気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

第六章 デート! DATE!

初デートいえば……

公開日時: 2021年7月10日(土) 19:00
更新日時: 2022年4月23日(土) 15:42
文字数:3,306


「あの……タクトさんはミーシャちゃんと、どういう関係なんです?」

「え? 俺とミハイル?」

 って、お前が本人なのに、どんな設定なの?

 今日はリア充どもの仮装パーティーなのかもしらんな。


 ま、告白をフッた罪悪感もあったことだ。

 一日ぐらいミハイルの戯れに、付き合うのも悪くない。


「俺とあいつは友達……かな?」

 なぜか頬が熱くなる。


「そうですか☆ ミーシャちゃんにお友達ができて、安心しました☆」

「え?」

「あの子、いつも私とお姉さんとしか、遊びませんから☆」

 それ自分でいう? 悲しくない?


「そ、そうか……ところで、今日はこれからどうする?」

「タクトさんの行きたいところが、いいです☆」

 ニッコリと笑う天使……(♂)


 なんかドキが、ムネムネするから、やめてくださいますか?

 素のミハイルさんじゃ、ダメだったんですか……。


「じゃ、じゃあ『カナルシティ』はどうだ? あそこなら一日遊べる」


 カナルシティとは、博多駅から徒歩10分ほどの複合商業施設である。

 ファッションからグルメ、映画など全て揃っている建物だ。

 リア充はこぞって、ここを休日の場所として選ぶことも少なくない。

 それに現在は、外国人の方々もよく遊びに来る。



「わぁ! 私、『カナルシティ』いったことないんです☆ いきたい!」

「そ、そうか。ならば、俺についてこい」

「うん☆」

 博多駅からまっすぐ『はかた駅前通り』を直進する。


 今日はなぜか、ミハイルこと古賀アンナちゃんは、行きかう男どもを釘付けにさせる。

 俺以外の、人間も彼を『女』として認識しているようだ。

 いや、誤認というべきか……。



「みろよ、あの子! 可愛くね!?」

「うわぁ、俺タイプだわ……」

「つーかさ、連れの男がないわ……」

 最後の一言いるぅ!?



「あの、タクトさんって『世界のタケちゃん』が好きなんですか?」

 首を傾げるアンナ。

「え? ……ああ。俺がこの世で一番尊敬している人間だ」

 って、お前知っているくせに!


 はかた駅前通りをまっすぐ歩くと、緑で覆われた建物が見える。

 これがカナルシティの入口だ。

 数年前に『カナルシティ イーストビル』という別館が作られ、より目立つ建物になった。


「うわぁ、キレイな建物ですね☆」

「そうか? それより、アンナ……ちゃん?」

「あ、私は『アンナ』と呼んでください☆」

「む……ま、待て。ならば、敬語はやめてくれ。俺もアンナと呼ぶから『タクトさん』ってのもなんか正直、嫌だ」

 言っていて、自分で恥ずかしくなっちまったよ。

 なにこれ、男同士でなに自己紹介しあってんの?


「じゃあ、タクトくん☆ これでいいかな?」

 その笑顔……やめて……。

 食べちゃいたいぐらい、可愛すぎる。


「お、おう。じゃあアンナ。カナルシティのどこにいく?」

「タクトくんが決めて☆」

「え?」

「だって私、田舎育ちで全然わかんないもの」

 そういうアンナはどこか寂しげだ。

 ていうか、マジでミハイルさんも、カナルシティ来たこと、ないんけ?


「了解した、ならば、映画を見よう」

 これって初デートのテンプレだよな?

「うん☆」


 イーストビルのエスカレーターに乗り、2階に上る。

 そのまま歩いていると、本館に繋がる渡り廊下が見えた。

 

 本館に入ると今話題の『アヴァンゲリオン』のフィギュアがお出迎えだ。

 汎用イケメン型決戦機AVA初号機様である。

 近年、リメイクが行われ、またブームが再燃しているようだ。


「これって、プラモデル?」

 え? 知らないの? あのAVAだよ!

「アンナはアニメに詳しくないのか?」

「アニメ? アニメはえっと、スタジオ『デブリ』とか、夢の国の『ネッキー』とかなら、知ってるよ☆」

 そこの設定は、そのままなんかい!

「そ、そうか。これはAVAと言ってだな。すごい兵器なんだぞ」

「ふーん。ロボットなの?」

「……」

 なにかと、リア充や非オタクたちは『機械』や『ロボット』という単語で終わらせてしまう。

 説明がダルいので、俺は「映画館にいこう」とアンナを誘う。


 

 映画館につくと若者がいっぱいチケット売り場で並んでいた。

 それもそうだ、今日は土曜日。

 学校が休みだったり、授業あがりの制服を着用したままの高校生たちもいる。

 あとは年中暇そうな大学生だな。


 これだから、俺は土日の映画館は好かん。

 俺は映画は静かに鑑賞するのを楽しむ。

 よって……“こげん”にわかな映画好きなどという、下等生物と同じ空間で、同じレベルで、俺の大好きな映画を観たくないのだよ!

