ヨハネと獣の黙示録

〜黙示録事件篇〜
上崎 司
上崎 司

アポカリプス⑤

公開日時: 2020年11月10日(火) 20:00
文字数:1,118

「申し訳ありませんでした、もう二度と浮気しません」


「本当に? もう二度としない?」


土下座をしながら両手を合わせて必死に懇願するアダムの姿は、とても神と呼ぶには相応しくない姿だった。


「では、式を挙げたらどうなのですか?」


「あっ、それいいかも!」


提案したのは、あろうことか浮気相手のイヴだった。アダムはガックリと頭を下げる。


「式ってなにかしら?」


「結婚式のことよ、リリス様」


話の流れから正体を悟ったパレットは、スカーレット様ではなく、リリス様と呼んだ。


「みんなの前で、永遠の愛を誓う儀式だよ。彼のこと、好きなんでしょ?」


「永遠の愛……!? ア、アダムとは幼馴染っていうか、なんていうか……」


乃呑が説明すると、リリスは両手を赤く染まった頬に当て、照れ始めた。


女性グループが盛り上がっている中、ヴァルカンと黒城は現実的なことを考えていた。


「それにしても、どうやってここから帰還するのだ」


「……俺も飛べるのはヒナコだけだ。力を使い果たして不死鳥にもなれそうにない」


男性グループに、アダムは言い寄った。


「だったらこいつを貸してやるよ。開放、ザ・メルト・ドラグーン!」


アダムが持つ真紅色の宝箱から現れたのは、神話でも有名な龍の秘宝獣だった。


「メルト、こいつらを背中に乗せて、陽光町まで運んでやってくれないか?」


「人間ごときが、俺に指図するな!」


「人間じゃねぇ、俺は神だ!」


「どちらでも同じだ!」


多少の口論となったが、紅い龍の秘宝獣は彼らを乗せて帰還することを渋々承諾した。


「ほら、父さんも乗るわよ」


「パレット、我にその資格はない……」


「何を言ってるのよ!?」


神父は、差し伸べてくるパレットの手を、無気力に払いのけた。


「我は愛する妻だけではなく、愛する娘まで失うところであった。父親失格だ」


「……それでも!」


パレットはもう一度、神父に手を差し伸べた。


「それでも、父さんはあたしの、たった一人の家族だから……」


「パレット……」


その言葉に胸を撃たれた神父は、弱々しくその手を握った。


「帰ろう、父さん。陽光町に……」


「早くしろ、人間。グズグズしていると置いていくぞ」


紅い龍の秘宝獣に急かされ、パレットと神父は龍の背中に乗った。背中には既に、アダムとリリス、イヴ、乃呑、黒城、ヴァルカンも乗っていた。


「焼き溶けろ、《メルトブレス》!」


紅い龍の秘宝獣は、戦艦の壁を焼き落として空へ出た。アダムとリリスは力を合わせ、戦艦を過去の世界のパラレルワールドへと送り戻したのだった。


「……日の出デイ・ブレイクだ」


黒城が呟くと、みんな一斉に太陽に注目した。陽光町の名に相応しい光景だった。


陽光町に戻った彼らを最初に出迎えたのは、栗毛色の髪の少女、鴇 愛歌だった。


「みんな……おかえりなさい!!」

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