ヨハネと獣の黙示録

〜黙示録事件篇〜
上崎 司
上崎 司

人狼ゲーム③

公開日時: 2020年11月6日(金) 07:00
文字数:1,477

「んっ? なんだこいつら……」


神社近くの山道、パレットたちが倒れているところに、真っ黒の袈裟に金色の装飾品を身につけ下駄を履いた、坊主頭に筋骨隆々な男性が通りかかった。屈強ハゲだ。


「おっ、よく見たらラヴィエルじゃねぇか! 懐かしいなぁおい!」


ラヴィエルの背中をバシバシ叩いたが、何の返事もなかった。


「ウハハハ、仲良くお寝んねかぁ?」


屈強ハゲは豪快に笑い飛ばしていたが、事態の重大さに気づくと真剣な顔になった。


「ってわけじゃあなさそうだな……」


屈強ハゲは、大きく息を吸い込み、右肩にパレットを、左肩にラヴィエルを担いだ。


「よっと。ウホッ、想像以上に重いな。こりゃ良い筋トレになりそうだ」


屈強ハゲは二人を担ぎながら、神社の石段を一段づつ降りていった。全ての階段を降りきると、複数の黒塗りの車が、屈強ハゲを囲むようにライトで照らした。


その中の一台の車から、腰のあたりまである黒い長髪をした、ジト眼の少女が降りてきた。


「こんな夜更けに、何をしているのですか、問題児の 」


「てめぇこそ。そのフルネーム呼び、辞めたほうがいいんじゃねぇのか?」


「今はワタシが問いているのですよ、金剛 宇利亜」


「聞く耳持たず、か……。見りゃ分かんだろ、コイツらを病院まで運ぶところだ」


「歩いて運ぶつもりとは……。馬鹿なのですか?」


ジト目の少女の、袖を通さずに羽織った学ランが風になびいた。


「我が校に不法侵入した彼らは、こちらで処分するのです。引き渡しを」


「断ると言ったら……?」


「力尽くで、渡していただくのです」


ジト目の少女は、学ランのポケットから、迷彩柄の宝箱を取り出し突き出した。


大柄の宇利亜と小柄なジト目の少女は、眼から火花を飛ばしていた。


「あー、やめだやめだ。今はてめぇとやりあってる場合じゃねぇ」


宇利亜は担いでいたニ人をその場に降ろすと、両手を挙げて降伏した。


「……この件が終わるまで、あなたの秘宝獣はワタシが預かるのです」


「勝手にしやがれ独裁者。だがな、もしコイツらの身に何かあったら容赦しねぇぞ」


「独裁者、ですか。そう呼ばれるのは慣れているのです」


ジト眼の少女は、パレット達を車に乗せて、病院へと走り去っていった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


教会地下の祈祷室。紅緋色のローブの女性は、今日もテーブルにカードを並べていた。


そこに、緋色のローブを着た神父が訪れ、向かい合わせの椅子に座った。


「スカーレット様、人狼ゲームの展開はどうなっておりますかな?」


「……タフガイが吊るされ、逃亡者が噛まれたわ。これで残りは十人ね」


「確か、市民サイドと人狼サイドの人数が同じになることが、我々人狼サイドの勝利条件だと言っておられましたな」


残されたカードは、人狼、能ある人狼、市民、占い師、霊媒師、狩人、狂信者、独裁者、ささやく狂人、女王の十枚だ。


「それにしても、今日もパレットの姿が見当たらんが、本当に無事なのですかな」


「パレットなら、今は病院にいるわ。動ける状態じゃないみたいだけど」


「おおっ、さすがはスカーレット様。まさに全知全能でおられる」


「言ったはずよ、私は全知全能でもなければ、神でもない。優秀なスパイがいるって」


神父はそれを聞くと、テーブルから1枚のカードを手に取った。


「そのスパイと言うのは、このカードの事ですかな?」


神父が選んだのは、ささやく狂人のカードだ。


「いいえ、それはあなた自身のカードよ」


そう言って紅緋色のローブの女性は、狂信者のカードを手に取った。


「もうひとりだけいるのよ。この教会には来ないけれど、私たち人狼サイドの味方がね」


市民サイドは残り六人。そして、人狼サイドは残り四人。

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