気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

サブヒロインが勝つのは難しい

公開日時: 2022年6月10日(金) 14:00
文字数:1,515


 俺とひなたが駄弁っている間に、注文していた料理が出来たようだ。

 会計は先払いで、事前にレジでブザーを渡されている。

 テーブルの上に置いていたブザーが二つ揺れ出す。


「あ、出来たみたいですね♪」

「だな。ひなたは待っていろ。俺が受け取ってくるよ」

「え。いいですよ~」

 少し頬を赤くして、恥ずかしそうにするひなた。

「いや、こういうことは男が率先してやるもんだ。女の子のひなたは座って待っていてくれ」

「せ、センパイがそこまで言うなら……」

 ひなたは男勝りというか、ボーイッシュな感じだから、あんまりこういう扱いに慣れていないようだ。

 可愛らしいもんだな。


 俺は厨房近くのカウンターまで行き、店員に片方のブザーを見せる。

「ハンバーガープレートの方ですね~ ポテトを大盛にしておきたました~」

 サングラスをした若い女性店員。

「え、大盛?」

「はい。サービスです」

 ニッコリ微笑む。

「あ、ありがとうございます……」

 俺は首を傾げながら、トレーを受け取る。


「すいません。あとこっちのブザーのやつも……」

 もう片方を渡そうとすると。

「チッ」

 あれ、今舌打ちしなかったか?

「あ、あの……」

「はぁ~あ! ドルフィンプレートとドルフィンパフェの方ですね! はい、どう~ぞぉ!」

 プレートを雑にカウンターへと投げ捨てられた。

 ガタン! と音を立てて。おかげで、ちょっと料理がトレーにこぼれてしまう。

 なんだ、この失礼な店員は?

 全く、社内教育が出来てないんじゃないか。


 とりあえず、俺は二つのトレーを持って、ひなたが待つテーブルへと戻る。


「わぁ! カワイイ、イルカさんのご飯だぁ♪」

 手を叩いて喜んで見せるひなた。

「さ、食うか」

「はい! いただきます~」


 俺は改めて自分のプレートを眺めてみる。

 大盛ってレベルじゃないぐらいの、大量のポテトの山。

 こんなに食えるかよ。


 メインであるハンバーガーが食べることにした。

 味の方は……。

「うん。うまいな。なんというか、どこかで食べたことのある家庭的な料理。作り手の優しさを感じるぞ。む、ゴボウが入っている?」

 なんて食レポしてみる。

 あれ? この食感……どこかで誰かに食べさせてもらったような……。


 ふと、ひなたの方を見つめる。

「……」

 スプーンを口に咥えたまま、固まっている。

「どうした? ひなた。口に合わないか?」

「……か、からあああい!」

 そう叫んだあと、水をガブガブ飲み始めた。

「辛すぎですよ! これぇ!」

「ウソだろ? お子様向けのメニューだぞ?」

「ホントですよ! センパイ、他の人のやつと、間違えて受け取ったんじゃないんですか?」

 顔を真っ赤にして怒り出す。

「いや、それはないぞ……じゃあ、口直しにパフェを食べたらどうだ?」

「そ、そうですね……」

 気を取り直して、ひなたはひんやりと冷たいパフェを食べることにした。

 細長いスプーンで白いホイップクリームをすくってみる。


「おいしそ~♪」


 俺もこれなら、辛くはないだろうと安心してその姿を見守る。


 口にスプーンを入れた瞬間。

「……」

 又もや、固まってしまうひなた。

 顔を真っ青にして、額から汗が吹き出す。

「ど、どうした? ひなた?」

「にがあああい! そして、臭い~!」

「ええ……ウソだろ?」

「ホントですよ! そんなに疑うなら、センパイも臭ってみてくださいよ!」

 彼女にパフェを差し出されたので、俺は自身の鼻で確認してみる。


「うぉええ!」

 あまりの臭さに吐きそうになった。


 なんて表現すればいいのだろう?

 シンクの三角コーナーに一週間ぐらい溜め込んだ生ゴミみたいな臭いだ。


 このレストラン。ヤバくないか。

 ふと、背後から視線を感じたので、振り返ると……。


 柱の後ろに人影が。

 サングラスをかけた先ほどの若い女性店員だ。

「ざまぁ。クソアマ……」


 気色悪い女だな。なんだろ、あれ。


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