気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

第三十五章 10年越しの恋

初恋

公開日時: 2022年9月4日(日) 14:00
文字数:1,376


 10年前。

 俺が小学生の頃。

 3年生ぐらいだったか。

 俺はクラスで浮いていた。

 曲がったことが大嫌いな俺は、間違ったことを正論のように語る奴を見ると、すぐケンカを売っていた。

「お前は間違っている!」と。

 もちろん、ケンカと言っても、理詰めの口ゲンカばかり。

 だから嫌われていた。

「新宮は弱いくせに、うるさい」て。

 

 次第に仲の良かった友達も俺から離れて行き、いつも一人ぼっちだった。

 だから、学校なんてつまらないところ。早いうちに見切りをつけてやると、不登校を自ら選んだ。

 家には新しい妹とか言う、クソキモい生命体を親父が連れて来たっけな。

 幼女のくせして、乳がデカくて、キモいったらありゃしない。


 やたらと俺になついてくるから、ウザく感じた俺は、よく映画館に足を運んでいた。

 色んな映画を見た。

 上映中の作品は全て見尽くすほど。

 洋画が好きだったのだが、観る映画がもう無くなってしまった頃。

 俺はシネコンてやつは苦手だったが、唯一観賞してない作品を上映中のカナルシティ博多に向かった。


 そこで、初めて出会ったのが、タケちゃんの映画だった。

 今でも覚えている。

 確か、作品名は『打ち上げ花火』

 当時名誉ある海外の最優秀賞を取り、話題になっていた。

 俺はタケちゃんと言えば、芸人というイメージが強く、別に好きでも嫌いでもなかった。

 お茶の間の人気者。

 どうせ、映画監督なんて趣味レベルでやっているのだろうと、少しバカにしながらチケットを購入し、劇場に向かう。


 だが、上映開始のベルが鳴るや否や、その先入観は全て消え失せる。

 圧倒的な映像美。独特なセリフ回し。目を覆いたくなるような暴力描写。

「すごい!」

 素直にそう思えた。

 たった1時間30分だったが、俺には30年分ぐらいの半生を見せられているように感じた。


 映画が終わっても、まだ胸がドキドキしていた。

「カーッ! 超すげぇ! 決めたぞ、俺はタケちゃんファンになるぞ!」

 なんて拳を作って、席から立ち上がる。

 よし、パンフレットを買って帰ろうとしたその時だった。


 隣りの席に座っている一人の少女が邪魔で、スクリーンから出られない。

「おい、女。映画終わったぞ」

「……」

 ひじ掛けに肘をつき、手のひらに小さな顎をのせている。

 長い金色の髪で顔が隠れていて、どんな奴かはわからないが、どブスのヤンキーだろう。

「聞こえてないのか? 早くどいてくれ!」

 人がさっさとパンフレットを買いたいというのに。

「……すぅすぅ」

「こ、こいつ」

 寝てやがる。

 俺は無性に腹が立った。

 早くパンフレットを買いたいという気持ちもあるが、なによりも先ほどまで上映していた崇高な作品『打ち上げ花火』をちゃんと観賞せず、眠っていることにだ。

 普段なら、無視するところだが、今日から俺はタケちゃんの推し!

 アンチ許すまじ。

「女。起きろ!」

 小さな彼女の肩を激しく揺さぶる。

「な、なによ……うるさいわね」

「女! お前、この映画を見ていなかっただろ! 眠っていたな!」

 ビシッと指差してやる。

「ああ……やっと終わったのね。この退屈な映画」

「なんだと!? 貴様、もう一辺言ってみろ!」

 彼女は深いため息をつくと、長い金色の髪をかき上げて、視線を俺に合わせる。

 その瞳を見て、一瞬で俺は言葉を失った。

 宝石のようにキラキラと輝く青い瞳。

 こいつ。外人か?


「退屈な映画だから、眠ってしまったことが何が悪いの?」


 それがマリアと初めて出会った日の出来事だ。

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