気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

第三種目

公開日時: 2021年12月23日(木) 14:31
文字数:4,025

 第二種目の騎馬戦は俺抜きで、勝利してしまった……。

 スコアボードを見ると、我が一ツ橋がリードしていることが確認できた。

 白組の三ツ橋が13点、対して紅組の一ツ橋は15点。


 どうやらヤンキーたちが、かなり頑張ってくれているようだ。

 それもそのはず、なんたってMVPには一年分の単位贈呈だからな。

 反則すれすれの行為もいとわない。

 時には殴ったり蹴ったりして、勝利を手にする。

 極悪非道な生徒たちだもの、相手選手がかわいそうに思える。


 その甲斐もあってか、真面目な三ツ橋の生徒たちは騎馬戦でかなり脱落していた。

 


「おお、この調子なら勝てるかもな……」

「うん☆ 正義は勝つもんな☆」

 屈託のない笑顔で拳を握るミハイル。

 いや、悪は絶対こっち側だと思う。

 三ツ橋の学生が、いたたまれない。



 宗像先生がマイクを握る。

「えー、次はまたペア種目だ」


 またかよ。

 バトルロワイヤル形式はどうなったんだ?

 基本、個人プレイだろ。


「第三の種目は題して、『地獄の頭かち割っちゃうよ、逆立ちロワイヤル』だ!』

 まーたアホな名前つけやがって。

 いちいち死を連想させるような名称にすんな。


 残った生徒たちは、互いの高校合わせて半々ぐらい。

 この試合に勝てば、団体戦では一ツ橋が自ずと勝利するだろう。

 今回もヤンキーたちが、暴力行為を働くのは間違いない。

 まさか、これらを見越しての賭け試合なのでは?



 そんな考えにふけっていると、誰かが袖を引っ張る。

「タクト! また二人で組もうぜ☆」

 振り返ると、何やら嬉しそうな天然の金髪ヤンキー少年が。

 てか、運動会始まってから、ずっとこいつと一緒にペア組んでるよな。

 ま、いいけど。

「ああ、そうだな…」

 断ると殴られそうだから。脅迫に近いよね。

「頑張ろうぜ!」

「お、おお……」

 超やる気ゼロ。


 

 各自ペアを組んで、グラウンドに集合した。


 俺とミハイル。花鶴と千鳥。それから先ほどの騎馬戦で暴力行為が目立ったヤンキーたちが数組。

「ほぼヤンキー組が勝ち残ったか……そりゃそうだよな」

 よく見ると、一ツ橋の真面目な生徒は俺だけじゃないか。

 ため息をついて、その光景に呆れる。

 すると、誰かが声をかけてきた。


「琢人くん! 良かった。私たち勝ってるね♪」

 振り返ると、そこにはパツパツの体操服を着た巨乳眼鏡が。

 北神 ほのか。

 こんな奴が勝ち残っているとは、同じ真面目組として屈辱だ。

「ほのか、お前もか」

「あったり前じゃん! 『なんでも一つだけ叶えちゃう権』でこの高校をBL本まみれにするまで私は……死ねない!」

 いや、お前は一度、頭かち割って死んで来い。

 そんな18禁を、高等学校に入れるわけにはいかん。


「そ、そうか……ところで、ほのか。お前ペア組む相手いないじゃないか?」

 ほのかは一人で立っている。

 連れの姿が見えない。

「それなら、大丈夫! すごい人と組んだから♪」

 胸を張って偉ぶる。

「誰だ?」

 俺がそう言った瞬間だった。


「アタシよ!」


 キンキン声が耳の中に鳴り響く。

 うるせぇ。

 誰かと思って、辺りを見渡す。

 

 砂埃が舞う中、一人の少女がこちらへとゆっくり向かってくる。

 前髪パッツンで揃えた、日本人形のような長い黒髪を揺らせて歩く。

 美人の部類なのだろうが、それよりも表情がきつい。

 誰だっけ?


