たまには、都会から離れた静かな高原で、リラックスしたいからな。


 大浴場を抜けて、露天風呂に出た。


 湯船は全部で、上から4段に別れた構造になっている。

 一段目に屋根があり、二段目から完全に露天風呂。三段目が一番大きく、また足湯も完備。最深部が寝湯になっていて、石造の枕まで完備。

 こりゃあ、日々の疲れが取れるってもんだ。


 俺は迷うことなく、寝湯の方へ降りていく。


 最近、自作『気にヤン』の執筆を追い込んだせいで、肩がかなり凝っているから。

 少しでも肩こりをほぐしたい。


 湯船につかり、仰向けになって、寝てみる。

 枕もいい感じの高さで、ちょうど耳に水が入らないぐらいだ。

「ごくらく、極楽~」

 なんて鼻歌が出るぐらい快適。

 どうしても、身体の力を緩めると、足先が浮かんでしまうが、そんなこと気にならないぐらい、気持ちが良い。


 上を見上げれば、星々がたくさん広がっていて、最高のプラネタリウム。

 前方に目をやれば、別府湾や街の夜景が見渡せる。


 ちょっと、熱すぎるぐらいの温泉だが、半身がどうしても、水中から浮かんでしまうので、濡れた素肌を、前方から吹きつける強い風が、火照った身体を冷ます。

 これはこれで、気持ちが良いものだ。


「来て良かったなぁ」


 と目を瞑って、呟いてみると……。

 誰かが俺の言葉に同調してくる。


「だよな!」


 瞼を開いて、声の主を探す。

 左側には誰もいない。

 じゃあ、逆の右を見てみるか……。


「うなぎぃっ!?」


 水中にうなぎが泳いでいる。


「な、なんだこいつ!? どこから入ってきたんだ!」

 パニックを起していると、大きな手が俺の肩をつかみ、静止させる。

「どこ見てんだよ、タクオ? 俺だよ」

「へ?」

 うなぎの持ち主は、千鳥 力。その人であった。


「ああ……お前だったのか。未知の生命体がこの別府に落ちてきたかと思った」

「ハハハッ、宇宙人なんて信じてんのかよ、タクオってやっぱ変わってんな」

 そう言って、俺の背中をビシバシ叩く。

 いや、確かに君のおてんてんは宇宙人だよ。


 だって、ごんぶとだし、長すぎるし、水中から顔を出すなんて……。



 咳払いして、動揺を隠そうとする。

「お、おほん! お前のって、その……デカいんだな」

 恐る恐る、彼の股間を指差す。

「はぁ? そうか。フツーじゃね?」

 いや、異常だ! 見たことない! 信じたくもない!

 馬並みだ。

「普通ではないだろう。リキ、お前のってさ。何というか、デカいというか、長さもあるし……」

 怖いよぉ!

「そんなに驚くなよ、ハハハッ。タクオが小さすぎんじゃね?」

 比較したことないけど、普通の部類だと思ってます。

「だって、浮かぶか? 普通……」

「え、タクオは浮かばないの?」

 巨乳の人が浮かぶと聞くが、男の話は初めてだ。


「ないよ……」

「そっかぁ。まあ、俺もあんまり温泉とかこねーから、わかんねーや。うちの親父とかも浮いてるしな~」

 家系だってか!


 リキは俺のことなど気にせず、温泉を楽しんでいる。


 だが、ここである疑問というか、不安を覚える。

 ミハイルのことだ。

 彼は幼いころから、リキやここあと一緒に遊んでいたらしい。

 多分、お泊りとかも。

 ならば……ミハイルのサイズも知っておかないと。

 だって、怖いじゃん!


