気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

ラブソルジャー、リキくん!

公開日時: 2022年7月29日(金) 14:00
文字数:1,111


 車内での恋愛相談が終わるころ、目的地である中洲川端駅に到着。

 二人は聞けば、やはり中洲には来たことがないという。

 まあ俺もこの街を良くは知らない。

 一期一会、毎晩人生を変えるドラマがあるというこの繫華街。

 主に居酒屋やスナック、キャバクラ、ガーズルバー。

 あとは大人の接待的な店が、あるとか、ないとか。


 俺が先導して、地下から階段を使って地上へと昇る。

 外は真夏の強い日差しで今にも火傷しそうな殺人的な暑さ。

 階段から出てすぐに見えたのは、レトロ感あふれる映画館。

 それを目にしたリキが、看板を指さして俺にこう言う。

「タクオ。今日の映画ってコレ見るのか?」

「い、いや……ここは違う」


 中洲川端のど真ん中に、あの映画館があるわけないだろう。

 ここは残念ながら、俺が一番愛している劇場、中洲サンシャインだ。

 開館して80年近くもこの地でいろんな作品を上映してきた由緒ある映画館だ。

 今時、上映後に客の入れ替えもせず、一日見放題、指定席なしの昔ながらのスタイル。

 しかも、売り子が「アイスクリームいかがですか~」なんて粋なサービス付き。

 そう。今日の目的地はここじゃない……。


「じゃあどこにあるんだよ?」

「マジでいいんだな……リキ? 覚悟はできているな?」

 最後に念を押しておく。

「うん、いいぜ!」

 とスキンヘッドを光らせて、親指を立てる余裕っぷり。

「そ、そうか……お前の覚悟はしかと受け止めた。ならば、案内しよう!」

 胸は痛むが、俺も男だ。

 ダチのためにこれぐらい……。


 とりあえず、中洲サンシャインに背を向けて、近くの交差点を渡る。

 道路を挟んで反対側には、あの美味くて有名な博多ラーメン、『二蘭』の本社ビルが立っている。

 中洲の一等地にそびえ立つ高層ビル。どの階も赤ちょうちんがたくさん並んでいて、観光客が来ても一発でわかるだろう。

 アンナがそれを見て、大喜び。

「あぁ~ ラーメンのビルだぁ~☆」

 だが俺はそれを無視する。

 今から戦地へと向かう兵士に対して失礼だからな。


 メインストリートである明治通りを抜け、狭い裏通りへと入る。

 一気に空気が重く感じる。

 たった数歩通りから外れただけなのに。

 ビルとビルの狭間だから、陽の当たりも悪く、日中だというのに、薄暗い。

 そして道を歩く、人も少ない。

 たまに電柱にもたれかかっている男を見かけるが、どこか怪し気に感じる。

 こちらをチラチラと見て、タバコを吸っている。


 そんな薄暗い通りを歩くこと数分。

 ついに見えてきた。

 思ったより小さな映画館だ。


「さ、ここだ。リキ、悪いが一人で行ってくれ」

「え? 俺だけ? タクオとアンナちゃんは?」

「悪いがアンナは女の子だから、お前が映画を見終えるまで、この辺で待機している」

 巻き沿いはごめんだ。

 悪魔に魂を売った気分。



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