「このアタシ、芸能人の長浜 あすかが来たからには安心しなさい!」

 あ、そうだ。

 自称、芸能人の痛い子だ。


「ああ……」

 俺はすごくどうでもいいと言う顔で、反応した。

「ちょっと! ああってなによ! あなた、この前アタシの握手会に来たでしょうが!」

「いや、あれはたまたまだろ?」

「キーッ! アタシのガチオタのくせして!」

 違います、事実を湾曲しないで下さい。



「つまり、ほのかは長浜と組むのか?」

「ええ。トップアイドルのあすかちゃんがいるなら百人力よ!」

 一人の力にも満たないと思われます。

「そうよ! こう見えてアタシは中学校で体育の成績いいんだから」

「へぇ~」

 どこまで本当の話なんだか。

「ちょっとぉ! 疑う気なの!? なんならググりなさいよ!」

 だから、なんでもググって個人情報出たら怖いだろ。

 あなたはほぼ素人レベルの認知度なんだから。



       ※


 相手側の選手は……。

 水泳部から姫と王子ペアの赤坂と福間、それに生徒会長の石頭くんとおかっぱの女子、吹奏楽部の女子生徒が二人。

 かなり人数、減らされたな。

 もうこっちの勝ちでいいんじゃないか?



「では、皆の者! 準備はいいかぁ!?」

 よくねーよ、なんで毎回、説明を受けるんだよ。

 事前に情報をちゃんとくれや。

 勝てるもんも勝てないぜ。


「本種目は持久戦だ。一人が逆立ちをして、相方が両足を持ち支えろ! 力尽きたら脱落だ! 残った二組が決勝へといける!」

 なるほど、やっとアホみたいな運動会ともおさらばか。

 さっさと勝って終わっちまおう。


 だが、残念ながら俺は体力に自信がない。

 自然とミハイルが、逆立ちすることになった。

 俺は彼の細い脚を持てばいいだけなのだから、こりゃ楽だ。


「よーい……はじめいっ!」


 宗像先生の掛け声と共に、一斉に皆、逆立ちを始めた。

 支え手はほぼ、男子。

 やはり体重が軽い方が、逆立ちを選ぶようだ。


「うん……しょっ!」

 ミハイルが俺に向かって両脚を放り投げる。

 それを上手くキャッチした。

 彼の白く透き通った美しい素肌を拝めた。


 しばらくすると、ミハイルの身体がふらつく。

「んん……けっこう、キツッ……ああっん!」

 変な声を出すんじゃない!

