気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

若くて可愛い女子高生? でもついてないなら、いりません。

公開日時: 2022年8月21日(日) 14:00
文字数:1,325


 俺は博多駅から小倉行きの電車に乗り込む。

 疲れていたから、地元の真島駅まで快速列車を利用した。

 快速だから客が多く、座ることはできないが、20分ほどで到着できる。


 真島駅の改札口は二階にある。

 電子マネーを機械にタッチさせて、出口に向かう。

 出口は左右に分かれていて、左手の山側が駅に隣接している大学。

 数々の有名人、芸能人、トップアスリートの出身校だ。

 まあ俺には関係のない場所だから、反対側の右手にあるエスカレーターで一階に降りるのだが。

 こちら側は海側、真島商店街がある。


 エスカレーターの手すりに肘を置いて顎をのせる。

 どうしたものか。あすかの自伝小説をたった1週間で20万文字も使用するとか。

 彼女の出生から始まり、両親に捨てられた過去、おばあちゃんが一人に育てて……盛れば、どうにか文字稼ぎできるか。

 

 そんなことを考えていると、手すりから肘が滑ってガクンと体勢を崩してしまう。

 エスカレーターの終点だ。


「あいて……」


 周りに若い女子高生たちが立っていて、俺のその姿が滑稽に見えたのか、クスクス笑っていた。

 ちくしょう。ダサいところ見られちまったな……なんて苛立ちを覚えたが、“その姿”を見て、ドキッとしてしまう。

 

 壁にもたれかかった一人の美少女……。

 肩まで伸びた美しいブロンドの髪は首元で結い、纏まらなかった前髪は左右に垂らしている。

 強い風が駅舎の中に吹き込んできた。

 きっと離れた海岸からの潮風だと思う。

 周りにいた女子高生たちがフワッと宙に上がるスカートを急いで抑える。

 いつもの俺なら、その光景を目で追ってしまうのだろう。


 でも、今はこの子に釘付けだ。

 小さな顔に叩きつけられた強い風に対して、無反応。

 寂しそうに地面を見つめている。

 長い前髪が乱れてしまい、薄紅色の小さな唇にくっついてしまう。

 グリーンの瞳はどこか潤んで見える。


 大きな星がプリントされたブルーのタンクトップに、ホワイトのショートパンツ。

 俺はその美しい光景に、しばらく見とれていた。


「あ、タクト……」

 寂しげだった顔が一変し、明るい顔になる。

「ミハイル。お前、なんでここに……」

 そうだ。美少女じゃない。

 こいつは正真正銘の男の子。

 しっかりついている野郎だ。

 いかんいかん。

 頬をバシバシと叩いて、正気を取り戻す。


「久しぶり! タクト☆」

 俺に気がついたミハイルは、一気に距離を縮めた。

 手に紙袋を持って嬉しそうに微笑む。

 彼が低身長だから、どうしても俺が上から目線になる。

 つまりタンクトップの中が見放題。

 ガードがゆるゆるだから、ピンクのトップが見えそうだ。

 思わず視線を逸らしてしまう。

「……」

 くっ! だからミハイルモードは嫌なんだ。

「どしたの? タクト?」

「いや、なんでもない……。ところで、なぜ真島にいるんだ? お盆はヴィッキーちゃんと過ごすんじゃなかったのか?」

「ねーちゃん、ずっとお酒飲んでたから、今酔っぱらって寝てるんだ☆ だからタクトにおちゅーげんを持ってきたんだ☆」

 と持っていた紙袋を差し出す。

「お中元ね……悪いな。中はなんだ?」

「オレが作った木の実のケーキ☆ ねーちゃんから新しく習ったレシピなんだ☆ ホールサイズで三段にしたから、みんなで食べてよ☆」

 オシャレ過ぎるだろ!

 男が作るか? そんなケーキ。

 デパートでしか見たことない。

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