気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

博多あるある

公開日時: 2021年7月22日(木) 11:58
文字数:2,573

 俺とひなたは支払いを割り勘で済ますと、博多駅へと足を向けた。


 外は既に真っ暗。

 スマホを強制的に電源を切られたため、時間は知らんが20時は超えているだろうな。


 博多駅は駅の上に高層ビルが複数連なっている。

 左からバスターミナル、博多シティ、KIDE、JPビルの順だ。

 この三つだけでもかなりの敷地を使っているのだが、まだまだ合体し足りないようだ。

 博多駅を増築しまくる計画があるのだとか……。


「随分、変わったな……この街も」

 ふと寂しさを感じる。


「なんですか、センパイ。おっさん臭い」

 おらぁ、まだそんな年じゃねぇ!

「いや、博多駅がここまで変わっていくのに……自分は変化がないと思ってな」

「……やだなぁ、センパイは十分変わってますって!」

 といつつ、人の背中をバシバシと叩くひなた。


「いってぇ……なあさっき聞きかけたがひなたの家はどこだ?」

「い、今なんて言いました?」

 顔を赤らめるひなた。

「え、家」

「違いますよ! その……な、なま……」

「だから家」

「知らない!」

 こいつは本当に忙しい女だな。


「家は|梶木《かじき》です」

 梶木とは俺の住む真島から二駅離れた地区だ。(博多寄り)


「なるほど。俺と近いな」

「え? センパイはどこなんですか?」

「俺は真島だ」

「うわ! 自転車で行けるレベルじゃないですかぁ~」

 中学生かよ。

「まあそうだな」

 俺は自転車ではいかんが。


 改札口を通り、列車に乗る。

 列車は空席が目立つ。

 二人してお見合いの形で対面式に座る。

 

「真島って有名な店がありますよねぇ」

「そんなんあるか?」

「えっと……BLってわかります?」

 わかるよ、嫌気がさすぐらい。

「痛いBLショップがあるって三ツ橋高校では有名なんですよね。店主はガチホモで、その子供もホモガキ。それから、これは裏情報ですけど……店のトイレではハッテン場にもなっているとか?」

 噂に尾ひれ! 尾ひれつけ過ぎィ!


「へ、へぇ……その店の名前はなにかな?」

「確か……貴腐人」

「それ、俺のかーさんの店」

「……ウソ」

「ホント」

「「……」」


 それからひなたのやつは、なにかを察したのか無言を貫いた。


『梶木~ 梶木~』


「じゃ、下りるか?」

「え、いいですよ。わざわざ下りなくても……」

「いや、夜道を女子一人で歩かせるのは、俺のルールに反する」

 紳士的判断!


「そんな……いつも塾帰りとか…これぐらいの時間になるのに……ブツブツ」

 なにをボソッと喋りよるか。ハッキリ言わんか。


 俺とひなたは列車から下りると、梶木駅の改札口を出る。


「家は近いのか?」

「歩いて10分ぐらいです」

 頬を紅く染めて、一歩後ろにさがる。

 なんでこんな時は遠慮がちかね?


 梶木駅も博多駅まではデカくないが、ビルと駅舎が一体化しており、複数の店がある。


 駅ビルを出て、『セピア通り』をしばらくまっすぐ歩く。

 少しすると左手に回り、『梶木キラキラ商店街』に入った。


 地元の真島商店街とは違い、道幅も広く、店もオサレ~なのが多い。

 しかも、真島より商店街の規模がデカい。

 商店街の入り口から長~い道のりだ。

 なので、出口がすぐには見えない。


「くっ! 真島の負けだ!」

「なにがです? 真島もいいところじゃないですか」

「嫌味に聞こえるが」

「だって同じ福岡市じゃないですか」

 嘲笑すんな。

 かっぺムカつく!

 やはり梶木民は福岡市民としての民度が高い。


 俺らが住んでいるギリギリ福岡市内の真島とは大違いだ。

 店もオサレ度も段違いだ。


 福岡市民……いや福岡県民は地区ごとにおいて、競争意識や地区によって差別しがちだ。

 博多や天神、大名に近いほどステータスを感じていいのだ。

 

 梶木は博多からそんなに近いわけではない。

 だが、昔から何かとオサレ度が高いことで有名だ。

 居酒屋もレパートリー多いし、オサレな古着屋、もっちゃん饅頭とか……。

 度々、ローカルテレビ局にて取材される街なのだ。


「しかし梶木もまた色々と変わったな」

「いちいちおっさん臭いですよ」


 梶木キラキラ商店街を抜けると、真島にもあるスーパー『ニコニコデイ 梶木店』が見えた。


「ほう、梶木にもニコニコデイが進出しているとは」

「失礼なニコニコデイぐらいありますよ!」

 ぐらいとはなんだ! これだから梶木民は!


 ニコニコデイの前には大型道路、国道3号線が流れている。


 大型の立体交差点があり、横断歩道がないため、強制的に歩道橋をあがる。

 歩道橋を渡ると、博多湾に隣接する梶木浜方面へと進む。


 梶木駅と梶木浜の中間ぐらいに、ひなたの住む家があった。

 比較的新しい建物で、オートロック式のマンション。

 しかもかなりの高層建築。

 

 チッ! なぜ人間は空を飛べないくせに、天空へと近づきたがる?

 お城が宙に浮いているとでも言いたいのか?


「あ、ここまでいいですよ♪」

「ふむ、そうか……しかし、デカいマンションだな」

「私は産まれてからずっとこのマンションですよ?」

「お値段のほどは?」

「そ、それは知らないです……パパが買ったので」

 買ったってことはもうローン払いおわってんのか!?

 それとも一括払いですか?


「そう言えば、有名人もたくさん住んでいるんですよ」

「は?」

「ミュージシャンとかお笑い芸人とか……」

「どうせローカルだろ」

 これ博多あるある。


「違いますってば! 東京の方々ですよ♪」

 めっさ笑ってはる。

 どうせ真島に芸能人は来ませんよ!


「じゃあな」

 バリムカついたので背を向ける。

「あっ、待ってください!」

 呼び止められて、振り返るとひなたは手にスマホを握っていた。


「あ、あの……L●NE交換しませんか?」

「ダメだ」

「……なんでですか!? アンナちゃんとは交換してたじゃないですか!?」

「L●NEは既読スルーという、いじめが横行しているのを知らんのか?」

 ダメ、ゼッタイ!


「しませんよ! そんなこと……」

「まあどちらにしろ、アンナとしか連絡できないように設定している……らしい」

「はぁ!?」

 ブチギレですやん。

「仕方ないだろ。特殊な取材対象でな。電話番号とメルアドなら構わんぞ?」

「今時、電話とかメルアドとか古くないですか!?」

 悪かったな! 古くて!


 俺は口頭で、自身の連絡先をひなたに教えた。

 ひなたは不満げにブツブツとぼやきながら、マンションの中に入っていった。


 彼女が帰ったことを確認すると、やっとのことでスマホの電源を入れる。


 起動した瞬間だった。


 YUIKAちゃんの可愛らしい歌声が……あ~癒されるぅ~

 のも束の間。

 着信名、アンナ。

 忘れてた……てへぺろ☆




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