ヨハネと獣の黙示録

〜黙示録事件篇〜
上崎 司
上崎 司

第二の封印②

公開日時: 2020年10月3日(土) 12:57
文字数:1,556

パレットが屈強ハゲと話していると、青髪の青年が店内に入って来た。


「いらっしゃー……ってなんだ、ヴァルカンか」


「なんだとはなんだ……」


「まぁそう不貞腐れんなって。元同僚のよしみじゃねぇか」


「『研究所』の話をするのはやめろ……」


ヴァルカンは、口を尖らせながら言った。そして、パレットに気が付いた。


「パレット、なぜ貴卿がここに……」


「ヴァルカン! ちょうどいいところに来たわね!」


パレットは嬉々として、軍事用ポーチから黒色の宝箱を取り出した。


「じゃーん! 『Sランクの秘宝』よ! どう? 羨ましいでしょ?」


パレットの黒色の宝箱を見た途端、ヴァルカンの顔からゾッと血の気が引いた。


「パレット、その『秘宝』をどこで手に入れた……?」


「聞きたい? 教えてあげてもいいけど、どうしようかしら……?」


パレットが焦らす素振りをすると、ヴァルカンはパレットの両肩を掴んで声を荒げた。


「どこで手に入れたのかと聞いているのだ!」


「ええっ!?」


(ちょっと、Sランクの『秘宝』持ってないからって、必死すぎない?)


「わ、わかったわよ。今から連れて行ってあげるから、とりあえず……」


ヴァルカンは、ハッとして我に返った。


「顔、近いから……」


「これは失敬……」


「ヒューヒュー、青春だねぇ」


屈強ハゲに茶化され、パレットとヴァルカンは、慌てて距離を取った。


「いろいろ聞かせてくれて助かったわ」


「おおっ、いいってことよ」


パレットと宇利亜は、互いの拳をぶつけ合った。


「さぁ行くわよヴァルカン、ついてきなさい!」


「お、おい……、どこへいくのだ……」


「宝探しよ!」


パレットはヴァルカンの腕を掴んで、店の外へと走って行った。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「よし、今なら通れそうね……」


「なぜ某がコソコソとせねばならんのだ……」


「しーっ、文句言ってると、警備員に見つかるわよ?」


夜になった頃、パレットはヴァルカンと共に、再び陽光中学校に潜入していた。


(今日は警備員が一人しかいない。昨日より厳重になっていてもおかしくないのに……)


パレットは警戒を強めながら、以前侵入したのと同じ手口で校舎の鍵を開けた。


(あえて泳がされてる……? だとしても、ここで退くわけにはいかないわ)


パレットを突き動かすもの……それは好奇心である。未知との遭遇。そして奥に眠るお宝。パレットは非常口の扉をピッキングして開け、地下へと続く階段を降り始めた。


「ここよ。この階段を降りた先に、地下迷宮が広がっているわ」


「……解せぬ。なぜ中学校の地下に、『秘宝』があるのだ」


「細かいことはいいじゃない。あたしが手に入れたのは事実なんだから」


「いや、しかし……」


ヴァルカンは悶々とした表情で、パレットの背中を追った。


そしてしばらく歩くと、鋼鉄の巨像と闘いを繰り広げたフロアへとたどり着いた。


「あたしの推測が正しければ、この奈落の底に、さらなる迷宮が続いているはずよ」


パレットは、鋼鉄の巨像が這い出てきた地面の裂け目を指さしながら言った。


(わざわざエレベーターを用意したのは、更に地下があるからに違いないわ)


「ねぇヴァルカン、あんたの『秘宝獣』の能力でなんとかならない?」


「いいだろう……開宝、大和(ヤマト)!」


ヴァルカンは、セイラー服のポケットから銀色の宝箱を取り出し、開けた。


銀色の宝箱から現れたのは、横幅数メートルほどの小柄なエイだ。


元となった動物は、シビレエイ科の『ヤマトシビレエイ』。発電器官を有する。


【Bランク秘宝獣―ヤマトシビレエイ―】


パレットは瞳をキラキラと輝かせていた。


「そのマンタ、もしかして、乗れるの!?」


「ふっ……無論だ。頼んだぞ、大和!」


ヴァルカンは、シビレエイの秘宝獣の背に乗った。パレットも恐る恐る背に乗った」


シビレエイに乗りながら、二人は奈落の底へと向かっていく。


ここは、第二の封印へと続く道。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート