「さて、貴方はどこの誰で、何故私の秘密を知っているんです?答えによっては、貴方の存在自体を抹消させて頂きます」
乙女の秘密を知ってしまった報い、その身を持って知った方がいいですね。
「……それは言えない……」
──この後に及んでこの方は……
この方は一向にご自身の事を喋ろうとしません。
そっちがその気なら、こちらにも考えがあります。
「……では、貴方を不審者として扱わせていただきます」
縄を手に不審者(仮)の方にジリジリ詰め寄ります。
「君、元令嬢だよね?なんか、色々と令嬢とかけ離れた行動してるんだけど?」
ええ、私は元令嬢ですよ。でもただの令嬢ではありません。
脳筋貴族と呼ばれたオスヴェルダ家の令嬢です。
まあ、教える義理はないので黙っておきます。
「さあ、お縄についてください!!」
ベッドに腰掛けている不審者(仮)の方に縄をかけようとした瞬間、素早く飛び退きました。
……ただの不審者(仮)の方じゃないようですね。
「……僕にも色々と事情があるんだよ。元ご令嬢の君には関係ない事だよ。侍女は侍女らしくしてた方がいいと思うよ?マリアンネ様?」
──なんでしょう。何故か凄く腹立たしいのですが。
というか、名前まで知っているとは……
本当に何者なんでしょう?
「さて、僕も暇じゃないからそろそろ行くよ。手当ありがとうね」
「逃がしません!!」
窓に手をかけ外に出ようとしていたので、すぐさま短剣を投げ窓から手を引かせます。
「……へぇ、中々やるねぇ」
「お褒めの言葉は要りません」
ニヤッと、どこか楽しそうにこちらを見ています。
「いいよ。相手になってあげる。かかって来なよ?」
怪我をしていても余裕の表情ですね。
手馴れた者ですか。
しかし、逃がす訳には行きません。
「……参ります……」
短剣を両手に持ち、未だに余裕顔の不審者(仮)の方に刃を向けます。
しかし、かすりもしません。
「もう終わり?」
──ここまで当たらないと、苛立ちが募りますね。
「……まさか。貴方から答えを聞くまでは、ここから逃がしませんよ」
──仕方ありません。
私は、再び短剣を手に向かって行きます。
当然その刃は躱されますが、計算の内です。
そして、大きく体を避けた瞬間、すかさず銃弾で出来た傷を蹴りあげました。
「──がはっ!!」
……すみません。卑怯な手だと思いましたが、少々苛立ちが過ぎました。
「……っつう」
「……さあ、話してもらいましょうか?」
蹲っている暇はありませんよ。早く話してください。
貴方が暇ではないように、私も暇ではないんです。
ガバッ!!
「……君、やるねぇ。気に入ったよ」
侵入者(仮)の方に近づいたら、押し倒されました。
……私としたことが、油断しました。
「ねぇ、殿下じゃなくて僕にしない?」
何を勘違いしているのか知りませんが、殿下とは何もありません。
それよりも、この状況をどうにかするのが先決です。
なんせ、馬乗りになられ両手を拘束されているので手は出せません。
──困りましたね。
「……この状況でも冷静なんだね、君は。どうしたら、慌てた顔が見れるの?キスでもしてみようか?」
そう言うと、顔が近くにやって来ました。
ますます、まずい状況です。
こうなれば、男性の大切な部分を蹴りあげるしかありませんね。
……使い物にならなくなっても、恨まないでください。
「──マリアンネ!!!」
思いっきり蹴りあげようとした時、勢いよく自室のドアが開ました。
そこには、殿下とテレザ様の姿がありました。
「な、な、何してんのあんた達!!?」
「キャ---!!部屋の中が滅茶苦茶じゃない!!どういう事なの!?マリー!?」
──これは、お説教ですね。
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