気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

男と女は難しい

公開日時: 2021年7月20日(火) 20:00
文字数:1,896

「新宮センパイ、助けて!」

 赤坂 ひなたは俺の背中にしがみついている。

 心底、怖がっている様子だ。


「赤坂? どういう状況だ?」

「あ、あの……福間先輩が…」

 言葉に詰まる。

 まあラブホの前だしなぁ……。

 皆まで言えずに頬を赤くしている。

 ヤル気だったんじゃろか?


「おい! お前!」

 顔面を真っ赤にさせて大柄の男が迫る。

 彼の名は確か、|福間《ふくま》 |相馬《そうま》。

 赤坂 ひなたと同じく制服組の三ツ橋高校の生徒だ。


「お前、この前の一ツ橋のやつだろがっ!」

 鬼の形相で俺の襟元を力強く引っ張る。

 鼻息がかなり荒い。

 まあ同じ男として気持ちはわからんでもない。

 寸止めだもんなぁ……。


「福間だろ? 俺の名を忘れたか?」

 彼の名前を口にするとイラついた様子で、尚も拳に力が入る。

「新宮とかいってたよな!? 赤坂を返せよ!」

 返すって……。


「返すも何も俺は部外者だ。好きにすればいいだろ?」

 THE・無責任。

「え……最低! 新宮センパイ!」

 背中をバシバシと叩く赤坂。


「だって性行為を交渉中だったんだろ? 俺の出る幕じゃない。増してや、付き合っているのならば、当の本人同士で話し合って決めろ」

「付き合ってなんかいません!」

 え? 付き合ってんじゃないの?


「そうなのか?」

「福間センパイが『部活帰りに映画を観ないか?』って誘われただけです!」

 それってデートなのでは?

 というか、こいつら……さっきチケット売り場にいたカップルじゃねーか。


「はぁ!? 赤坂! 俺と付き合ってくれるんじゃねーのかよ!?」

 やっとのことで俺から手を離す福間。

 今度は怒りの矛先が赤坂に向きつつある。


「付き合うなんていってません!」

「だって、学校で『俺と付き合ってくれ』って言ったら、『うん』っていたじゃねーか!?」

 痴話げんかかよ。よそでやってくれ。

「付き合うって意味間違えてます! 『映画に付き合う』って意味でしょ!」

「……」

 激しい言い合いから一転して静まり返る。


「ふざけんな! デートだろ、今日のは!?」

 福間センパイ、かわいそう。

「違います! ただの映画鑑賞でしょ!」

 あるある~ 男の勘違いってやつね。


「とりあえず、新宮から離れろ!」

 俺から赤坂を無理やり引きずりだす福間。

「いやっ!」


 俺は一連の騒動を静観したが、一つだけ気になったことがある。

 福間 相馬。こいつはルーレット感覚で、俺が崇拝する世界のタケちゃんの作品を選んだこと。

 それからこいつは赤坂と付き合いたいがために、『ヤクザレイジ』を観たことだ。

 つまり映画なんてどうでもよかったんじゃないか?

 ただの口実に過ぎず、目的といえば、赤坂をラブホにお土産できれば、それでミッションコンプリートだったのだろう……許せん!


「おい、福間!」

「んだよ! お前には関係ないだろ!」

「いや関係あるな、赤坂は渡せん」

 俺は赤坂をかばうように福間との間を遮る。

「新宮センパイ! 嬉しい!」

 なぜか満面の笑顔で俺の背中に身を寄せる赤坂。


「なんなんだよ!」

 激昂する福間を無視して俺は話を続けた。

「福間……お前。さっき『ヤクザレイジ』観てたよな?」

 拍子抜けした顔で、俺を見つめる福間。

「は? 観てたけど?」

「感想は?」

「なにいってんだ? そんなこと今はどうでもいいだろ? それに覚えてねーよ、あんなチンピラの映画!」

 何かが俺の頭の中で弾けた。


「お前、今なんつった?」

「あ? チンピラ映画だろ?」

「福間……赤坂を置いて帰れ!」

「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ!?」

「何故かだと? お前は赤坂と性行為をしたいがために映画館に連れていき、ルーレット感覚でタケちゃんの映画を選び、そして『ヤクザレイジ』の感想も言えず、覚えていなかった……」


「「え?」」

 ここだけは赤坂と福間の息ぴったり。


「許せないんだよ! タケちゃんの映画はそんなチープなもんじゃない!」

 バシッと人差し指を突き付ける。

「……じゃあ、あれか? 俺と赤坂の恋路を邪魔するってんだな?」

「恋路って、私は福間センパイのことなんか、何とも思ってません!」

 それ、一番言っちゃダメなやつ!

 福間がプルプルしだしちゃったよ。

 涙目で……。


「新宮! てめぇのせいだ!」

 えぇ!? なんでそうなるの?

「何故だ? どちらにしろ、無理やり性行為に及ぶのは犯罪だぞ?」

 俺がそう言うと、福間はうつむいて拳をつくって震えていた。

 かなり怒っているようだ。 


「犯罪だって……? 新宮、お前。初めて会ったときから生意気なんだよ。やっぱり一ツ橋の奴らは俺たち、三ツ橋高校の面汚しだ!」

「言わせておけば……」

 俺が言葉で反撃しようとした瞬間だった。


「うるせぇなぁ! その口を塞いでやるよ!」 

 一瞬だった。

 顔面目掛けてストレートパンチ。

 映像がブツンッと消えるように、意識を失った。

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