クレメール伯爵とは、ここら辺一帯を治めている領主様ですね。
しかし、クレメール伯爵は悪い噂は聞いたことがありませんが?
むしろ、その優しさから神のようだと言われている方ですよ?
「……貴方は騙されているんです。……ここら辺一帯の方もみんな……」
ぽつりぽつりと事情を話し始めてくれました。
「私達は奴隷でした。そして、ある日クレメールに買われました」
「最初の内はとても優しく、3食美味しご飯まで頂き、こんなご主人様に買われて良かったと思っていたんですが……」
「徐々に本性を現し初め、私達はワームの餌の為に買ったんだと……3食食べさせていたのは、私達を太らせる為だった……」
なるほど。確かに、奴隷は栄養が足りず骨と皮ですからね。それで3食食べさせ、それなりに肥えたので今日に至ったんですかね?
「皆さんの事情は分かりました。しかし、クレメール伯爵は何故ワームを育てているんです?」
領主様ならお金の心配など必要ありませんよね?
「……ワームを飼い慣らして、戦の兵器として近隣国に売りつけると話してました」
「わ、私は隣国と共謀してこの国を乗っ取るような話し聞いたわ……」
おやおや、大事になって来ましたよ?
ゴリさん、これは便利屋の仕事ではなく、国家間の問題です。私達は手を出さない方がいいです。
寧ろ、出さないでください。非常に面倒臭い。
「……分かりました。お話しくださりありがとうございます。少々上司と話をつけてきますので、暫くお待ちください」
ジェムさんにこの方達を見ていてもらい、私はゴリさんとヤンさんの所へ向かいます。
「──っと言うことなんですが」
簡単ですが、ゴリさんとヤンさんに説明しました。
「……参ったな。こんな大事だとは思いもしなかった」
「………」
「『どうするんだ?』と仰ておりますが?」
珍しくゴリさんが頭を抱えております。
当然ですよね。手を出してしまった事案がとんでもない事案だったんですから。
「……とりあえず、その奴隷達の安全の確保が先決だ」
「はい」
答えは出なかったようですね。
まあ、それよりも一刻も早くここを去った方がいいです。
「マリー!!!うしろ!!!」
ん?
キーーーン!!!
「…………」
「すません、ヤンさん。助かりました」
私に剣を振り下ろしてきたのは、見知らぬ男性。
危うく命を落とすところをヤンさんに助けられました。
今死んだら借金返済が出来ません!!
あの脳筋夫婦は返済能力ありませんから。
死ぬなら、借金返済を終えてこの世に未練なく死にたいのです。
「──ちっ」
「お前はクレメール伯爵の手の者だな?」
一旦離れた男性にゴリさんの目が光ります。
……あ~、まずいです。ゴリさん若干お怒りですよ刺客の方。命ごいしといた方が良いかと思いますが……
「こいつらは、俺の部下でな。その部下に手を出されちゃ黙っておけねぇ。俺が相手になってやる」
殺害予告ですね。
「ほお、じゃあ相手して貰おうか?」
刺客の方がニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ゴリさんに襲いかかりました。
ゴリさんはこう見えて、素晴らしい腕の持ち主何ですが……相手の方も中々やります。
「…………」
「そうですね、ジェムさん達の様子を見に行ってまいります」
ヤンさんはジェムさん達の方にも刺客が来てるかもしれないと、心配されたので私が戻るようにします。
──何事もなければいいんですが……
そんな思いも虚しく、悲鳴が聞こえました。
ジェムさんがどこまで耐えてくれているか……
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