気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

第三十章 おっしょい! 百万人のショタ祭り!

男の娘、漢の祭りに参加する

公開日時: 2022年6月28日(火) 14:00
文字数:1,666


 俺は少数精鋭の特殊部隊により、強制的に宗像先生から引き離された。

 タクシーの中で、アルファ隊員ことアンナは

「ほら、これで殺せたでしょ☆ 小説の世界でモブヒロインをちゃんと殺してあげてね☆」

 なんて恐ろしい提案を出してくる始末。

 隣りにいた相棒のブラボー、ひなたも便乗する。

「そうですよ~ アンナちゃんの言う通り、ヒロインは私たち若い女の子同士だけでいいよね~♪」

「ね~☆」

 と二人して、俺の頭上でハイタッチ。

 恐怖しか感じられなかった。

 もうこの二人は敵に回したくない。



 俺だけ先に地元である真島に降ろされた。

 二人が言うには、

「もう二度と盗られたくない」

 宗像先生を警戒しているらしく。

 俺が自宅に入るまで、じっとタクシーの中から見守るほど、不安なようだ。

 帰宅して、二階の自室から顔を出してみると、二人は安心したようで、手を振ってタクシーを出発させる。


 その光景を目の当たりにして、俺は地元の商店街にこう叫び声をあげた。

「うちのヒロイン達……半端ないって!」

 直後、スマホが鳴り出す。


 着信名は、北神 ほのか。


 なんだ。休む暇がないな。

「もしもし?」

『あ、琢人くん? 今、暇でしょ?』

 勝手に決めつけるな!

 めっちゃ忙しかったわ!


「まあ……今はな。要件はなんだ?」

『なんか怒ってる? あのね、明日の夜、12時の電車に乗らない?』

「は? 夜中の電車……終電しているだろ?」

『違うよ、明日はオールナイトで電車は動いているよ。博多だから』

 ちょっと言っている意味がわからない。

「要件が見えてこない。ちゃんと説明してくれ」

『あのね。正確には明後日の朝方に、山笠やまかさ追い山おいやまをやるんだよね。それで取材になると思って』

「ああ……そう言えば、山笠のシーズンだったな。随分参加したことないし、確かに福岡を代表するお祭りの一つだ。小説の取材としては、面白いかもな」

 なんか意外だ。

 山笠の追い山と言えば、血気盛んな男たちが命をかけてまで、競い合うレースだ。

 熱気というか、殺気さえ感じる。お祭り。

 700年以上も続く伝統文化を、腐女子のほのかが見たいだなんて。


『なら、明日の夜に博多駅で集合しましょ♪』

「了解した。徹夜でお祭り気分か、楽しみだ」

『うん。追い山が始まる前に、中洲の無料案内所も取材に行こっか?』

「誰が行くか! じゃあな」

 イラついたので、こちらから雑に通話を切ってやった。


 散々な目にあったから、心身ともに疲弊していた。

 二段ベッドの下で、妹のかなでは、卑猥な男の娘抱き枕を抱きしめて夢の中だ。

 俺も寝るかと、梯子に手をかけた瞬間、再度スマホが鳴り出す。


「もしもし? 無料案内所は行かないと言っただろ!」

 ほのかと思い込んでキレ気味に話す。

『あんないじょ? なんのこと、タクト?』

 ミハイルだった。

 ついさっきまで、アンナちゃんモードだったのに、こいつ瞬間移動できるのか?

「いや……こっちの話だ。要件はなんだ?」

『あのさ、夏休みだし、たまにはオレとも遊ぼうよ……。明日、一緒に“パンパンマン”ミュージアムへ行こうぜ☆』

「ブフーッ!」

 思わず大量の唾を、自分の布団に吐き出してしまった。

 15歳の男子が、あの幼児向けアニメの施設に遊びに行くだと?

 しかも俺と?


「すまん。明日は先約があってな。ほのかとお祭りに行くんだよ」

『はぁ!? なんだよ、それ! お祭りとか……なんで、オレを誘ってくれないの……ひどいじゃん』

 な、泣き出しちゃったよ。

「待て。ミハイル。お前は山笠という祭りを知っているのか? 出店が並ぶような一般的なお祭りとはちょっと違う。漢たちのレースを見に行くんだ。すごくお堅いお祭りだぞ?」

 格好いいんだけどね。

『やまかさ? 知らなぁい~ でも、タクトがほのかと二人だけで行くのはイヤだ! オレも見てみたい!』

「わかったよ……ほのかのやつなら、別にミハイルが一緒でも嫌がらないだろう。なら、明日の夜、博多駅に集合できるか? ヴィッキーちゃんにも山笠だからと、しっかり説明しろよ」

『うん☆ ちゃんと、ねーちゃんに許可もらうよ。夜のピクニックみたいで、楽しそうだな☆ おやすみ、タクト!』

「ああ、おやすみ……」


 夏休みなのに、休めてねぇ!


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