気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

割引券よりアプリの方が安い

公開日時: 2022年1月5日(水) 13:12
文字数:2,932

 ミハイルを残して、朝刊配達に向かった。

 仕事あがりに、バイクを直していると店長に声をかけられた。

「琢人くん、おつかれさま!」

「おつかれっす」

「あのさ、これ。琢人くんにあげるよ」

 そう言って、差し出したのは二枚のチケット。

 なんじゃこれ?

 可愛らしい猫がプリントされいている。

 

「席内に新しくオープンしたらしいんだよ。ネコカフェ」

「ネコカフェ?」

 悪いが俺はワンワン派だ。

 店長には悪いが、ここは丁重にお断りしよう。


「いやぁ、ガラじゃないっすよ」

「まあまあ、そう言わずに♪」

 店長はニコッと笑うと、俺のズボンのポケットに無理やりねじ込む。

「な……」

「琢人くんが好みじゃなくても、噂のカノジョさんはどうかな?」

「カ、カノジョ~!?」

 思わずアホな声で答えてしまう。


「そうだよ。最近の琢人くんってなんか輝いてるんだよね。カノジョが出来たんでしょ? 連れていってあげなよ」

 それミハイルことアンナちゃんのことだろ……あの子とは付き合ってないよ。

「い、いやぁ……俺とあの子はそういう仲じゃ…」

「じゃあ、もうワンプッシュぐらいかな? 頑張れ、若人!」

 店長はどこか満足そうに微笑むと、背を向けて店の奥にある自宅へと入っていった。


「ええ……」

 どうしようかな。

 タダでもらったものだし、まあとりえあず持って帰ろう。


    ※


 自宅に帰ってきて、リビングのある二階へと向かう。

 階段を昇っていくにつれて、なにか甘い香りが漂ってくる。

「ん? 母さん、こんな時間から料理作ってんのか」


 キッチンに立っていたのは、予想していた人ではなかった。

 体操服とブルマ姿で、鼻歌交じりにボールを泡立て器で何かをグルグル混ぜている。

「ボニョ~ ボニョ~ おっとこのこ~」

 スタジオデブリの名曲を口ずさみ、手際よく調理を進める。

 腕を激しく動かしているため、自然と身体が震えている。

 小さな桃のようなお尻がプルプルと踊りだす。


 なにこれ? 俺の新妻ですか?

 仕事上がりに、なまめかしいダンスとか、やめてください。

 後ろから襲いたくなっちゃうので……。


「あっ、タクト☆ おかえり~」

 俺に気がついて、振り返る天使はミハイル。

 くっ、こいつ、アンナの時はあざといくせに、素の時はなんていうか、自覚がないから、尚のこと見ていると、可愛くおもっちゃうんだ。

 どっちも同じヤツなのに……。

「お、おう……ただいま…」

 自分の家なのに、なぜか気を使ってしまう。

 目の前に、可愛い子がいるからかな。だがミハイルは男だぞ?

 しっかりしろ、琢人。


 頬をペシペシと叩いて、自我を取り戻す。

 そして、平静を装い、テーブルに腰を下ろす。

「ミハイル。何を作っているんだ?」

「これか? ふわふわスフレパンケーキだゾ☆」

 またそんな手のこんだ料理しやがって……。

 俺の胃袋を掴んで、どうする気だ?

「ほ、ほう……ミハイルは本当に料理が上手いというか、好きなんだなぁ」

「うん☆ 食べてもらう人がダイスキだと、スッゲー楽しいんだ☆」

 え……今、なんかしれっと告白されなかった?

「そうか……」

「もう少しで出来るから待っててな☆」

 ニコリと微笑むと、また俺に向かってケツをプリッと突き出す。

 そして、ボニョを歌いながら、腰を振って調理に戻る。

 料理ができる間、俺はテレビでもつけようと思ったが……。

 

