気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

既読スルーはよくない

公開日時: 2021年7月14日(水) 20:00
更新日時: 2022年5月3日(火) 15:25
文字数:1,695


 勝手にインストールされ、勝手に設定された俺のスマホアプリ。

 その名もL●NE。

 巷では既読スルーが横行していると聞く。

 ので、俺は10代だというのに、このアプリを使うことはなかった。

 というか、断っていたのだ。


 担当編集の白金も「ええ! L●NE使わないんですか?」と驚いてた。

 毎々新聞店長も「シフトとかあるからさ、L●NE使おうよ」と新手の詐欺のように、勧誘する始末。


 俺は人や時間に縛られるのが嫌いだ。

 だから、今まで使わずにすんでいたのに、この女装男子、アンナにしてやられたのだ。


 当の本人といえば、ニコニコ笑いながら、俺のスマホをタップしまくっている。

「はい☆ これでタッくんと繋がれたね☆」

 その繋がりってのがエロくも感じるが、ストーキングにも感じる。


「そ、そうか。で、なにを送るんだ、これ?」

「スタンプとか送るんだよ。あとで、アンナからタッくんに送るね☆」

 強制ですか?

「ならば、そろそろ帰ろう」

「うん☆」


 アンナを博多駅まで、紳士的に送り届けることにした。

 彼女はどうやら、俺が住んでいる真島まじまより遠くに住んでいるらしく、博多駅でお別れだそうだ。

 ま、そりゃ、そうだわな。ミハイルとアンナは、二人で一人。


「じゃあ、あとでね☆ タッくん!」

 笑顔で手をふるアンナ。

「おう、またな」

 博多口に一人彼女を残して、俺は改札口に向かった。


 駅のホームで次の列車を待つ。

「まったく、なにがしたいんだ? ミハイルのやつは」

 ひと段落ついたことで、何気なくスマホに目をやる。

 通知が偉い数になっている。

 その数、100件以上。

 なにこれ? 新種のウイルスにでも侵入されたんけ?


 8割はアンナ。


『今日は楽しかったね☆』

『アンナだよ?』

『(*´ω`*)』

『タッくん、いまなにしているの?』

『アンナはネッキーと一緒だから、帰りは心配しないでね☆』


 あったま、おかしーんじゃねぇの!?


 残りの2割は妹のかなでと母の琴音さん。


かなでから、

『ミーシャちゃんと会えましたの? おみやげは、男の娘でおなーしゃすですわ』

琴音から、

『かーさん、“かけ算”するのに材料が足りないの。帰りに本屋で新鮮なネタを買ってきてちょうだい』


 クソがっ!


 ともかく、俺のスマホが緊急事態宣言を発令しているので、後者の2人は捨て置いて。

 アンナに返信することにした。


『今日は楽しかったぞ。気をつけて帰るがよろし』

 

 すぐに既読のマークがつく。

 早すぎてこわっ!


「L●NE!」と通知音が鳴る。


『タッくん、プリクラ大切にしてね☆ また今度取材しよ☆』


「……」

 こ、こぇぇぇぇぇ! 


 プリクラを机やテーブルに貼ったら殺されそうだ。

 大切にしまっておこう。

 知らんけど。


 そうこうしているうちに、ホームに列車がつく。

 車内は夕方ということもあり、遊び帰りの若者、会社帰りのサラリーマンやOLで、座席は埋まってしまった。

 俺は電車のドアにもたれながら、今日のことを振り返っていた。

 

『タッくんなら……タクトくんさえ良ければ、アンナを使って!』


 あの夕暮れでの誓い。

 胸にすごく響いた。

 こんな俺を女装してまで、無理して、頑張って……。

 さぞ辛かったろう。

 

 もう彼女は、立派な取材対象だ。

 アンナというヒロインは、他にいないだろう。

 これでいこう。

 主人公はどうする?

 


 その時だった。

 スマホがブブブ……と音を立てる。

 画面に視線を落とせば、『ロリババア』

「チッ、白金かよ」

 人が余韻にひたっていたのに……。


「俺だ。なんか用か? 今電車のなかだ」

 ヒソヒソ声で喋るが、周囲の視線を感じる。

『あ、白金ちゃんです!』

「バイバーイ」

『ま、待ってください! ラブコメのプロットは、考えられましたか?』

 クッ! 今考えてたところだよ!


「ああ、取材の効果が出た。ヒロインは決まりそうだ」

『本当ですか!? 童貞のセンセイにモテ期が来たんですか!?」

「うるさい! とりあえず、切るぞ」

『わかりました。では、明日打ち合わせしましょう!』

「おまっ、まだプロットはできて……」

 ブツッと、耳障りな切られ方をしたので、スマホを床に叩き割ってやろうと思った。


「あ、俺……明日学校じゃん」

 

 そうアンナとのデートで、浮かれていた。

 明日が第二回目のスクーリングであることを、忘れていたのだ。


 嫌な予感が不可避。


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