気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

小説家の推定年収は7000万!

公開日時: 2022年8月30日(火) 14:00
更新日時: 2022年8月31日(水) 05:49
文字数:1,349


「アンナ……ここまで来てもらって悪かったな」

「ううん。タッくんとの取材がいっぱい詰まった初めての小説だもん。これぐらいなんてことないよ☆ それに……タッくんの初めてのサインを誰にも盗られたくないもん」

 なんか最後のセリフだけ狂気を感じる。

 誰かに初めてを盗られたら、殺しかねないな。アンナちゃんってば。

「ははは……初めてのサイン本はアンナに渡すに決まっているだろ」

 そんなこと思ってもないんだけど。

「だよね☆」


   ※


「ところで、どっちがタッくんの書いた小説?」

 テーブルに並べられた大量の書籍を眺めるアンナ。

 左側がラノベ版で、右側がコミカライズ版だ。

「ああ。それならこっちが俺の書いた小説だ」

 俺が指差してみると、アンナの顔が凍りつく。

「え……これが?」

「そうだが、なにか問題……あ」

 今、思い出した。

 表紙がモデルのアンナではなく、イラストレーターのトマトさんが描いたヒロインに差し替えられたんだった。

 どビッチの花鶴 ここあに。

 まだ彼女に、このことを知らせていなかった……ヤベッ。

「これ、アンナがモデルなんだよね?」

「あ、ああ……表紙や挿絵は俺の知り合いになっているが、文章ではしっかりアンナを詳細に描いているぞ?」

「ふーん。タッくんもやっぱり胸が大きい子が好きなんだね……」

 緑の瞳から輝きが失せていく。

 このままではまずい。

「いやいや。前にも言っただろ? 俺は巨乳が苦手なんだ。これは絵師の人と編集部が勝手に決めただけで……お、そうだ! こっちの方はアンナにそっくりだぞ!」

 そう言って、右側のコミカライズ版を差し出す。

 すると、アンナの顔に笑みが戻る。

「すごぉ~い! これ、写真みたい! タッくんが絵師さんに頼んでくれたの?」

「う……」

 俺は噓をつくのは大嫌いだが、この場では仕方ない。

 胸を叩いて「そうだとも!」と苦笑いで豪語する。

「うれしい☆ じゃあ、そっちの方を全部ちょうだい! サイン入りで☆」

 ヒロインが全部買っちゃったよ……。

 コミカライズ版のみ30冊も。


   ※


 クソ重たい紙袋を4袋も両手に持ち、笑顔でアンナは「じゃあまたね~☆」と去っていく。

 男の俺が持っても、しんどかったのに、軽々と持ち上げて、スキップまで見せる余裕ぶり。

 あ、アンナちゃんの中身は男じゃん。

 

 結局、売れ残ったのは、肝心のラノベ版『気にヤン』だ。

 いやぁ。こっち売れた方が印税とか俺に入るんだけどなぁ。

 でも、まあアンナが喜んでくれたから、良しとしよう。

 憶測だが、中身がおバカなミハイルだから、小説より漫画の方が読みやすいだろう。


 一人黙って頷いてると、白金がトイレから戻ってきた。

「あ~ 腹いてぇ~ 昨日、イッシーとハイボール飲み過ぎたせいかなぁ……キムチと餃子が美味かったから……」

 ハンカチで手を拭きながら、ごっそり無くなったテーブルの本に気がつく。

「あ、DOセンセイ! どうしたんですか? コミカライズ版、ないじゃないですか!?」

「え。さっき売り切れたぞ? 1人の客が全部買ってくれた」

「ひょえ~! 私のツボッターのおかげですかねぇ」

 間違ってはないけど、それはアンナのストーキングのおかげだ。

「じゃあ、これで帰ってもいいか? ラノベ版は……もう売れないだろ」

「いいえ! コミカライズ版が人気なら原作はもっと売らないと! 売り切れるまで、DOセンセイはここに残ってください!」

 えぇ……。

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