 なんだか別の意味でドキドキしてきた。


 ふと隣りの奴らを見る。

 花鶴と千鳥コンビだ。

 だが、彼らにはどこか違和感を感じる。

 それもそのはず。

 逆立ちしているのが、男の千鳥。

 その太くてゴツい足を、女の花鶴が細い手で軽々と支える。


「ふお~ 頭に血がのぼっちまうぜぇ~」

 ホントだ。つるっぱげが、ゆでダコになってる。

「ハハハッ! 頑張るっしょ、ハゲ野郎」

 花鶴は時折、片手だけで支え、反対の手で脇をかいている。

 なんて酷い扱いだ。


 そのまた隣りを見れば、異様な光景が……。

 アイドルの長浜 あすかが支え手になり、北神 ほのかが逆立ちしている。

 そこまでは普通なのだが。

 ミハイルや千鳥が苦戦しているなか、ほのかは平然としている。

 むしろ、どこか楽しそうだ。


「うへへっ……あすかちゃんのブルマがタダ見できるなんてぇ……」

 彼女は顔を赤くすることはない。が、鼻から大量の血を吹き出している。

「うーん、まだなの~ アタシは芸能人なんだから、こんな力仕事向いてないのよ!」

 支えている長浜の方が辛そうだ。

 目を閉じて、必死にもがいている。

「ハァハァ……」

 相方のほのかと言えば、逆立ちしながら、長浜 あすかのブルマを下からのぞいていた。

 変態だ。



 ~それから10分後~


 次第に、みんな力尽きていく。

 隣りの千鳥は花鶴が飽きて、両手を離してしまい棄権。

 変態行為に走った北神 ほのかが大量出血で、退場。

 他のヤンキー達も持久戦には弱いようで、お得意の暴力で相手をねじ伏せるわけにもいかないから、早いうちに脱落してしまった。


 今回の試合の方が、全日制コースの三ツ橋に分があるようだ。

 瞬発力に長けたヤンキーたちよりも、日頃から部活で鍛えている真面目な子たちの方が体力がある。

 気がつけば、一ツ橋のペアは俺とミハイルのみだ。


 相手側は水泳部コンビと、生徒会の二組。


「ただいま、15分経過~」

 宗像先生は非情にも生徒たちの顔が真っ赤になっても、一向に辞める気配がない。

 ずっと時間を測っているのみ。



「負けないわ! 絶対にMVPとって、新宮センパイと新聞デートするんだからぁ!」

 と叫ぶのは赤坂 ひなた。

 だから、バイトしたいなら面接にいけよ。

 それを屈強な身体で支えるのが、福間 相馬。

「頑張れよ、赤坂ぁ……ふぅふぅ…」

 何やら息遣いが荒い。

 よく見ると、上からひなたのお股を直視している。

 どこもかしこも、変態ばかりだな。



 そのお隣りは三ツ橋の代表でもある石頭 留太郎くん。

 彼は目をつぶって微動だにしない。

 おかっぱの女子に両脚を持ち上げられ、空中で浮かんでいる。

 そう、彼は両手を地面につけず、合掌しているのだ。

「南無阿弥陀仏……」

 即身仏にでもなる気ですか?


 

 ミハイルのことが気になって、声をかける。

「大丈夫か、ミハイル? もう負けてもいいぞ」

「絶対にイヤだ~! オレもMVP欲しいもん!」

 お前まであんなアホな願いを信じているのか。やめとけ。


 その時だった。ミハイルの声が裏返る。

「ヒャッ!」

 何やら異変が起きたらしい。

「どうした? キツいのか?」

「ち、ちがう……何かが、ああんっ!」

 妙に色っぽい声で喘ぐ。

 それを聞いて、俺は心臓がバクバクする。


「一体どうしたんだ?」

 ふと下を見てみる。

 目に入ったのは、紺色のブルマ。

 そして、生まれて初めて見た女の子のお股……じゃなかった、男の股間。

 俺が両足を広げているため、見放題だ。

 なんてことだ。

 絶景、絶景。

 スマホがあれば、この至近距離で写真を撮って永久保存しておきたいぐらいだ。


 だが、そんなことも言ってられない。

 なぜならば、ミハイルの美しい太ももに、ちょこちょこと動き回る黒い物体が見えたからだ。

 クモだ。

「ひ、ひゃん! くすぐったいよ! 倒れちゃう~!」

 ミハイルは予想しなかった来客に、己の身体をくねくねと動かして悶絶する。

「タクトォ……虫、取ってぇ!」

 ええ!?


「い、いいのか? 俺が触っても?」

 なんだか背徳感が。

「早くしてよぉ! あぁん、倒れちゃう~」

 まったくいやらしい声で喘ぎやがって!

 

 俺は言われた通り、右手でミハイルの太ももに手を伸ばす。

 クモは意外と素早く、ササッと下へ下へと降りていく。

 ヤバッと思ったころにはもう遅かった。

 ちょこちょこと動き回った後、たどり着いたのはお山のてっぺん。

 つまり、ミハイルのもっこりはんだ。


「うう……」

 同性とはいえ、さすがに『ここ』に触れるのは躊躇する。

「タクト、早く! 負けちゃう~よぉ」

「ええい! 我慢しろよ!」

 勢いよく、平手で少し膨らんだブルマを叩く。


「あぁん!」

「……」

 

 クモは地面に落ちると、スタコラサッサーと逃げていった。


「ハァハァ……ありがと。タクト……」


 こちらこそ、なんかありがとうございました。



  




 

 

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