 目が釘付けで、キッチンの方をガン見していた。

 だって目の前に美味しそうな桃があれば、かぶりつきたいじゃないですか。

 理性を保つのに精いっぱいでした。


     ※


 しばらくすると、酒くさい母さんと、瞼の下にくまがいっぱいできた妹のかなでがリビングに現れる。

「ふぁわあ。おはよ……あら、ミーシャちゃんじゃない」

 そうか、母さんはミハイルと会うのは久しぶりだった。

 前回は女装時だから気がついてない。

「あ、おばちゃん。おはようっす☆ 勝手にキッチン使ってるんすけど、良かったすか?」

「いいわよ。なんだったら、毎朝作ってくれて……」

 あなたは家事をしたくないだけでしょ。

 セルフネグレクトを願う母の願望を真に受けるミハイル。

 頬を赤くして、モジモジし出す。

「ま、毎朝、タクトん家に来ていいの……?」

「ダメだよ。ミハイル、母さんの言っていることは冗談だ、ほうっておけ」

「なんだぁ、じょーだんか…」

 肩を落として、フライパンの上で丸く膨らんだパンケーキをへらでひっくり返す。

 


 落ち込んだ彼を励ますために、店長からもらったチケットを取り出す。

「なあミハイルって猫とか好きか?」

「かなでは大好きですわ♪」

 おめーには聞いてねーよ!

「どうせ、かなではアレだろ? オス猫を擬人化させて絡めたいだけだろ……」

「テヘッ♪ バレちゃいましたか♪」

 うん、妹の性癖を当てる兄もどうかと思う。


「オレ、動物はなんでも好きだよ☆ どうして?」

 彼の瞳に輝きが戻る。

「新聞配達の店長がさ。ネコカフェのチケットくれてさ。よかったらこのあと、一緒にいかないか? ちょうどミハイルん家がある席内市に店があるらしいんだ」

 俺がそう彼を誘うと、目を丸くして「ホントか!?」と喜んでいた。


 たまにはアンナとじゃなく、ミハイルと取材ってもの悪くないだろう。

 あくまでもデートではない。ダチとしてだ。



 ミハイルがテーブルに大きな四つの皿を並べる。

 そこには見たこともないぐらいふわふわの丸いパンケーキが3つのせられていた。

 しかもホイップクリームとイチゴつき。

 どんなスイーツショップだ?

 相変わらずハイスペックすぎるヤツだ。早く嫁にしたい。


「うわぁ♪ ミーシャちゃんがこのパンケーキ作ったんですのぉ?」

 かなでが無駄にデカい乳を揺らせて、喜びを露わにする。

「そうだよ☆ 仕事あがりの疲れたタクトに甘いものが必要かなって思ってさ☆」

 なんて出来た嫁なのかしら……泣きそう。

 うちの女どもはここまで俺を気づかってくれないのに。

「いただきますですわ~♪」

「じゃあ、お母さんもBLびーえるだきます♪」

 おい、今なんつった?

 頑張って作ったミハイルママに謝れよ、琴音。


「さ、タクトも冷めないうちに食べてよ☆」

「ああ。ミハイルは食べないのか?」

 俺がそう言うと頬を赤くして、太もも辺りで両手を組み、顔を伏せてしまう。

「その……ひと口目が美味しいか不安だから、感想ききたくて……」

 乙女かよ。

「そうか、ならお先にいただくな」

「う、うん」

 クリームをたっぷりつけて、パンケーキにナイフを下ろす。

 音とも立てず、スルッと二つに切れた。

 フォークで口へと運ぶ。


「う、うまい……」

 正直、こんなうまいパンケーキは初めてだ。

 ちょっとしたプロより美味い。

 優しい甘みとバターの香り。それに舌の上でとろけそうなぐらい柔らかい生地。

 感動していた。涙が出そうなぐらい。

「ミハイル……これはうますぎる!」

 俺がそう言いきると、彼はボンッと音を立てて更に顔を真っ赤にする。

「そ、そっか! よかったぁ、自信なかったから……」

 いや、このレベルで自信がないとか言ったら、花嫁修業しているアラサーがかわいそうですよ。


 その証拠に、ほれ。

 うちの女どもときたら……。


「うめっうめっ……じゅるじゅる、グチャグチャ」

「おっ母様! ズルいですわ! おかわり狙ってるでしょ! 負けませんわ、くっちゃくっちゃ……」

 ケダモノ家族で恥ずかしいです。


「みんな喜んでくれてよかったぁ☆ まだいっぱいあるから、たくさんおかわりしてね☆」

 もう、あなたがお母さんでいいです……。


  


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