パレットが屈強ハゲと話していると、青髪の青年が店内に入って来た。
「いらっしゃー……ってなんだ、ヴァルカンか」
「なんだとはなんだ……」
「まぁそう不貞腐れんなって。元同僚のよしみじゃねぇか」
「『研究所』の話をするのはやめろ……」
ヴァルカンは、口を尖らせながら言った。そして、パレットに気が付いた。
「パレット、なぜ貴卿がここに……」
「ヴァルカン! ちょうどいいところに来たわね!」
パレットは嬉々として、軍事用ポーチから黒色の宝箱を取り出した。
「じゃーん! 『Sランクの秘宝』よ! どう? 羨ましいでしょ?」
パレットの黒色の宝箱を見た途端、ヴァルカンの顔からゾッと血の気が引いた。
「パレット、その『秘宝』をどこで手に入れた……?」
「聞きたい? 教えてあげてもいいけど、どうしようかしら……?」
パレットが焦らす素振りをすると、ヴァルカンはパレットの両肩を掴んで声を荒げた。
「どこで手に入れたのかと聞いているのだ!」
「ええっ!?」
(ちょっと、Sランクの『秘宝』持ってないからって、必死すぎない?)
「わ、わかったわよ。今から連れて行ってあげるから、とりあえず……」
ヴァルカンは、ハッとして我に返った。
「顔、近いから……」
「これは失敬……」
「ヒューヒュー、青春だねぇ」
屈強ハゲに茶化され、パレットとヴァルカンは、慌てて距離を取った。
「いろいろ聞かせてくれて助かったわ」
「おおっ、いいってことよ」
パレットと宇利亜は、互いの拳をぶつけ合った。
「さぁ行くわよヴァルカン、ついてきなさい!」
「お、おい……、どこへいくのだ……」
「宝探しよ!」
パレットはヴァルカンの腕を掴んで、店の外へと走って行った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「よし、今なら通れそうね……」
「なぜ某がコソコソとせねばならんのだ……」
「しーっ、文句言ってると、警備員に見つかるわよ?」
夜になった頃、パレットはヴァルカンと共に、再び陽光中学校に潜入していた。
(今日は警備員が一人しかいない。昨日より厳重になっていてもおかしくないのに……)
パレットは警戒を強めながら、以前侵入したのと同じ手口で校舎の鍵を開けた。
(あえて泳がされてる……? だとしても、ここで退くわけにはいかないわ)
パレットを突き動かすもの……それは好奇心である。未知との遭遇。そして奥に眠るお宝。パレットは非常口の扉をピッキングして開け、地下へと続く階段を降り始めた。
「ここよ。この階段を降りた先に、地下迷宮が広がっているわ」
「……解せぬ。なぜ中学校の地下に、『秘宝』があるのだ」
「細かいことはいいじゃない。あたしが手に入れたのは事実なんだから」
「いや、しかし……」
ヴァルカンは悶々とした表情で、パレットの背中を追った。
そしてしばらく歩くと、鋼鉄の巨像と闘いを繰り広げたフロアへとたどり着いた。
「あたしの推測が正しければ、この奈落の底に、さらなる迷宮が続いているはずよ」
パレットは、鋼鉄の巨像が這い出てきた地面の裂け目を指さしながら言った。
(わざわざエレベーターを用意したのは、更に地下があるからに違いないわ)
「ねぇヴァルカン、あんたの『秘宝獣』の能力でなんとかならない?」
「いいだろう……開宝、大和(ヤマト)!」
ヴァルカンは、セイラー服のポケットから銀色の宝箱を取り出し、開けた。
銀色の宝箱から現れたのは、横幅数メートルほどの小柄なエイだ。
元となった動物は、シビレエイ科の『ヤマトシビレエイ』。発電器官を有する。
【Bランク秘宝獣―ヤマトシビレエイ―】
パレットは瞳をキラキラと輝かせていた。
「そのマンタ、もしかして、乗れるの!?」
「ふっ……無論だ。頼んだぞ、大和!」
ヴァルカンは、シビレエイの秘宝獣の背に乗った。パレットも恐る恐る背に乗った」
シビレエイに乗りながら、二人は奈落の底へと向かっていく。
ここは、第二の封印へと続く道。
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