気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

ギャンブラー、蘭ちゃん

公開日時: 2021年12月16日(木) 14:25
文字数:3,627

 俺と坊主頭の好青年、石頭くんは朝礼台の前に並び立つ。

 一本のマイクが置かれていた。

 

「えー、では開会式を始める!」

 デカデカと大きな声で叫ぶ宗像先生。

 隣りには眼鏡をかけた裸体の中年教師が……。

 ブルマ着たアラサーとゴールデンパンツのおっさん。

 変態同士、このまま結婚したら?

 お似合いだよ。


「今回は三ツ橋高校の光野みつの先生と全日制コースの生徒たちが複数参加してくれた……それにはちょっとした訳があるのだが……」

 あの裸先生の名前って、光野って言うんだ。

 ゴールデンパンツと言い、ピッカピカな人だね。

「本大会はバトルロワイアル形式で、行われる。つまり……今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」

 ファッ!?

 一体、何十年前のネタだよ!

 しかも、俺の大好きなタケちゃんをブルマで汚すな!

 せめてジャージ着てやりなおせ!


 ざわつく運動場。

 ただ、驚いているのは通信制コースの生徒たちだけだ。

 全日制コースの学生たちは別に驚くこともない。

 どうやら、事前に情報を仕入れていたようだ。

 俺の隣りに立っている生徒会長、石頭くんはピシッと背筋を伸ばして、光野先生の股間を見つめていた。

 うーん、石頭くんって片思いしちゃってる?


 

 しかし、宗像先生の思いつきというか、お遊びにも程があるってもんだ。

 俺たち未成年を集めて、こんな夜から殺し合いとか……ちょっと教育委員会が黙ってませんよ。

 悪い冗談だ。

 俺は一ツ橋代表として、マイクを使い、訴える。


「質問いいでしょうか?」

「新宮! 私語してんじゃねぇ!」

 ちゃんと手をあげて質問してやっただろうが。

 いつまであの映画好きなんだよ。

「すみません……」

「てめーら、大人なめてんじゃねーぞ!」

 なめてねーよ。ちゃんと敬語使ってるだろが。


 宗像先生は意外とタケちゃんのファンだったのか。

 ま、それはいいけど、ちゃんと授業やれよ。


「質問は一個までだ! 二個言ったら欠席扱いするぞ、コノヤロー!」

 酷い……なんてブラックな運動会だ。

 

「あ、あの……バトルロワイヤル形式でしたっけ? 勝者には一体のなんのメリットがあるんですか?」

「質問は一個にしとけったろ!」

 もうどうでもいいわ…。

 宗像先生は「まあいい」と咳払いして、改めて説明を始めた。


「今、我が校のホープ。新宮 琢人が質問してくれたことだが……」

 人を勝手に希望にすんな!

「バトルロワイヤル形式で、最後まで生き残った者には、一年分の単位をやろうと思う」

 ファッ!?

 なにを言ってんだ、コイツ。

 運動会でMVPとったら、一年間、学校通わなくてもいいのかよ……。

 とんだ教師だな。


 宗像先生の発表に歓声をあげる生徒たち。主に一ツ橋のヤンキーたちだ。


「ヒャッハー! これで勝てば一年間遊べるぜ!」

「シャッアー! 単位ヤバかったらラッキー♪」

「ぼ、ぼかぁ、それよりも宗像先生の追加写真が欲しいな、ハァハァ……」

 あれ? 最後はヤンキーくんじゃないね。

 

 反して、一ツ橋の真面目組は正直、嬉しそうじゃない。

 そりゃそうだろ。

 毎日、コツコツとレポート書いて提出して、スクリーングにも真面目に通っている身分からしたら。

 こんなこと、前代未聞だし。

 バカバカしくなってくる。

 俺もそのうちの一人だ。



「あ、あと、これは通信制コースの一ツ橋高校の諸君のみだ。全日制コースのみんなには悪いが、単位はやれない。だってあのクソバカ校長が許さないからな」

 えぇっ、かわいそう。

 なんのために集められたんだよ。

「その変わりと言ってはなんだが、本大会で優勝をおさめたのものは『なんでも一つだけ叶えちゃう権』を授与する!」

 な、なにを言いだすんだ……。

 七つのボールでも探したあとみたいな、サプライズじゃないか。

 宗像 蘭、お前にそんな神的権限はないだろう。


 

 ふと後ろを振り返ると、三ツ橋高校の生徒たちが何やら不敵な笑みを浮かべていた。

 一番最初に目が行ったのは、赤坂 ひなた。


「フフッ……絶対に生き残ってセンパイと毎日、新聞配達させてもらうんだから…」

 いや、あなたこの前、一緒に配達したやん。

 それにただの仕事だから、願うことじゃない。

 

 その次は赤坂 ひなたの背後にいた福間 相馬。

「うっし! 俺は赤坂とラブホっ!」

 それはダメ。ただの犯罪。合意の元でじゃないと、法で裁かれるよ?