 

「タクトくん? 映画、なにを見るの?」

「あ、すまん。目の前にリア充どもがいて虫唾が走った」

「リアじゅう? なあにそれ?」

 そこはバカだな!

「アンナは知らなくていいことだ。映画はもう決めているぞ」

「なに見るの?」

 フッ、よくぞ聞いてくれた。

 本日はめでたくも、俺の生涯における師匠である『世界のタケちゃん』の新作、『ヤクザレイジ』の封切り日なのだ!


「アンナ、ここは上級者の俺に任せろ」

「うん☆」

 チケット売り場に並ぶと、後ろから何やらヒソヒソ声が聞こえる。


「ねぇ、あの二人付き合っていると思う?」

「いや、ないでしょ? 女の子が弱みでも握られてんじゃね?」

「ハーフかな? わたし……あの子だったらいけるかも」

 怖えな! 最後のやつ、ただの変態女だろ!


「いらっしゃいませ! 作品はお決まりですか?」

 受付嬢が営業スマイルを見せる。


「うむ、『世界のタケちゃん』の『ヤクザレイジ』を高校生2枚!」

「あ、作品名だけで結構ですよ?」

 笑顔で毒つくな! ムカつく店員だ!


「タクトくん……私、高校生じゃないよ?」

「え?」

 そうか……ミハイルとばかり思っていたから、その『設定』を忘れていた。

 しかし、ならば身分はどうする気だ、アンナ?


「私、プータローだから……」

 アンナも床がお友達になっているぞ。

「あ、そうなのか……。じゃあ高校生一枚と大人一枚」

 なんか地雷を踏んだ気がしたので、俺が二人分支払った。


「かしこまりました。では、チケットをお持ちになられて、エスカレーターをお登りください」

 受付嬢からチケットを受け取る。


「気にするな、アンナ。無職は悪いことではないぞ? 俺の親父も無職だから安心しろ」

 なんか自分で自分が悲しくなってきたよ……父さん。

「う、うん……でも映画代は払わせて!」

 今日一番強気な顔だ。

 ちょっとミハイルよりな顔つき。


「了解した。では1800円だ」

「はい、2000円ね」

 受け取ったお札から、200円のお返しでーす。

 こいつって、結構こういうところ、しっかりしているのね。



 長い長いエスカレーターを昇る。

 何度来ても、カナルシティの映画館のエスカレーターは楽しい。

 左手を観れば、窓ガラスからカナルシティが一望でき、右手を観れば、ハリウッドスターのアートが壁一面に並んでいる。

 これだけで俺はテンション爆上がりなのである。


 エレベーターから降りると、さっそくチケットもぎりの女性スタッフが笑顔でお出迎え。


「チケットをお願いします」

 二人分のチケットを手渡すと、半券を返される。

 ちなみに、俺はこの半券をコレクションしてしまうクセがあるのだ。


 メインフロアに入ると、香ばしいポップコーンが空腹をあおる。

「うわぁ~ いい匂い☆」

「ふむ、映画にポップコーンは必需品だからな。買っていこう」


 俺はアイスコーヒーを選び、ポップコーンはキャラメル味と塩味のハーフ&ハーフを頼んだ。

「アンナはどうする?」

「私は……んと、カフェモカで☆」

 可愛らしいご趣味で。


 トレーを受け取ると、『ヤクザレイジ』のスクリーンを探す。

「ここだ。入ろう」

「うん☆ どんな映画か知らないけど、タクトくんの好みなら楽しみ!」

 今、サラッとタケちゃんの映画、ディスってませんか?

 ねぇ、アンナさん!


 スクリーンに入ると、休日もあってか、満席に近かった。

 客層といえば、ご老人や本業らしき御仁も確認できた……。

 さすがはタケちゃんだ! 渋いぜ!


 俺とアンナは、真ん中あたりの席に腰を下ろした。


「ところで、タクトくん。この映画ってどんな内容なの?」

 そこから!?

「ま、まあ……見ていればわかるさ。タケちゃんの映画はイイぞ~」

「そっかぁ、ポップコーン食べてもいい?」

「おう」

 

 ブーッ! という、開幕の音と共に、俺とアンナは仲良く一つのポップコーンを食べはじめた。


 そういえば、こういうカップルらしいこと初めてだな……。


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