気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

可愛ければ、なんでもいい。男の娘でも☆
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

閑話 ラストクリスマス

中二病っていうけど、中二は最強説

公開日時: 2022年1月8日(土) 20:00
文字数:2,261


 あれは去年の暮れの出来事だった。


「へっくし!」


 俺は例年以上の大雪の中、天神のメインストリートとも言える渡辺通りを歩いていた。

 クソ出版社に通うになってからというものの、少しずつだが通り名もなんとなく把握しつつあった。


「あんのクソガキ、この天才をこんな日に呼びつけるとは何事か」

 そう吐き捨てながら、すれ違う人々を睨む。


「ひっ!」

「不審者!」

 誰がだ? このリア充どもが!

 こんな平日によくもまあこんなにゴミのように集まれるものだ。


「恵まれない子供たちに募金をおねがいしまぁ~すぅ!」


「ちっ、どこの理系女子だよ……」

 数十メートルも一列に並んだ少年少女たちが募金箱を持って、大声で叫んでいる。

 健気なことに皆、薄手の制服で立っていた。


 ダッフルコートを着ている俺でさえ、ガクブルだというのに、これは立派な児童虐待と言えよう。

 彼らの最後尾まで目で追う。

 列の最後に立っていたのは、若い女だった。

 どうやらこの学生たちの責任者だろう。


 だが、俺はここであることに気がついた。

 生徒たちは手足を震わせながら、街行く人々に声をかけている。

 そんなこと、このリア充どもには声など届かん。


 なぜなら、今日は12月24日。

 リア充によるリア充のためだけの特別な日だからだ。

 そう、クリスマスイブ。


 かくいう、この天才も暇を持て余しているわけではない。

 だが仕事となれば、話は別だ。


 暖かい家に帰りさえすれば、「さあ楽しい楽しいパーティーのはじまりだぁ!」がはじまるのだ。


 まあ俺の予定はさておき、この哀れな学生たちを見逃すことがどうにも引っかかる。

 なぜならば、責任者である女は自分だけ、分厚いダウンコートに手袋までしている。

 これだからは大人様は……。



「おい、お前ら学生か?」

「あ、はい! 中学生です。今、募金をしているんです」

「そんなのは見ればわかる」

「よかったら!」

 一人の少年が目をダイヤのように輝かせ、俺にササッと募金箱を差し出す。

 いや、俺はそんなしょうもうない箱に入れる金は持ち合わせてはいないぞ?

 まあチワワみたいで可愛いくも見えるのだが。


「なあ、お前らはこんなクソ寒い大雪の中、一体なにをしている?」

「募金ですけど……」

「それは偽善行為、自己満足でしかないな。お前自身、この行動に何を感じる?」

 少年は俺の問いに戸惑い、隣りの少女に「変な人が来た」みたいな顔で問いを振る。


「あの……私たちは貧しい国の……恵まれない子供たちに暖かい毛布や食事を送りたいんです」

 少女がこれまたダイヤのように純真無垢な目で俺を誘う。

 これは新興宗教か何か?

 騙されんぞ! JCごときにこの俺が屈することなど……。

「そんなのはその国自体に問題があり、政治家にでも任せろ。お前らには一切、関係ない。大人様にでも任せておけ。それこそ、俺たちの知らんところで政府が助けている可能性もある」

 ソースは都市伝説!

「で、ですけど……私たちの気持ちは本物です」

 う、そんなに見つめるな! 可愛すぎるぞ!

「いいか、目を凝らして周りをよく見ろ! お前らは騙されているのだ! これは陰謀だ!」

「陰謀って……」

 JCちゃんの口元が引きつる。

「だがな……お前たちの気持ちだけは認めてやる」

「あ、ありがとうございます♪」

 そう見つめるJCちゃんは頬を赤らめて、手足を震わせている。

 かわいそうで、抱きしめたくなっちゃう!


「あの……お兄さんのお気持ちだけでいいんです……よかったら、募金に協力していただけませんか?」

 募金箱を突き出す。

 なにこれ、新しい武器なの? 殴られたら痛そう。


 俺はため息をつき、「どうしようもないバカだな」と呆れかえる。


「仕方ない」

 そう言うと、JCちゃんとDCくんが顔を明るくさせる。


「「募金、ありがとうございます!!」」


 深々と俺に首を垂れる。


「勘違いするな」

「え?」

「俺は募金するなぞ、一言も発しておらんぞ。そのなんだ……俺にはお前らの方がよっぽど! 恵まれない環境にいるように見えるぞ」

「……?」

「おいそこの女子よ」

「私ですか?」

 DCでも良かったのだが、可愛かったのでJCを指名した。

「お前に問いたい。さっきこう言ったな? 『恵まれない子供たちになんちゃらかんちゃら』と」

 JCちゃんの発言は記憶していたが、恥ずかしいので皆までは言わずした。


「そうですけど……」

「今のお前らを見ろ、すぐにでも凍え死にそうだ」

 左手でアホみたいに並んだガキどもをなぞるように、腕をピシッと伸ばす。

 だが、そんなパフォーマンスにはJCちゃんは臆することもない。


「いえ! そんなことは全然ありません! むしろ私たちは恵まれない子供たちのことを思うだけで、こう……。胸が熱くなってくるんです! だから今もポカポカした気持ちです♪」

 そうは言うけど、今もめっちゃ震えているやん。

 俺はポカポカしているらしいバストに目をやると、ふくらみかけの乙ぱいが最高にイイ感じだ!

 目をそらして、咳払いをする。


「オホン! いいか。お前らのような中学生がなぜこんな所で募金などという偽善行為に加担しなければならないのだ? お前らは見たころ、二年生ぐらいだろ?」

「そうですけど」

 だよね。微妙な乳加減が中二少女って感じです。


「三年生になったらどうする? 当然、高校受験があるだろ。来年もやらないなら、立派な偽善行為だろが! つまりお前らが来年の今頃は、暖かい自宅で受験勉強に勤しむわけだ……」

「そ、それは……」

 JCちゃんの目に涙が浮かぶ。

 ヤベッ、ちょっと言い過ぎたかも? てへぺろ♪



「ちょっと、あなた! うちの生徒になんなのよ?」


 騒ぎを聞きつけ、一人の若い女が俺の前に立ちはだかった。

 コイツが、犯人か……。

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