「なあ、リキは……ミハイルと風呂とか、入ったことあるのか?」

「え? ミハイルと? あるよ。近所だし、ヴィッキーちゃんにはお世話になってるしなぁ」

「じゃあ、そのミハイルってお前と同じぐらいの……そのサイズだったか?」

 彼の回答に思わず、生唾を飲み込む。

「うーん」

 しばらく考え込むリキ。

 沈黙が怖い。

「最近は一緒に入らないからなぁ……多分、同じぐらいじゃね?」

 ファッ!?

「そ、そうなんだ……」

 あの華奢な身体で、どうやって、『ガンホルダー』におさめるというのだ?



 と、ここで、また新たな疑問が俺の頭に浮かぶ。

「なあ。ところで、そんなに長いサイズのをどうやってパンツに入れるんだよ?」

「え? 太ももにゴムのバンドで折りたたんでるぜ。普通のことだろ?」

 あっさり、爆弾発言をするリキ。いや、リキ兄貴。

「そ、そうですね。普通のことですよね。普通の……」

 なぜか縮こまってしまう俺だった。


   ※


 長い、長すぎる……なにがって?

 この隣りの野郎のことだよ。

「それでよ、ほのかちゃんのどこがいいかってよ。まず、あの真面目そうな顔とは反したワガマボディ! それに眼鏡の奥からたまに見える鋭い眼差し。あと、毎回制服着てくるというこだわり! たまらねぇよな! あとさ、気づかいもできるし、芯が強い女の子だって思うわけ。自分の気持ちは曲げない潔さ! 全部、全部が可愛すぎて……」

 うるせぇ!

 お前がどれだけ、ほのかのことを想ってることは、もうわかったよ。

 一時間近くも聞かせられるこっちの身にもなってくれ。

 もうさすがに、熱さで身体のぼせてきた……。

「悪い、リキ。先にあがるわ」

 ちょっと、熱で頭がふらつく。

 フラフラと立ち上がろうとする……が、ごつい彼の大きな手が俺の腕を掴む。

「ちょ、ちょっと待てよ! タクオ! これからがいいところなんだ、もうちょっと付き合ってくれよ!」

「話なら温泉を出てからでいいだろ……」

「いや、俺の気持ちはこの夜景を見ながら、マブダチのお前と語り合いたいんだって!」

 俺の腕を一向に離そうとしないリキ。

 だが、もう相手をしてられん。

 早く出ないと俺が倒れそうだ。


「悪いが出るぞ……」

 必死の思いで、湯船から脱出しようとした瞬間だった。

 見くびっていた。『剛腕のリキ』の異名を。


 俺の意思とは反して、力づくで引っ張られ、地面に叩きつけられる。

「いってぇ……」


 石畳の上でうつ伏せの状態に倒れてしまった。

 心配したリキが咄嗟に立ち上がる。

「わりぃ! タクオ、大丈夫か!?」

 急いで俺の元へ駆け寄ろうとするが、彼も長時間、湯船に浸かっていたせいか、思ったように足が動かず、フラついている。

「ありゃっ!」

 リキのアホな声と共に、ドシン! とナニかが、乗っかかてきた。


「いってぇぇぇ!」


 倒れこんでいる俺の背中に、リキの巨体がボディプレス。

 あばら骨が折れたかも?


 だが、そんなことよりも、気になるのは、俺の臀部でんぶあたりだ。

 ナニかが、俺の割れ目にグニョグニョとうごめいている。

 ま、まさか!?


「わりぃ、タクオ。こけちまった……」

「そんなことはいい! 早く俺から離れろ! こんなところ、誰かに見られたら……」


 時すでに遅し。

 目の前には、細い脚が4本。


 見上げると、そこには、おかっぱ頭のキノコ頭が二人。

 同じクラスの日田兄弟が立っていた。


「し、新宮殿! まさか、氏は、剛腕のリキとそのような関係……」

「兄者、ここは一つ……」


 お互いの顔を見つめあうと、無言で頷く。


「「ぎゃあああ! ホモダチだぁ!!!」


「……」

 終わったな、俺のスクールライフ。


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