 最後は光野先生率いる吹奏楽部。

「全国優勝をこの大会で勝ち取るチャンスよ! 3年の先輩たちと光野先生のためにも絶対生き残るわよ!」

「「「おお!!!」」」

 ちょっと、待って。

 音楽コンクールは実力で勝てよ。

 他力本願だったら、もう出場するな。



 俺はため息をついて、頭を抱える。

「なんなんだ、このバカみたいな運動会は……」

 呆れていると、石頭くんがこういった。

「新宮くんは負けるのが怖いのですか?」

 彼の瞳は光りこそなかったが、その眼差しはとてもまっすぐだ。

「いや、別にそういうわけでは……」

「ならば、僕と真剣勝負しませんか? 一ツ橋の皆さんにも『なんでも一つだけ叶えちゃう権』はもらえるそうですよ」

 あのさ、君。仮にも生徒会長だよね?

 そんな子供じみたこと、マジで信じてるの……バカじゃん。


「は、はぁ……」

「もし新宮くんに好きな子がいたとしたら……。僕が優勝して『その子と付き合いたい』なんて宗像先生に願ったらどうします?」

 こいつ…俺を煽る気か。

「俺に好きな子なんて……」

 いいかけた瞬間、脳裏をよぎる。

 イガグリ頭の石頭くんとミハイル、いやアンナが口づけを交わす光景が。

 胸にグサリと、槍が刺さった気分。


 ふと、振り返る。

 ミハイルが立っていた。

 体操服にブルマ姿の可愛いアイツ。

 俺の視線に気がつき、笑顔で手を振る。


「タクトォ! がんばれよ~」

 あんな無垢な顔をしたヤツの唇を奪われるなんて……。

 ミハイルの隣りにいていいのは、俺だけだ!



 歯を食いしばって、覚悟を決める。

「いいだろう。石頭君、俺と真剣勝負だ」

「やはり君は一ツ橋のホープですね。いい殺し合いを期待してます」

 そう言って拳と拳で、無音のゴングを鳴らす。

 ていうか、命はかけないからね。

 殺しちゃダメ。



 俺と石頭くんの姿を見て、宗像先生が高らかに笑い声をあげる。


「だあっはははは!」

 相変わらず、品のない笑い声だ。

 アゴが抜けるぐらい大きく口を開いてる。

 のどちんこが丸見え。

 こんな体たらくだから、嫁の貰い手がないんだ。


「その意気やよし! さすが、私の弟子だ! 新宮!」

 お前のところに入門するバカはいない!


「あと、言い忘れたが、これだけの優勝賞品を準備しているんだ。負けた高校には罰があるからな」

「え……」

 思わず、背筋が凍る。

「負けた高校は全体責任として、運動会のあと、一晩かけて校舎、武道館、食堂、それから同じ系列の保育園、短大を掃除してもらう」

「ハァッ!?」

 なにそれ、絶対に負けたくない。


 それに対して、生徒会長の石頭くんが手を挙げる。

「宗像先生、よろしいでしょうか?」

「うむ、なんでもいいたまえ」

「その罰として掃除する際は、未成年の僕らだけが掃除するのでしょうか? さすがに未成年だけで残るのは良くないかと……」

 さすが、生徒会長。

 間違ってない、偉いぞ!


「ああ、それについては問題ない。負けた方の教師が一緒になって掃除するからな。保護者の人にも先ほど許可をもらっている」

 おかあさーん! 認めちゃダメだよぉ!

「そうですか。ならいいんです」

 ニコリと笑って納得する、無能な生徒会長。



 しかし、引っかかる。

 このバカ教師が負けたら徹夜で掃除する、なんて発想をするのはおかしい。

 何か裏がありそうだ。

 先生たちにとっては、デメリットしかない。


 そこで俺がもう一度手をあげる。

「すいません。少しいいですか?」

「新宮!」

 と叫んだあと、ブルマの中に手を突っ込む。

 股間から小さな何かをつかみ取ると、俺の顔に目掛けてぶん投げた。


 その行為に俺は驚き、思わず口を開いてしまった。

 謎の物体は超速球でスポンと、俺の口内へストライク。

 なんか暖かくて、フニャフニャしている。

 恐る恐る、舌先で確かめると、微かに甘い。

 グミか。


「私語は慎めったろ! で、質問はなんだ」

 こんのやろうが、きたねぇもん食わせやがって。

 グミを飲み込んでから、こう言った。

「失礼ですが、先生たちにとっては何もいいことないじゃですか?」

 俺がそう質問すると、宗像先生はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、妖しく微笑む。


「だあっはははは! それなら心配ご無用だ! 私たち一ツ橋高校の教師たちはみんな、お前らに今月の給料をぶっこんでやったからな!」

「は?」

 ちょっと、言っている意味がわかんない。

「つまりだな。この運動会は賭け試合だ。勝った高校の教師は今月の給料が二倍になっちゃうんだ!」

 クソじゃねーか。違法だ!


 俺は開いた口が塞がらなかった。 

 宗像先生は「だからお前ら絶対に勝てよ」と脅しをかける。

 

 それまで沈黙していた光野先生がやっと口を開く。


「えー、宗像先生のおっしゃった通りだ。私もこの前、高額な楽器を借金してまで購入したからな……。すまんが、三ツ橋の諸君には死ぬ思いで頑張って頂きたい」

 うん、こいつもクソ教師だったのか。

 終わってんね、この学校。



 

 

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