ヨハネと獣の黙示録

〜黙示録事件篇〜
上崎 司
上崎 司

エピローグ

公開日時: 2020年11月10日(火) 20:00
文字数:1,827

突如、教会が暗くなり、静まり返った。スポットライトを浴びて現れた神父は、白い紙を読みながら、マイクに向かって話しかけた。


「皆様、大変長らくお待たせしました。新郎、新婦の入場じゃ!」


スポットライトが教会の入り口を照らし、一同の視線を一挙に集めた。扉が開くと、純白のドレスに身を包んだ美しい女性と、タキシードに身を包んだ勇ましい男性が、腕を組んだ姿で立っていた。足並みを揃えて、同時にレッドカーペットの上を歩んでいく。


憧れのウエディングドレス姿に、女性陣はすっかり色めきだっていた。


そして、祭壇へと移動していた神父の前に並んだ。


「新郎、アダム・グレイマン。汝はリリス・スカーレットを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


アダムは凛々しい顔つきで、大きな声で言った。


「はい、誓います!」


神父は次に、リリスに向かって言った。


「新婦、リリス・スカーレット。 汝はアダム・グレイマンを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「誓います!」


リリスは緊張しているのか、即答気味に答えた。


「では、誓いの口づけを……」


アダムとリリスは向き合い、見つめ合った。リリスは一人眼を閉じた。


しかし、数秒経ってもアダムからの口づけはない。


「ちょっとアダム、どうしてキスしてくれな……」


涙目で言いかけたリリスが眼を開くと、アダムが片膝をつき、花束を持っていた。


「リリス。物心ついた頃から、お前はずっと俺の側にいたよな。俺が先に生まれたのか、お前が先に生まれたのか、それは誰の知る由もないことだ。側にいるのが当たり前だと、ずっとそう思っていた」


リリスは涙を流しながら、口元を両手で覆った。


「けど、お前が側に居なくなって、初めて分かった。俺にはお前が必要だ。『秘宝』が創れなくなるからじゃない。次元を操る力なんて無くていい。リリス、お前が必要なんだ」


花束は、白いチューリップと赤いチューリップでできていた。白いチューリップの花言葉は、許しを乞う・失われた愛。赤いチューリップの花言葉は、私を信じて・永遠の愛。


花束の中に、キラキラと輝くリングが入っていた。アダムはそれを取り出して、リリスの左手の薬指に優しくはめた。


「好きだ! 結婚しよう、リリス!」


リリスは涙を拭って、満面の笑みで言った。


「…………はい!」


直後、祝福の鐘が鳴り響いた。アダムとリリスは、永遠の愛を誓い、唇を重ねた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


腕を組みながら式場の外へ出たアダムとリリスに、神父は小さなブーケを手渡した。

神父の進行に従って、式場内にいた人々も全員外へと出た。


何が始まるのかと思っていると、新婦のリリスがブーケを手にして後ろを向いていた。


「これより、新婦によるブーケトスを行う。全員参加のルールじゃ!」


乃呑は、「待ってました」と言わんばかりにアップを始めた。


あかりも眼が本気だ。たくみ、ゆうきはゲーム感覚で臨んでいた。


普段はおとなしい愛歌も、自分の頬を両手で叩いて気合いを入れていた。


パレットとヴァルカンは、新郎、新婦が唇を重ねてから、なぜかギクシャクしていた。


黒城、宇利亜、ラヴィエルの三人は興味なさげで、イヴは眠たそうにアクビしていた。


「ではリリス様、お願いします」


神父が伝えると、リリスは後ろを向いたまま、ブーケを後ろへ放り投げた。


あかり、たくみ、ゆうきは一斉にジャンプするも、タイミングが早すぎた。


乃呑は、(これはもらった!)と思っていたが、愛歌が懸命にブーケに手を伸ばしている姿を見て、躊躇してしまった。ブーケを手にしたのは、颯爽と現れた青いひな鳥だった。


「ちょっとみんなッ、アタシのこと忘れてないでしょうねッ!?」


ブーケをくちばしに咥えたまま、ピィピィと騒ぐ姿に、会場が笑いで包まれた。


ジェスタークラウンはその様子を、デジタルカメラで写真に収めていた。


(やっぱりピーちゃんは、『幸運の青い鳥』だったのかも)


愛歌はブーケを取れなかったことを気にせず、笑顔でみんなを眺めていた。


こうして、陽光町に再び平和が訪れた。さて次は、どんな物語が見られるのだろうか。


今回はこの辺りで筆を置きたい。 ヨハネ・パウロⅡ世

【ヨハネパウロⅡ世】

『進化生物学と分子生物学:神の行為についての科学的考察』が1998年に刊行された。本稿はこの論集に基づいて,現代のカトリック神学で進化論がどのように解釈されているかを考察するものである。教皇ヨハネ・パウロ2世(在位1978-)は,この会議の直後の1996年10月22日付で教皇庁科学アカデミーに進化論に関する書簡を送付しているが,これについては前稿で紹介し,進化論に対するカトリック教会の態度の変遷を概観した。


初めまして、作者の上崎 司です。

ヨハネと獣の黙示録、楽しんでいただけたでしょうか? 

本作は【進化論】と【創世論】が同時に存在しうるか、というテーマに焦点を当てた物語です。物語の大筋は、聖典【ヨハネの黙示録】を参考にしています。そこに獣の要素を追加して、【ヨハネと獣の黙示録】というわけですね。

次回作【ヨハネと獣の黙示録2】では、パレットが秘宝遣いとして活躍します。パレットの手持ちがどんな秘宝獣になるのか、楽しみに待っていてください。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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